第40話 水中監獄 中層



 看守室から元の部屋に戻り、扉の近くにあった通路の先、階段を覗き込む。


 地下に続いているようだが、そこも真っ暗で足元さえよく見えない。まるで暗闇に沈んでいくような印象すらある。


 ゴギョウはは腰にランタンをぶら下げてそこに輝石を放り込む。

 トンネルを掘った時のように頭に輝石のついたヘアバンドをくくりつけるのは難しい。

 ぼんやりと足元と前方だけを照らすランタンを頼りに階段を下りる。

 

 ところで、甲冑などはあったがまだポーションなどそれらしいアイテムは手に入れていない。本当にこのダンジョンにあるのだろうか。

 あるとすればどのような形であるのだろう。

 宝箱か、モンスターからドロップか、それともその辺に落ちているものなのか。


 階段をしばらく下りると踊り場に出て、向きを180度変えてさらに階段は下へと続く。

 途中、モンスターも出なければ景色に変化もない。

 ちょうどよいので踊り場を囲むように青い薪を設置し、輝石で踊り場全体を照らすように置いていく。

 拾った看守の甲冑シリーズや貧乏性で拾っていた黒ローブの布など、とりあえず必要のなさそうなものを置いていく。


 腰をおろしてアイテムストレージから取り出した紅茶セットでお茶を淹れる。 

 しばし休憩タイムである。ついでにパンとかじりつつ武器の点検を行う。


 しかし、斬撃耐性のあるモンスパーばかりで今のところこのショートソードでは少々面倒くさい。

 毒も効果がなさそうだ。

 現状毒沼の古竜の鱗スキルで作り出したブロック状の壁で殴りつけるしか打撃方法がない。

 しかしこれも、振り下ろした腕の力だけで攻撃力が高いわけではない。少し離れた位置から攻撃できるというメリットはあるが…。

 ダンジョンに武器とか落ちていないだろうか…。


 

 荷物の整理を終え、休憩も切り上げてゴギョウは立ち上がる。とにかく進めるところまで行ってみよう。

 再び階段を下り、輝石をはめ込んだブロックも設置していく。

 少し照らされてぼんやりと明るくなるのはいいのだが、熱はないので相変わらず寒い。

 防寒具があっても寒いのだが、ここに入った時よりさらに寒くなっているように感じる。


 不思議なことに階段エリアでモンスターと遭遇することはなかった。もしかしたら安全地帯のようなものなのだろうか。

 次のフロアに着くと、早速モンスターが現れる。

 ガイコツ剣士だった。鎧を身につけているが、革と金属を組み合わせた軽装寄りの装備に欠けた小さな金属盾。

 剣は先の方が半分ほど欠けている。

 カタカタと音を立てて走り寄ってくるのでスキルの壁ブロックで殴りつける。

 一度殴っただけではガイコツ剣士は倒れず、二度、三度と続けて攻撃する。

 殴るたびパラパラと少しずつ骨が欠けていき、ガイコツ剣士は糸の切れた人形のように倒れ込み動かなくなる。

 




 新しいフロアも牢屋のような作りだったが、今度の部屋は広めに作られていた。

 壁もあちこちが崩れていてそこから水が滲み出ていたり、足元には水たまりが多くみられた。

 ガイコツ剣士が徘徊しているばかりで前フロアとの違いは牢が広い、くらいしかない。


 そういえば、ここで倒したモンスターはガイコツや不気味な甲冑など、これまで出会ったモンスターと違ってオバケのような奴らばかりだった。クラフトスキルで解体をしなくてもそのままバラバラになり拾い上げるだけで素材を拾うことができた。

 モンスターのカテゴリーが違うのだろうか。

 

 ゴギョウは毒沼の古竜のスキルのおかげで傷ひとつなく、ここの薄暗い雰囲気にも慣れたせいか警戒がどんどん薄れてしまっている。

 ガイコツ剣士の相手も最早作業となり、ショートソードすら鞘に収めたまま、足音に注意を払うことなくまるで散歩をする様にダンジョン内を歩く。


 そんな時、ひとつの広い牢屋でガイコツ剣士三体に囲まれる。

 しかしスキルの壁がしっかりと守ってくれるので一方的に殴り続ける。

 いつものようにスキルの壁をガンガンと殴りつけてくるガイコツ剣士の折れた剣がぼんやりと光って見えた。

 殴りつけた瞬間うっすらと、青白く光って見える。

 すでに一体はバラバラになっていて残りの二体の内、一体の持つ折れた剣だけが不思議と光っている。


 とりあえず残りのガイコツ剣士も殴り倒しバラバラにする。

 ちなみにバラバラにするコツは、腰の関節を狙い、革鎧の上から強く殴ると下半身がガタガタになり、振り上げた腕の肘部分を叩き折る。最後倒れたガイコツ剣士のドクロを下からすくい上げるように殴ると簡単に頭だけが飛んでいき動かなくなるのだ。


 

 折れた剣を拾い上げ見てみると、特に変わったところはない。前のフロアにいた黒ローブが持っていたものより少し小ぶりに見えるくらいである。

 アイテムストレージに収納してみる。

 表示された名前は「氷の折れた短剣」であった。


「属性武器ってやつかな…?」


 転移者の拠点でマサさんからいろいろと聞かされたが、武器や防具に火や水、雷などの特殊効果を付与する術があるとかなんとか。

 いろいろと言われすぎてぼんやりとしか書いていなかったので覚えていないが。確かそんな感じだったと思う。


 とりあえず「氷の折れた短剣」を回収したままフロアの散策を続けるのであった。



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