第30話 石壁の村 青い石
何事もなく村についたゴギョウとミナミは門番の男性に挨拶をしてテトの宿に向かう。
ミナミは初めてきたらしく村を囲う石の壁を見上げながら歩く。
宿に入るとテトはカウンターの奥、厨房で作業中のようだった。
ルッカの姿は見えない。
「すいません、テトさん。ルッカは帰ってきませんでしたか?」
ゴギョウの声に返事をしながら手を止めてテトは宿の入り口のホールへとやってきた。
「おかえりなさい、ゴギョウさん。ルッカなら二階の部屋にいると思いますよ」
そう言って視線を2階にやる。
「ところで、そちらの方は…?」
ゴギョウの後ろでキョロキョロと辺りを見渡すミナミ。こんな半端なところで宿なんて需要があるのだろうか…そんなことを考えているのだろう。
「あぁ、私はミナミよ。山を越えた先の街から来たの。」
簡単に街側から地下ダンジョンに入り、入り口が崩れたためこちらに来たことを説明した。
階下に人の気配を感じたのだろうか、階段の上からルッカぎこちらをのぞいていた。
「ルッカ、この人は大丈夫だよ」
椅子やテーブルで姿を隠しながら小さな体のルッカが近づいてくる。
「ゴギョウ殿、おかえりなさいです!」
「うん、ただいま。村の人から地下の話は聞けたかい?」
「ええ、オババ殿から…、立ち話もなんです!二階の部屋にいきましょう!」
「そうだね、テトさんまた夕食になったら降りてきますね」
「はい、ゆっくり休んでくださいね」
ミナミもしばらく街へは戻れないだろう、とテトに何日分かの宿代を渡して二階の客室に向かう。
部屋はもちろん別なので、とりあえず荷物を自分の部屋に放り込みゴギョウとルッカの泊まる部屋に集まった。
まずは、ルッカの聞いた情報から聞くことにした。
「オババ殿の話では、古い言い伝えで山の一部が鉱山だったそうです。ですが、何百年か前に空から土や岩が降ってきて、この辺りの山々が埋まり、山脈になったらしいです」
「なんかふわっとした話だね」
「ええ、ほんとうはもっと詳しく教えてくださったのですが忘れてしまいました!」
ニコッといい笑顔を見せてくるルッカ。
「私のいた街でもそんな感じよ。土が降ってきたのはよくわからないけど、地下に大昔の鉱山が埋まっていてそこで『魔除けの石』が採れたらしいの」
「魔除けの石…?」
「青い篝火の材料よ」
「ああ、結構レアなアイテムだよね。初めて見たよ」
「この世界に青い篝火や青い薪なんてものはもともと存在しないらしいの。私たち転位者だけが作れるのよ」
「そうなんだ…篝火はほとんど完全な安全地帯になるんだよね?」
「篝火ならね。でも青い薪だと範囲が狭すぎるし青い篝火ほどの効果もないから身を守れても生活はできないの」
たしかに青い薪では1メートル四方ほどしかカバーできず、通路を塞ぐくらいにしか使えない。
「そして、転移してきた人は転移条件上間違いなく篝火を所持していなかったわ。だからかなりの数の人が…死んだわ…」
確かに、訳もわからず放り出されて、ゲームのシステムが反映されている異世界だとすぐに気づき適切な行動が取れる人などほとんどいないだろう。
毒の沼地でみたモンスターたちがたくさんいるこの世界で、なんの知識もなしに生きていくのは難しそうである。
「そうだね、僕も篝火がなかったら絶対に死んでたもんな…」
「…」
「……」
「………」
「…は?…え?」
ミナミがまた驚いた表情になり固まった。
そんなにおかしなことは言っていないはずなのだが…?
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
読んでいただきありがとうございます!
のんびり書いてますが、どうぞお付き合いくださいませ…。
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