#10:First Half-2065年11月15日(日)
守備はマン・カヴァー。
ポケットが左から潰される。
仕方なく、セイフティー・バルブのダロンへ投げる。捕ったが、こちらを向いたままディフェンダーに捕まる。ダウン。ゲインは5ヤード。
フラッグが落ちていないのを確認して、サイド・ラインへ下がる。パンターのマットとタッチする。レシーヴァーはみんなディフェンスを振り切れない。ダイム・バックが入っているとはいえ、誰もフリーになれないとは。
しかし、これはジョーのプレイ・コールが悪いのであって、それを俺が何とかしようとしてもうまく行かないのは解っている。既にインターセプトを一つ喰らっているから、これ以上無茶をするとオフェンスの士気が下がる。
ベンチに座り、いつもどおりタオルを頭から被る。これはカメラ除けだ。イヤーフォンでスポッター席からの分析を聞きながら、タブレットを見てドライヴを振り返る。
スタンドから大きな歓声が上がった。フィールドの左に動いているはずの人影が、右に動いている。パント・ブロックでもやられたのだろう。レイヴンズのスペシャル・チームは優秀だからな。
気にせず、ドライブの振り返り。
フィールドではホイッスルが鳴って、プレイが止まったようだが、サイドラインの動きが慌ただしくなった。誰か怪我でもしたのだろう。
気にせず、ドライブの振り返りの続き。
不意に肩を叩かれた。ジョーかと思ったら、スペシャル・チーム・コーディネイターのレジーだった。何の用だ。
「ヘイ、レジー、マットの出番を増やして申し訳ないな。それとも、ブレットが出番をくれって文句言ってるのか?」
「マットの出番はもうないよ、アーティー」
「じゃあ、これから後のドライヴは全部タッチダウンかフィールド・ゴールにしなきゃ」
「できるのか?」
「ジョーに訊いてくれよ」
「お前に訊きに来たんだよ」
「全プレイ、オーディブルにしていいって?」
「違う、パントの話だ。お前、高校の時に蹴ったことがあるらしいな。何ヤードくらい飛ぶ?」
何だ、怪我したのはマットだったのか。しかし、そんなのは先にブレットへ訊けよ。もっとも、あいつは全ての
「70ヤードくらいって言ったら信用するのかね」
「70ヤード? パント位置からか?」
「スクリメージからだ」
「スクリメージ!? まさか! 高校でか?」
「レイクフォレスト高校のWebサイトで
レジーが首を振る。どうやら冗談だと思っているらしい。しかしそうじゃなくて、俺が持っている唯一の高校記録なんだけどなあ。
「とにかく、次にパントになったら、お前が蹴ってくれ。他に誰も蹴ったことがないらしいんだ」
「
「スクリメージから30ヤードくらいしか飛ばんのだと。ああ、それから、ブレットのキックの時は、ホルダーもやってくれ。シグナルは
「
「デイヴ・パジェットだ。51番」
「ところでスペシャル・チーム分の
「お前の契約がどうなってるのかなんて、俺は知らんよ!」
「さあ、前半残り2分、
「そうですね。まだ得点なしで、レイブンズに21点リードされていますが、最初に申し上げたとおり、ジャガーズオフェンスは後半になると調子が上がってくるんで、なんとかそのきっかけにしたいところだと思います」
「さあ、
「フレッチャーに渡すと見せかけて、そのフレッチャーをブロッカーに使って、プルアウトしてきた
「ジャガーズは
「
「さあ、選手はスペシャル・チームに入れ替わったように見えるんですが、
「
「さあ、やはりナイトが蹴るようです。あるいは、リターンされないようにサイド・ラインの外に蹴り出すのか。さあ、スナップ、蹴った!」
「あー、これは……えーと? いや、意外に飛んでるかもしれませんよ。リターナーがどんどん下がっていきます」
「
「これはリターンできないですよ。飛距離もともかく、
「ここからではレイブンズも
「そうですね、60ヤードくらい進めないといけませんし、無理をして長いパスを投げると、インターセプトが怖いですから。いやしかし、いいパントでしたね。これは後半、ジャガーズはいいフィールドポジションで戦えるんじゃないですか。これもまた、逆転の布石になるかもしれませんよ」
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