第4話 黒い真実(上)

『あーあー、テステス。音取れてるかな。……あ、もうはじまってる?まじか!』


 俺がある一つのビデオテープを見つけたのは幼馴染と再び会うようになってから、そして兄を失ってからほんの少しの時間が経ってからだった。


『実は2人でビデオ撮ってまーす。……わざわざ病室に呼んで悪いな』

『いやいや、妹の見舞いのついでだ。気にするな』

『妹さんは俺の弟と同い年だろ?その年でこの病気と戦ってるのはすごいよ。……っと雑談はここまでにするか』

『あぁ。真実を語ろう』


 それは、俺が幼かったにしても十分に理解できる内容だった。理解できて、それでなお悲嘆した。真実は時に……いや、いかなる時も残酷だ。



 ******************



 兄にはほとんど会えない。物心ついた時からそう言い聞かされて過ごしてきた。病弱でほとんどを病院で入院して過ごしているらしい。


「いいかい?お前はお前でちゃんと立派に、丈夫に育つんだよ?」

「はい、わかりました」


 そんなことも言われた。何故こんなにも言われるのだろうか。そこまで念押しに言われる理由があるのだろうか。——なんて深く考えたことはない。両親に言われたままを、その通りにこなして過ごしてきた。







 俺には幼馴染がいる、らしい。兄同士が仲良くて、その弟妹きょうだいである俺らも仲良く遊んでいた、らしい。予測形になるのは、俺の記憶がはっきりしている限りではそんなに会えていないからだ。兄と同じように、病院で過ごしているそうだ。会ってみたいと思ったことは多々ある。ただそれと同じだけ、会ってはダメだと言い聞かされてきた。


「なんでダメなんですか?兄様にも、幼馴染ちゃんにも、なんで会ったらいけないんですか?」

「それはね、おまえが辛くなるだけだからだよ……」


 言ってる意味がわからない。兄に会うのだって、友達(当時は幼馴染がそういう認識だったのだ)に会うのだって自由じゃないか。そんな時に出会ったのが。


「おやおや君は……。はは〜ん、なるほどね?」

「……おにいさんはだあれ?」

「僕はね、君のお兄さんの友達だよ。それでもって君のいうところの幼馴染ちゃんのお兄さん。覚えてないかもしれないかもだけれど、僕たちも一緒に遊んだことあるんだよ。そんなに怪しい人じゃないから安心してね」


 今思えば、この出会いさえなければそんなに苦しまずに済んだのかな。……やり直したいだなんて、とてもじゃないけれど思えないけれど。

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