第4話 黒い真実(上)
『あーあー、テステス。音取れてるかな。……あ、もうはじまってる?まじか!』
俺がある一つのビデオテープを見つけたのは幼馴染と再び会うようになってから、そして兄を失ってからほんの少しの時間が経ってからだった。
『実は2人でビデオ撮ってまーす。……わざわざ病室に呼んで悪いな』
『いやいや、妹の見舞いのついでだ。気にするな』
『妹さんは俺の弟と同い年だろ?その年でこの病気と戦ってるのはすごいよ。……っと雑談はここまでにするか』
『あぁ。真実を語ろう』
それは、俺が幼かったにしても十分に理解できる内容だった。理解できて、それでなお悲嘆した。真実は時に……いや、いかなる時も残酷だ。
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兄にはほとんど会えない。物心ついた時からそう言い聞かされて過ごしてきた。病弱でほとんどを病院で入院して過ごしているらしい。
「いいかい?お前はお前でちゃんと立派に、丈夫に育つんだよ?」
「はい、わかりました」
そんなことも言われた。何故こんなにも言われるのだろうか。そこまで念押しに言われる理由があるのだろうか。——なんて深く考えたことはない。両親に言われたままを、その通りにこなして過ごしてきた。
俺には幼馴染がいる、らしい。兄同士が仲良くて、その
「なんでダメなんですか?兄様にも、幼馴染ちゃんにも、なんで会ったらいけないんですか?」
「それはね、おまえが辛くなるだけだからだよ……」
言ってる意味がわからない。兄に会うのだって、友達(当時は幼馴染がそういう認識だったのだ)に会うのだって自由じゃないか。そんな時に出会ったのが。
「おやおや君は……。はは〜ん、なるほどね?」
「……おにいさんはだあれ?」
「僕はね、君のお兄さんの友達だよ。それでもって君のいうところの幼馴染ちゃんのお兄さん。覚えてないかもしれないかもだけれど、僕たちも一緒に遊んだことあるんだよ。そんなに怪しい人じゃないから安心してね」
今思えば、この出会いさえなければそんなに苦しまずに済んだのかな。……やり直したいだなんて、とてもじゃないけれど思えないけれど。
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