07 ついに九人!
「
史奈は、ボスをはじめチームの面々に囲まれながら、ぴょこんと大きく頭を下げた。
五月二十二日、土曜日。
ここは杉戸町内にある広い空き地である。
いずれはどんどん家が建って住宅街の一角になる予定らしいが、現在のところまだ一軒もない。
わたしたちの暮らす埼玉県
強いて特徴をあげるなら、東武動物公園という動物園と遊園地の混在した施設があることくらいか。
なぜ強いてあげる必要があるかというと、正確にはその施設があるのは隣の
あとはもう、地図上で鳥の形に見えるとか、それくらいしか語るところがない。
最寄である東武動物公園駅から路線が分岐して東武伊勢崎線と東武日光線に分かれるため、この町までが電車の本数もそこそこ多くて便利ということらしいのだが、ほとんど町内を出ることのないわたしたち子供には関係のない話だ。
と、田舎町への自慢だか不満だかはここまでにして、なぜわたしの妹である史奈がここでチームのみんなに囲まれ挨拶をしているのかを説明しよう。
校内での違法貼紙の効果も虚しく、入団希望の子がまったく集まらなかったのだ。
あとたった一人というところだったのだけど。
人数が揃ってはいないものの、このままなんにも活動をしないわけにはいかない。
取り合えず個人個人で与えられた練習や筋トレをして、土曜日に集まって初のチーム練習をしようということになっていたその前日、つまり昨日のこと、
外でドンと素振り練習をしているわたしたちをずーっと見ていた史奈が、「入ってあげてもいいよ」と唐突にいってきたのだ。
チームがまともに始動出来ないでいることを聞いて、わたしを助けようと思ってくれたのだろう。駆け回っても駆け回っても得られない選手募集の手応えに、わたし毎日のように愚痴をこぼしていたからな。
史奈はいつも生意気なことばかりいっているけど、心根は優しい子なのだ。
幸いにもうちにグローブは余分にあるし、と早速こうして連れて来て、みんなに囲まれ挨拶をしているというわけだ。
これでついに九人が揃った。チーム正式発足だ! と、事は単純には運ばなかった。
いや発足は間違いなくしたのだけど、そこにいたる紆余曲折というかなんというかがこの直後に起きたのだ。
果たしてどんな話であるのか、順番に追い掛けて行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます