ポストシーズン:ハーフタイム

[Game Day] ハーフ・タイム

「ダラス・カウボーイズがキッカーのブライアン・アンダーソンのFGフィールドゴールで3点を加えて、29対0として前半を終了しました。この後、ハーフタイムショーです。フィールドではステージの設置が始まっています。その間に前半を振り返ります。コイントスではダラスが勝ってレシーブを選択。最初のドライブでは危なげなく攻撃をつなげてTDタッチダウン、7対0としました。今シーズン得点力ナンバーワンの実力を発揮しましたね」

「ミスが一つもありませんでした。それにジャクソンビルの守備ディフェンスをよく研究してきたんだと思います。ただジャクソンビルの守備ディフェンスは特に悪いところはなくて、ゲーム序盤の定跡どおり普通に守っていたら進まれてしまった感じです」

「その直後のジャクソンビルの攻撃オフェンスは、最初のプレイでショットガンのスナップをセンターレイマーがオーバースローしてしまいました。QBクォーターバックナイトはこれを捕れず、ボールはエンドゾーンから外へ出てセーフティーとなり、ダラスに2点を献上。9対0」

「やはり大舞台ということで緊張していたんでしょうか。残念なミスです。ただナイトは無理にリカバーしようとしなかったのはよかったと思います。ダラスの守備ディフェンスにボールを押さえられてしまうとTDタッチダウンで7点ですから」

「続くダラスの攻撃オフェンスは、また順調にドライブを続け、最後はアンソニー・ブラウンへ2本目のTDタッチダウンパスが決まりました。16対0。その後も勢いは止まらず、第2クォーターに入ってからもダグ・デイヴィスのランでTDタッチダウン、さらにFGフィールドゴールで26対0としました」

「ジャクソンビルはパントでダラスの攻撃開始地点を10ヤードの内側まで下げるんですけれども、それでもダラスのドライブが止まらないという状況でした」

「そのジャクソンビルの前半最後の攻撃、ランとパスでロングゲインを重ねてゴール前10ヤードに迫ったんですけれども、エンドゾーンへ投げたパスをダラスのCBコーナーバックデショーン・ウィルソンがファインセーブ。落ちたボールが他の選手の足に当たって跳ね上がり、セーフティーのカースがキャッチしてインターセプト、タッチバックになってしまいました」

「ジャクソンビルにとってはアンラッキーとしか言いようがありません。最低でも3点は取れるという状況だったんですけれども、惜しかったです」

「この時点で残り1分を切っていましたが、ダラスはタイムアウトをうまく使ってボールを敵陣33ヤードまで進め、最後もう1本FGフィールドゴールを成功させて29対0としました」

「これが26対3になっていたかもしれませんから、そうすると差は23点で、スリーポゼッション差なんですよ。後半はジャクソンビルのドライブから始まりますから、そこでTDタッチダウンが取れたら16点差、まだまだ解らないな、ということになっていたと思うので、もったいなかったです。ただ、まだ諦めることはないと思います。後半がまるまる30分残ってますし、ジャクソンビルはこういう逆境には本当に慣れてますから」

「前半のスタッツが画面に表示されていますが、ダラスの攻撃は既に300ヤードを越えています。パスが200ヤード超え、ランも100ヤード超えです。対してジャクソンビルはトータル約150ヤード。半分ですね」

「ですので、ジャクソンビルは全然ダメということはないんですよ。ただ、点差はスタッツの差以上に付いてしまっています。やはりターンオーバーとセーフティーが大きかったですね」

「さてハーフタイムショーですが、今年はカナダの女性デュオ“カジノ”が登場します。カロリーヌ・モローとミレーヌ・リードの二人。デビュー3年目で、最新アルバムはアメリカとヨーロッパのチャートで1位を獲得しました。また、昨年のCFL、カナディアン・フットボール・リーグの優勝を決めるグレイカップのハーフタイムショーに、アメリカのロックグループ“グローリー”が出演したので、その返礼として出演することになりました」

「もちろん最初からお互いに交換出演ということになっていたわけですけれども、グレイカップのハーフタイムショーは非常に好評だったらしいですね」

「二人の衣装とステージのデザインは、ベルギーの新進気鋭のデザイナー、ステファン・キースリンガーが手掛けました。林さんはこのデザイナーのことをご存じでしたか」

「すいません、よく知りません。ですがとても奇抜なデザインで有名だそうですね」

「今回はアメリカンフットボールのXOチャートをデザインに取り入れたということだそうです。また、コンサートの途中には特別に作られたPVも流される予定ですが、カナダのモントリオールにある実際のカジノで撮影されて、世界的に有名なモデルが何人かゲスト出演しているということですので、是非探してみて欲しいとのことです」

「僕はモデルのこともよく知らないんですけど、ちょっとした顔出しじゃなくて、目立つ役で出ているそうなので、探してみたいと思います」

「モデルは最後にステージにも登場します。また、ステージの床が大型ディスプレイになっていて、上段の観客席からはパフォーマンスを見ながらPVも見られるという仕掛けだそうです。もちろんスタジアムの大型ビジョンでも流されます」

「今、準備されているのを見るとものすごく大きなディスプレイみたいですね。スタジアムのスタンドの上に設置されてるのと同じくらいあるんじゃないですか」

「間もなく準備が整います。第100回スーパーボウル・ハーフタイムショー、12分間のスペシャルステージをお楽しみください」


  "Super Bowl Centennial Halftime Show

   Performed by CASINO"


「ハーフタイムショーが終了しました。最後、ステージに上がってスタンドに手を振ってているのはデザイナーのステファン・キースリンガー、そしてPVに出演したモデル3人、フランスのトップモデルのセシル・クローデル、ヤングモデルのロレーヌ・メレナ・ラローシュ、そしてモルドバのスーパーモデルのコニー・イサクです」

「僕でも知っている3人でした。それに映像内でも解りやすかったですね。ステージに立っている二人とよく似た衣装を着ていましたから」

「ファッションショーがカジノの中で行われていて、モデルはステージではなくゲーム機やテーブルの間を歩くという変わったものでした。そしてその衣装ですが、布地に描かれたXとOが、布が揺れているだけなのに、移動しているように見えました。面白い仕掛けでしたね」

「フットボールに着想を得たというのはこういうことかと感心しました」

「ちなみにPVに登場したカジノがあるのはモントリオール市内を流れるセントローレンス川の中のノートルダム島で、1967年の万博の時に建てられたカナダパビリオンを改修したものだそうです。ノートルダム島はF1が開催されるジル・ヴィルヌーヴ・サーキットがあることでも有名ですね」

「カナダのF1ドライバーのジャンヌ・リシュリューが来てるのが紹介されてましたけど、PVに出演しなかったんですかね」

「発表はされていませんが、どこかにカメオ出演していた可能性はあります。さてフィールド上ではステージの撤去が進んでいますが、後半の開始にはまだ時間がありますので、前半の両チームのプレイで印象に残ったものを、サイドラインのお二人に挙げていただきたいと思います。まずはダラスの村社むらこそさん、攻撃オフェンスは非常に順調でしたけれども、サイドラインの様子はいかがでしたか?」

「やはり逆転が得意なジャクソンビルが相手だけに、まだ油断するな、まだ終わっていない、やりきっていないと、選手もコーチも声を出し合っていました。非常にピリピリした雰囲気でしたね。あのインターセプトの時も、コーチの一人に話を聞いたら、何もかうまく行きすぎていて逆に気持ち悪い、と言っていました」

「やはり警戒していますか」

「運命の輪はいつ逆回転を始めるか解らないから、だそうです。それで、印象に残ったプレイですけれど、2本目のTDタッチダウン、アンソニー・ブラウンのキャッチですね」

「第1クォーターの終わり頃でした。ビデオが出ますが、解説をお願いします」

QBクォーターバックはアンダーセンターで、レシーバーはツーバイツー。左から一人モーションして、戻って来たところにカウフマンがまず一つハンドオフのフェイク、その後RBランニングバックにもフェイクを入れてから、右のコフィンコーナーへのパスでした。ラインのブロックは完璧で、ジャクソンビルはCBコーナーバックゲイルズがブラウンをぴったりカバーしてたんですけれども、カットできないぎりぎりのところへうまくコントロールしました。ブラウンは捕った後でボールを胸に引き寄せてますけど、これはフィールドにダウンしてからボールを落とさないためで、実際にはその前に片手でのキャッチが成立してます」

「ボールの回転がいいのか、手に吸い付いているように見えますね」

「ええ、それにブラウンは手が大きくて握力が強いですから」

「ブラウンは前半終了直前のFGフィールドゴールの前にもいいキャッチがありましたが、今日は4回で既に50ヤードを越えています。では次に、ジャクソンビルの中村さんに伺います。サイドラインの雰囲気はいかがでしょうか?」

「選手とコーチの士気は高いと思うんですが、お手伝いでフィールドに入っている子供たちが元気がないのが、ちょっと気になってます」

「なるほど、今回はスタジアム仕事ワーク体験エクスペリエンスという名目で、12人の子供たちが、タオルや水筒を選手に渡したり、回収したりという手伝いをしています。そちらには何人いるんでしょうか」

「7人ですね。それと一人だけ、スポッター席に入っていると聞いています。ジャクソンビル側ですが、それが女の子ということで非常に驚いてます」

「前半の途中で一度映っていましたね。では、印象に残ったプレイをお願いします」

「前半最後のドライブで、点は取れなかったんですけど、J・C・ドーキンズの背面キャッチですね」

「ビデオが出ますので、解説をお願いします」

「解説者ではないのでうまく説明できるか解りませんが……ダラスが6人でブリッツを入れてくるんですけど、QBクォーターバックのナイトは前へ出て躱して、投げます。この時ドーキンズはまだボールの方を見ていません。ですが、ブリッツが入ったのは解っているので、自分に投げられるとしたらこのタイミングだろう、というのを予想して、振り返ったんだと思います。左右どっちに振り返るかというのも、QBクォーターバックと意識がドンピシャに合ってて、後は手を伸ばせば捕れる、というプレイです」

「ありがとうございます。林さん、いかがですか」

「全て中村さんのおっしゃるとおりで、おそらくこれはスナップ前の読みリードが、ナイトとドーキンズで一致してたんですよ。だからタイミングプレイなんですね。で、もしナイトが最初のタイミングで投げられなかったら、次にどうするかというのもちゃんと考えていたと思います」

「ジャガーズはゲーム終盤になると、こうした阿吽の呼吸のプレイが増えてくるので、期待したいと思います。間もなく後半が始まります」

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