#18:Game Day-2066年1月10日(日) (2)

「結果として、先ほど申し上げたFGフィールドゴールレンジにジャガーズは入ったと思います。1stダウン、2ndセカンドダウンで少し進んで、3rdサードダウンで5ヤード残る、ということになると、FGフィールドゴールの距離は50ヤード。で、1分半くらい残りそうですから、これは蹴るでしょう」

「するとタイタンズが苦しい状況ということになりますか?」

「いや、まだ勝ってるんですけどね。だからタイタンズとしては、1stファーストダウンは許すけれどもTDタッチダウンだけは絶対獲らせない。で、時間を使わせてしまう。これが理想の展開になるわけです」

「ではレッドゾーンを中心に、とにかくTDタッチダウンだけを防ぐ防御守備プリベントディフェンスですか」

「あるいはブリッツを仕掛けて、QBクォーターバックサックして、時間を消費させるかタイムアウトを使わせるか」

「ショットガン隊形で、今度は左右にレシーバーを二人ずつ。RBランニングバックフレッチャーが左にモーション。スナップから、早いタイミングでそのフレッチャーにパスが通った! そのままサイドラインに出て、ゲインは5ヤードくらいでしょうか」

「いいですね。ゲインを稼ぐより、サイドラインに出て時間を止めることです」

「残り1分46秒で止まっています。時間は十分あります。敵陣33ヤードから2ndセカンドファイブ

「ここで一発TDタッチダウン狙うのはあるかもしれません」

「エンドゾーン、あるいはその手前を狙う長いのを投げますか」

「はい。タイタンズもTDタッチダウンが怖いですから、エンドゾーンを守るんですけど、そうするとゴール前10ヤードから20ヤードの辺りが空くんですよ。インバウンズでプレイが終わっても、すぐにスパイクすれば、1分半は残りますから。そうするとそこから3回TDタッチダウンパスを投げて、全部失敗してもFGフィールドゴールで3点。で、1分15秒くらい残ります。そうすると最初に申し上げたシナリオどおりになるわけです」

「さあジャガーズどうするか。ショットガン隊形で、レシーバーは右に3人、左に一人。スナップから大きくステップバックして、やはり長いパスを投げた! これは通りません。左のダレイマスを狙いましたが、CBコーナーバックシャラマンがぴったりマークしていました。オーバースロー」

「やっぱりやって来ましたね」

「次は刻んで1stファーストダウンを獲りにくるでしょうか?」

「これが迷うところで、刻んで刻んで進んで行くと、どんどん時間がなくなるわけです。そうするとFGフィールドゴールで終われませんから、TDタッチダウンを獲らなきゃいけなくなる。そうするとタイタンズは守りやすくなるんですよ」

「エンドゾーンに人を集めるわけですね」

「はい。で、攻撃オフェンスがエンドゾーンに近付けば近づくほど、いわゆる人口密度が高くなって守備ディフェンスTDタッチダウンを阻止しやすくなりますから、ジャガーズは刻んで1stファーストダウンを獲りにいくなら、このドライブは時間を全部使い切ってTDタッチダウンで終わる、と腹を括らないといけません」

「敵陣33ヤードから3rdサード&5。ジャガーズ、次の攻撃は何を狙うか。ショットガン隊形で、レシーバーは右に3人、左に一人。スナップから早いタイミングで右へ短いパス! あっとレシーバー捕れない! キース・ジャクソン、振り向くタイミングが合いませんでした。捕っていればそのままサイドラインに出ても1stファーストダウンだったでしょう」

「コミュニケーションミスですね。さあこれはどうするでしょう。FGフィールドゴール行くんじゃないですか。残り1分35秒で、4thフォース&5ですから」

FGフィールドゴールチームが出てきました。キッカーベルデンは今日、第1クォーターに47ヤードFGフィールドゴールを決めています。このトライは50ヤードということになるでしょうか。レギュラーシーズンの成績が画面に表示されていますが、これは素晴らしい。50ヤード以上を12回蹴って、全て成功させています」

「12回中10回はホルダーQBクォーターバックのナイトだと書いてありますね。つまり彼が来るまでは、50ヤードのFGフィールドゴールすら狙えないほど攻撃が進まなかったということなんですかね」

「ジャガーズがナイトをバックアップとして獲得したのは第8週で、その後も途中出場が多かったですから、そういうことかもしれません」

「でもコリンズがQBクォーターバックのときもナイトはホルダーでしたよね」

「確かにそうです。ナイトが率いたドライブの場合の統計であれば解りやすかったんですが。さあ50ヤードFGフィールドゴールトライです。タイタンズはタイムアウトを取りませんか?」

「アイスタイムアウトいうやつですね。嫌がらせの。まあ、やらないようですね」

「あまり効果はないと言われているそうですが……あーっと、これは!? スペシャルプレイだ!」

キッカーのパス!」

「レシーバーはフリーだ! しかしこれは? 落とした! 落としたか。スペシャルプレイ失敗! ジャガーズ万事休す!」

「いや、ちょっと待ってください。どうなってるんですか、これは。審判は両手が上がっていますよね」

「タッチダウンですか? あっ、画面にはタッチダウンと表示されました。しかし落としたように見えましたが?」

「リプレイが出ますね。見ましょう。SNスナッパーからスナップ、ホルダーナイトは捕ってホールドせずに、キッカーベルデンにトスしました。それをベルデンが投げて」

「レシーバーは右のウィングの位置に入っていたLBラインバッカーアンバーザトでした。落としたように見えたんですが?」

「フリーだったんですが、ベルデンが少し早く投げたんですかね。アンバーザトが振り向いた時にはボールが来ていて、手に当てて弾いて、ボールが宙に浮いて、アンバーザトは転んだんですが」

「落ちてきたボールが……あっ、アンバーザトの身体の上に落ちてきたんですね。それを捕ろうとして、お手玉していますが、ボールがフィールドに落ちてないんですか!」

「はい。で、捕って、起き上がって、エンドゾーンに駆け込みました。ですが近くにいた守備ディフェンスの選手は、ボールが落ちたと、プレイが終わったと思って、追いかけなかったんですね」

「オフィシャルレビューになっていますが、これはアンバーザトが倒れたときに、守備ディフェンスの選手が触ったかどうかを確認しているんでしょうか」

「そう……でしょうか。ただ、触っていれば、ボールを捕った地点でデッドになるんですか? 倒れて、触られて、その後でボールを確保したら、デッドにはならないと思うんですが」

「確かにそうですね。リプレイがもう一度出ています。現地のルール・アナリストが解説していますが、やはりボールを確保した後にタッチしていないので、プレイはライブだということのようです」

「レフェリーの判定を聞きましょう」

「ああ、やはり、ボールはフィールドに落ちていなくて、守備ディフェンス側がタッチをした後で確保したので、その後のプレイは有効。つまりTDタッチダウン成立、ということです。ジャガーズ、6点追加、追い付きました! 27対27」

「さすが、レフェリーのホキュリさんは説明が詳しいですね。判定の説明中に“ハウエバー”が入るのはホキュリさんくらいですよ」

「さあ、PATポイントアフタータッチダウンが決まるとジャガーズ逆転ということになるわけですが、タイタンズには1分20秒残っています。点差は1点。再逆転のチャンスがあるということですね」

FGフィールドゴールでいいわけですからね。ジャガーズは時間を残しすぎたでしょう。今さら言うのも何ですけど、アンバーザトはTDタッチダウンを獲らずに、あの地点でボールデッドにして、残り時間を使い切ってTDタッチダウンを獲る、とした方がよかったですよね。ただ、TDタッチダウンはどんなにゴール前に迫っても必ず獲れるとは限らないんで、そこが難しいんですけれども」

PATポイントアフタータッチダウン、決まりました。ジャガーズ、28対27と逆転しました。キックオフはどうするでしょうか?」

「それも難しいですね。エンドゾーンに蹴り込んでしまって、タッチバックでタイタンズ自陣25ヤードからの攻撃、とするのが一番リスクが少ないですが、それだと時間が減りませんから。たとえ何秒かでも減らしたいならプーチキック、つまりリターンチームの隙間にボールを落とすんでしょうね。そうするとリターナーがボールに触れた瞬間から時間が減り始めます。が、進まれるとそれだけフィールドゴールレンジまで近付かれてしまいますから」

「敵陣40ヤードくらいでもFGフィールドゴールを蹴るでしょうね」

「はい。ですが自陣20ヤードからだと50ヤード進まないといけないですから。やはりタッチバックにしてしまって……ん、何ですか?」

「ジャガーズのキックオフですが、キッカーのポジションにQBクォーターバックのナイトが入っているんでしょうか」

「何をするつもりなんでしょうか。いや、タイタンズも私と同じように考えるでしょうから、疑心暗鬼にさせてタイムアウトを使わせる作戦とか」

「タイタンズのタイムアウトはあと二つあります。取らないですね。ナイトもキックの助走位置に就きました。さあキックオフ!」

「飛距離は短い……やっぱりプーチキックですか。サイドラインを割りそうですよ」

「リターナーは追いかけていますが、ボールはサイドラインを割らずに、エンドゾーンの手前で止まりそうだ」

「これは絶妙なキック……」

「あっと、リターンしようしているんでしょうか?」

「危ない、危ない!」

「拾い上げた瞬間にタックルを喰らった! ファンブル!」

「リカバーはジャガーズ!?」

「さあ、どっちが取っているのか!?」

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