ステージ#11:終了
#11:バックステージ
「ステージの結果について、クリエイターからのコメントがあります」
「今回のステージは七つのパートに分かれていたため、それぞれについて講評する。
パート1、キー・パーソンから適切な情報を得ることができず、他の
パート2、キー・パーソンから得た情報が不十分であり、他の
パート3、適切なキー・パーソンから情報を得ることができず、他の
パート4、得られた情報を元にした推論が間違っていたことにより、誤った場所へ移動することとなったため、低評価とする。
パート5、エクストラ・イヴェント、少ないヒントから自力で正しい結論に到達したため、高評価とする。
パート6、キー・パーソンの扱いを誤ったことより情報収集が遅れたため、低評価とする。
パート7、ターゲットを自力で獲得せず、譲渡されたため、低評価とする。
総括。ほぼ全てのパートにおいて、情報の収集不足、および推論が稚拙であった。他のステージでもそうであったように、情報収集に時間がかかりすぎる傾向があるため、今後の改善が必要である。最終的に他の
うん、ひどいな、今までで最悪だ。確かに、今回のように、短時間で情報を集めて短時間で結論を出すというのは、俺の苦手とするところだ。フットボールなら、ゲーム中に集めた情報で結論を出すのはそれなりに得意だがね。慣れの問題だろうな。
「先ほどのステージに対する質問を受け付けます」
「パート1から3で俺にヒントを与えた
「お答えできません」
しかし、それ以外に考えられない。パート1、つまりメムルブでは、“男とはぐれて、一人で泊まっていた女”というのがマルーシャだったのだろう。
部屋から出ようとしなかったのは、俺に存在を知られたくなかったからか。いや、山小屋に着く前に俺がいることに気付くはずがないから、いつもああやって他の
そして、俺がチェスに関するヒントをキー・パーソンから聞き出せなかったと知って……知ってるわけはないか。しかし、そうなるかもしれないと思ってヒントを残していったのだろう。理由は解らないが。
パート2、イェンデブでは、山小屋にはいなかったはずだが、どこに泊まっていたのか。
もしかして、山小屋の近くにあった石積みの小屋だろうか。それでいて、山小屋の中で何が起こっていたかを知っていたはずだから、例によって盗聴器を仕掛けていたのかも。そうでないと、下着泥棒や鍵泥棒に気が付くわけがない。
ヒントをまた残していった理由は不明。
パート3、レイルヴァスブではどこにいたのか。あそこで俺にヒントをくれたのはカーリだが……あああ、もしかして、あれもマルーシャの変装?
似合っていなさそうな眼鏡をかけてるだけで騙されるなんて、俺はそれほど人を見る目がないのか?
解った、今度から、胸の大きな女はマルーシャの変装に違いないと決めてかかろう。あれほどのプロポーションの女が、そうそういるもんか。1インチか2インチくらい小さくても、マルーシャに違いないと思って見れば、判るはずだ。
パート4、ビスモでは……
「推論の間違いというのは何のことか、教えてくれるか」
「詳細はお答えできませんが、参照すべき本が違っていました」
カタリナから借りた本ではいけなかったということか。
「誰の本ならよかった。マライア・ミルズ?」
「お答えできません」
まあ、いいか。ナンセンの本がないし、地図もないので、何が正しいかを教えてもらっても確認できない。
「正しい行き先は」
「e6、ラウベルグストゥレンです」
確かに、フォッセトレンは何もなかったから。
しかし、そのフォッセトレン、パート5では、自分でもよく正解を思い付いたと思った。ただ、本当にそれだけだからなあ。
夜に女がいなくて、余計な時間を奪われなかったからだろう。他の場所ではそこがトラップなのかもしれないけど。
いや、女というか、キー・パーソンと適切に接していれば、適切なヒントがもらえた? でも、ビスモではあんなことまでしたのに、失敗したんだぜ。どうすればよかったんだよ。
パート6ではキー・パーソンの扱いを誤った? 何のことだろう。部屋にカーヤを引き留めて一晩中あれこれした方がよかったのか? それとも、モードかキティーを選べばよかったということか? 訊いても教えてくれないだろうけど。
「ターゲットを譲られたのは確かにそのとおりだが、特定するための情報は、何が不足していた?」
「詳細はお答えできませんが、ラウベルグストゥレンへ行っていないことによります。そこに決定的なヒントがありました」
そういうことか。ラウベルグストゥレンはユーヴァスヒッタに近い。おそらく、そこであのスマートフォンの存在が予測できるようなイヴェントが発生していたのだろう。きっと、盗難騒ぎだぜ。
「財布の中に入ってた切手と紙幣は、ヒントの一部だよな」
「はい」
「あれを使う順番については、どこかに別のヒントがあったのか」
額面の安い順でもなかったし、宿泊地にある情報とマッチさせるというのでは効率が悪すぎる。
「初日は切手を支給し、日付が変わるごとに、紙幣を1枚ずつ支給していました。それがヒントとして使う順番になっていました」
はあ!? じゃあ、俺が財布の中を確認するのを、スピテルストゥレンまで忘れてたのが悪いってこと?
今回は山カードを支給されていて、クレジット・カードはおろか現金を使う機会が全くなかったから、財布の中を見なかったってだけなんだけど。
いかんな、やっぱりゲームの世界で持ち物チェックは大事だ。ただ、今回は特別な装備を支給されたんで、そっちにばかり気を取られてた。次回からは気を付けよう。
「他に質問はありますでしょうか」
「話が少し戻るが、パート3の適切なキー・パーソンは誰だったんだ?」
「お答えできません」
カーリがマルーシャの変装だとすると、アネルセン支配人か、ニーナか、ヘイディか。どれもそれらしい気がしないな。
他に誰かいたんだろうか。そうだ、カタリナがいた。朝に、図書室で会ったが、その前の夜に会う可能性もあった? それをマルーシャが邪魔したのかもしれないな。
しかし、その代わりにヒントをくれたんだから、完全な邪魔というわけでもないし、彼女の意図がよく判らない。
「マルーシャは、俺にヒントを与えたことについて、何か釈明していたか」
「注意を喚起しただけであって、ヒントを与えたつもりはない、とのことです」
「注意喚起はヒントではないし共謀にも当たらない?」
「はい」
「じゃあ、どこまでならヒントで、どういうことをすれば共謀なんだ?」
11ステージも経過して、全くもって今さらだが。
「ステージ内の移動先を他の
結局は
「じゃあ、彼女が俺にターゲットを譲渡したことについての釈明は?」
「時間切れで
そうだな、彼女は「ありがとう」としか言わなかった。もっとも、彼女の「ありがとう」はかなり特別な状況でしか出てこない言葉だけれども。
「他に質問はありますでしょうか」
今回は痴女っぽい女がたくさんいて閉口した。エマ、マヤ、アストリッド、カタリナ、そしてキティー。彼女たちについて訊きたいことはない。
ちょっと気になるのはマリットとイングリくらいかな。あの二人が今後ヴァイオリニストとして大成するかどうかは気になるし、ぜひ大成して欲しいと願う。
カーヤにももう一度会ってみたいが、無理だろうなあ。
「財団の研究所ってのは合衆国とオスロ以外、どこにあるんだ?」
「ステージによって設定が異なります」
そういう情報は、ステージ開始時点で頭の中に追加されていてもいいと思うのだが。どうもこの、“頭の中に追加される情報”というのはステージごとにちぐはぐで、役に立つような情報がほとんどないと思う。
「今後のステージでは君に質問として訊くかもしれないから、ちゃんと答えてくれ」
「了解しました」
「ロジスティクス・センターへ送った荷物は、どこで受け取れたんだ?」
「イェンデスヘイムです」
「しかし、そこは宿泊地になっていなかったんだが」
「レイルヴァスブから乗ったバスが、途中でイェンデスヘイムを通ることになっていました。そこまで乗車して、荷物を受け取ってから、ビスモへ引き返すことができました」
ああ、確かに、ビスモへ行く時はやけに時間があるなと思っていた。しかし、そんなやり方に気付くわけないって。
いや、そうか、レイルヴァスブでロジスティクス・センターのことを訊くべきだったんだな。そして荷物を受け取っても、必要な物だけ取り出すとか入れ替えるとかして、また預けておけばよかったんだ。
荷物は全部持って歩くものという固定観念があるから、そういうことに気付かない。財布の中身といい、今後はもっと装備のことに注意すべきだ。
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