第696話 紅い空

あれから年月は過ぎ、いよいよ空が紅くなる【紅の空】が発生。


そしてクサーヴァーは魔王に、

「魔王様、いよいよ紅い空が発生しましたよ!さあ、勇者とその仲間を討伐に行く時がやってきました!」


しかし魔王、気乗りがしない。

「ようやく怪我が治ったというのに、何故我が出向かねばならぬのだ?」


実際今、勇者一行は魔王城のすぐ近くにきている。


クサーヴァーはそれを待っていた。


「魔王様、今再び勇者はすぐ近くにきております。徹底的に痛めつけ、逃げた所を追いかければ勇者を捕える事ができますよ。」


「何?仕留めるのではないのか?」

魔王は以前、クサーヴァーがそのような事を言っていたはずだと問い詰める。


「あの時は言葉が足りませんでした。勇者を殺してはいけないのです。殺せば別の誰かが新たな勇者となりましょう。しかし勇者は時代に一人。その勇者を捕え、拘束してしまえば?」


「できるのか?どう考えても我が回復している間にあ奴らは更に力を増したではないか!」


「それに関してはご安心を。ちょうど今、勇者とその仲間は女神の加護の効果がほぼなくなってしまいますから、勇者補正はほぼありません!勇者補正のない勇者など、魔王城にいる魔王様の敵ではありません!そして逃げ帰る勇者を追いかけ、捉えるのですよ!」


「ほう?そう上手く行くのか?まあいい、今城に入ったようだな。迎え撃ち、その力を見定めようではないか!」


クサーヴァーはこの時期に魔王城へ勇者を越させるのに相当苦労をした。

時に邪魔をし、時に進路付近の町を襲い、村を破壊しその進みを足止めさせた。

そして予言の時がやってきた。


勇者パーティには、死なない程度に魔王に痛めつけられ、ゲートで逃げ帰ってもらわねばならない。しかしそれは今の勇者パーティの実力では難しい。

なので、クサーヴァーは策を弄している。


勇者たちの実力はその策が成功すれば、その半分も出ないだろう。

そんな事を思っていたが、想定以上の速度で魔王の居る場所にやってきた。


【くっ!なんて速さだ!皆僕が思ったより実力をつけたのか?しかし、あれを仕掛けるのは流石に・・・・しかし、このままでは・・・・】


しかしクサーヴァーは決断をできないまま勇者たちを迎え撃つこととなってしまった。


魔王の居る部屋と勇者たちは今や扉一枚を隔てるのみ。

そして魔王は何のためらいもなくその扉を自らの魔法で開け放つ。


「久しいの、勇者ども。またやられにやってきたのか?」


そうは言っても前回魔王と対峙した時は、クサーヴァーが何とか追い返したのだ。

だが今やどう見繕っても魔王城で魔王はその実力を120%発揮できるのだが、それを差し引いても魔王は勇者に遠く及ばない力関係となっている。


このままではあっけなく魔王は死ぬだろう。

そうすると困るのだ。

また時間は経てば魔王は復活する。それでは意味がない。


「今度こそ仕留めさせてもらおう!今度はクサーヴァー、君の邪魔はさせないよ!」

勇者ヨーリスは自信があるようだ。だがクサーヴァーがこのまま手をこまねいているわけではない。


二度目はない。今回だけの策。

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