東京オリンピックは開催されない

渋谷かな

第1話 感染・ウイルス。ドクターと助手

「2020年、東京オリンピックは開催されなかった。」

 イマドキの世界観。

「地球は未知のウイルスに汚染された。」

 これも時事モノ。

「世界で10億人の人々がウイルスに感染して命を落とした。」

 ウイルスに犠牲はつきものである。

「代わりに四年に一度のウイルス散布実験オリンピックが開催された。」

 悪の科学者たちの本拠地は中国の武漢。

「今回は成功だー! イヤッホー!」

 実験の成功に悪の科学者たちは大喜びである。

「ほとんどのウイルスが実験段階で失敗。先輩ウイルスのサーズは発症させることはできたが、世界中に広めることが出来なかった。」

 サーズの感染者は1万人を超えなかった。しかし、今回のウイルスは既に約10万人の感染者が確認されている。

「それにしてもよく考えたものだ。ウイルスを広めるのはウイルスをバラ撒かなくても、中国人に感染させて、春節祭で世界旅行に行かせれば、あっという間に全世界に広まるではないか! ワッハッハー!」

 もちろんウイルスを作れる悪の科学者たちは優秀である。

「武器でも政治でもない! 世界を征服するのはウイルスだ! ウイルスの名前は、コロナ・ウイルスだ! これで世界は私たちのものだ! ワッハッハー!」

 悪の科学者たちの目的は世界を我が物にすることだった。

「世界の大統領どもに、ウイルスで死にたくなかったら、降伏しろとメールしろ。抗体が欲しれば、我が軍門に降れとな! ワッハッハー!」

 未知のウイルスは最強であった。

「大変です!? ドクターウイルス!?」

 そこに下っ端助手の悪の科学者が慌てて走り込んでくる。

「どうした?」

「未知のウイルスの抗体の入っていた容器を割っちゃいました。アハッ!」

 世界を恐怖のどん底に落としているウイルスの容器を助手が割ってしまった。

「なんだ。割れたのか。ワッハッハー!」

「ワッハッハー!」

 ドクターが笑ったので助手も一緒に笑う。

「なにー!? ウイルスの抗体を割っただと!?」

 現実に戻り悪の科学者が声を裏返らせながら激怒する。

「バカ者ー!? 原因不明の感知しない未知のウイルスなんだぞ!? 感染したら死んじゃうんだぞ!? ふざけるな!? なんとかしろ!?」

 悪の科学者も、ただの一人の人間である。

「ウッ!? 体が重い!? フラフラする!? まさか!? 私はウイルスに感染してしまったのか!?」

 悪の科学者ドクターウイルスは、自分の作ったウイルスに感染して死んでしまった。

「いや~、ドクターが死んでくれて、怒られずに済んだ。ラッキー! アハッ!」

 助手は目の上のたんこぶが消えてスッキリとした。

「これで、この世界は僕のものだ。だって僕の体にはコロナ・ウイルスの抗体の注射をしてあるからね。」

 実は助手は天才だが、ドクターがうるさいのでバカを演じていた。

「世界征服が完璧に創作できている。怖い、自分の才能が恐ろしい。アハッ!」

 やはり助手も世界を、その手に欲しがっていた。

「ウッ!? なんだ!? 目の前が三重に見える!? 馬鹿な!? 僕もウイルスに感染したというのか!? はっ!? もしかして突然変異か!? 考えられる可能性はそれしかない!? 死ねない! 死ぬ訳にはいかないんだ! 僕には世界中の人々をウイルスで感染させて殺してでも守りたいものがあるんだ!?」

 助手も未知のウイルスに感染した。

 終わる。

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