第589話 孤高のおっさん

おっさんは孤独だったよ。

人によってはこう言うのを孤高のなんちゃらと言うのかもだけど・・・・


【マスターごめんなさいね。エルフを悪く思わないで。本当は誰一人あんな風に思っていませんの。我が子を父親に抱きしめてほしいのよ?ですが、マスターの今後の事を考えると、今後産まれてくるマスターとエルフの子供には、情を持たない方がお互いの為なので・・・・今は理解できないと思われますが、この先何百年か経てば、きっと理解できるでしょう・・・・】

「うん?和佳なんか言った?」

「いえ?それよりもずいぶんな落ち込みようですわね?」

「ああ・・・・ここにもおっさんの居場所が無かったと思ってね。」

「・・・・ここにもですか?」

「うん。実は領地にもおっさんの居場所がないんだよ。」

「あら?どうしてそう思われるのかしら?」

「実際おっさんがいても居なくても領地は滞りなく発展しているし、シラカワ商会も、おっさんの力が無くてもどんどん売り上げが上がっているし。何より妻は皆、それぞれの活動が忙しくてね。おっさんとずっと居てくれる妻が誰も居ないんだよね。」

・・・・これは重傷ですわ。

「領地には本妻リュシエンヌ様がずっとおられますわ?」

「・・・・そう思う?」

【ごめんなさい本当はそんな事微塵も思ってません。長い目で見ると、誰一人マスターの傍に寄り添い続ける女性がいませんね。】

「それにね和佳、おっさん日本にも、もはや居場所がないんだよ。もう死んでる事になっているし、向こうで家族と一緒に過ごそうとしても、やはりおっさん死んだ事になってるから色々不都合があってね・・・・下手に外へ出掛けられないし。」

【・・・・死んだ事になっている・・・・それに向こうでは妻は一人と聞いていますが、こちらで相当数の妻がマスターにはいますからね。それにあちらにも別の女性が・・・・今は関係を持っていないようですが・・・・なお悪い事には、マスターの精神の異常を、ずっとそのまま放置してしまった事でしょうね・・・・こちらの世界では特に違和感が無いのですが、あちらの世界ではきっと、倫理観が全く違ってしまっているのでしょう・・・・お可哀想なマスター。せめて私がずっとお傍におりますからね。】

「なあさっきからなんか言ってない?」

「ええ、私はずっとマスターの傍らにおりますからね。出産で難しい時は、妹がいますわ。」

「よく分からんがそうなのか?」

「ええ。それに・・・・こう見えて私マスターにぞっこんなのですよ?」

「そうなのか?こんな何処にでも居そうなおっさんの何処にぞっこんになったのか知らんけど。」


精神崩壊の最後の砦・和佳。

孤高の白河小次郎に安らぎの地はあるのか?

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