ステージ#11:第2日
#11:第2日 (1) 闇の中の気配
第2日 2037年10月12日(火)
目が覚めた。辺りはまだ真っ暗だ。
「何……だ?」
重苦しいものを感じたのだが、夢だったのだろうか。フットボールの練習をしている夢を見て、パスを投げた直後に
ところで、ここはどこだっけ。そうか、山小屋だ。空き部屋がなくて、リヴィング・スペースのソファーで、ブランケットをかぶって寝ているんだった。
周りはほぼ完全に闇の中。暖房装置の電源ランプと、ドア脇の電子ロック端末の赤ランプと、壁の電灯のスイッチの緑ランプが小さく光るのみ。もちろん人の気配はない……いや、違うな、ついさっきまで、誰かがいたような気配がある。
部屋の中の空気の動きというか、実際は暖房装置のせいで緩やかに風が流れているのだが、それ以外にも人が動いたせいで空気が攪拌されたというか……しかし、リヴィングの脇には手洗いがあるので、誰かが起きてきて使ったとも考えられるし……
いや、やっぱりすぐ横に誰かいたんだ。微かに匂いが……香水だろうか。柑橘系の? だが、エマもマヤもこんな香水ではなかった。では、ゲルハルセン氏のパートナー? そういえば彼女の名前は何ていうんだっけ。いや、今はどうでもいい。
それとも、病気で一人寝ているという女か。名前は……全く知らない。とにかく誰でもいいが、さっきまでここにいたらしい。
念のために身を起こし、サイド・ボードの小さなライトを点け、時計を見る。まだ4時前だ。それから身の回りを確認する。防寒着を触られた形跡はない。リュックサックもだ。財布もパンツの尻ポケットに入っている。考えすぎか。
しかし、ソファーに座り直して、辺りの気配を感じ取ることを試みる。宿泊室の方からは、音もしない。いびきをかく者もおらず、静かなことだ。もちろん、外でも何も動きはない。雪はもう止んでいるようだし、風もない。やはり考えすぎか。
あきらめて、ライトを消そうとしたが、やはり妙な違和感がある。何かなくなっているのか? いや、そうじゃない、テーブルの上に、チェス盤がある! おかしいな、片付けたはずなのに。それとも、俺の記憶違いか。
仕方ない、もう一度チェス盤を片付け、ライトを消す。念のため、暗闇の中でもう一度周りの気配を探ってみたが、やはり何もない。夢だったのだろうか。俺は普段、あまり夢を見ないんだけどなあ。どうして仮想世界の中だと夢を見るんだろう。
それとも、クリエイターか誰かが、寝ている間に俺の頭の中へ何かのイメージを流し込んでるのか? そんなの、気持ち悪いことこの上ないんだけど。
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