第22話 廃校街 よろず屋
「なあ、旦那。何か買ってってくれよ!」
部屋の奥には石でできたカウンターがあり、その上からその声は聞こえてきた。
輝石で照らされた部屋にいたのは、尖った耳に禿げ上がった頭。ギョロリとした眼に体格は子供のように小さい。まるでファンタジーに出てくるゴブリンのようだった。
ただ肌の色は物語やゲームでは緑のイメージがあるがコイツの肌は黒い。
黒いゴブリン。それが言葉を発しているのだ。違和感が凄い。
「持ってんだろう?旦那、この世界の人間じゃあないんだろう?なんか買っていっておくれよ」
黄色い瞳のゴブリンはこちらが一言も喋っていないのにペラペラと話しかけてくる。しかも、転移者であることがわかるようだ。
「お前はなんなんだ?モンスターじゃないのか?」
「あっしはゴブリン族、モンスターじゃあないですよ旦那。ゴブリン族のよろず屋、ボッカと言いましてね、とりあえず何か必要なものがあったら売りますよ、さあさあ、何か買ってってくれよ」
ゴギョウの短い一言につらつらとやかましく喋りかけてくる。この黒いゴブリン、ボッカは黒い体を活かして暗闇を移動し、さまざまなものを集める。そしてため込んだものを物々交換などで生活しているそうだ。
そしてゴギョウを転移者とわかったのは、こんな場所に薬や食料の詰まったバッグや予備の武器など、そう言った荷物を全く持っていないからだという。
さらに、この廃校街には、別の転移者が1人いるらしいのだ。
「交換といっても僕は今『なれはて坑夫』の爪や牙みたいな素材と魔石がすこしあるだけだよ」
見た目は恐ろしいがニコニコと笑顔?で人懐っこい話し方をする。敵意がないようなので剣を収め話をしてみることにした。
「ええ、ええ、旦那。旦那が転移者ならレベルがあるでしょう?」
「ああ、そうみたいだね、それがどうしたの?」
「ええ、はい、このボッカのよろず屋、物と物の交換もしますがね、ええ、旦那の経験値でもお買い物ができますよ、ええ」
そう言ってボッカは懐から四角い水晶を取り出す。紫色に濁ったさらに触れると任意の経験値をため込むことができるらしい。そして溜め込んだ経験値をボッカは『有効利用』するのだそうだ。
「経験値なんてどうやってわかるんだ?」
「旦那たちはみれるらしいですよ、ええ、あっしはわからないんですがね、ええ、はい、なにか、知らないんですがね」
廃校街にもう1人いるという転移者がそう言っていたらし
い。
ゴギョウは整地ばかりしていたのでゲームのステータスやスキルについてはあまり詳しくない。
ステータス画面も最低限しか見ていないので、なんなら自分のレベルもイマイチ覚えていない。
2日目にレベルが上がって以来上がっていないはずだだし、余計にステータスウインドウを見ることがない。
専らアイテムストレージや、アイテムの説明ばかりだ。
「ああ、でも旦那、この水晶に触ってもらったら、はい、わかりますよ、はい」
「へえ、触ってみてもいいかな?」
「どうぞどうそ、ぜひ触ってください」
ゴギョウが紫色の水晶に触れるとぼんやりと手元が光り始めた。
浮かび上がった数字はおよそ14万弱。
「へへへ、旦那!持ってますね!ええ、ええ、うちのものならなんだって買えますよ、ええ、ええ!」
ボッカは興奮したように鼻息を荒くし目を輝かせる。
「ちなみに物々交換だとどうなるんだ?」
「ええ、はい、使えるものはそのまま使用しますし、はい、使わないものでしたら、この槌で叩くと、経験値に変換されて、はい、水晶に、はい、吸収させます、ええ」
ふむ、この水晶は経験値、レベルを上げるためのエネルギーを収納しておける財布のようなものなのだろうか。
ゴギョウは手持ちのなれはて坑夫の素材や、鉱石、魔石の一部を経験値として砕いてもらうとこにした。
「旦那、結構もっておりますね、ええ、720ソルになりました、ささ、商品見てください」
そう言ってボッカはカウンターに並べられた石ころや貴金属などを勧めてきた。
「このキラキラした石はなんだ?」
「ええ、ええ、それはですね…」
と端から説明してくれる。
流石(ながれいし)小
【傷ついた体をすこしだけ、ゆっくりと癒してくれる】
流石 中
【傷ついた体をゆっくりと癒してくれる】
火石(ひいし)
【魔力を込めると少しだけ火が出る】
キラキラ石
【綺麗に光る石。目印になる。壊れやすい。】
木の矢
【小さな金属矢尻の矢】
鉄の矢
【金属でできた矢。優れた刺突力】
小さな投げナイフ
【とても小さな金属ナイフ】
小さな赤い石の指輪
【火除けのまじないがかかった指輪】
小さな薬石の指輪
【ほんの少しだけ毒耐性が上がる】
足下のリグレット
【装備者の立てる物音を少し小さくしてくれる】
廃校街下層の鍵
【廃校街のどこかの鍵】
「ええ、旦那!なににしましょう?」
せっかくだ、何かを買うとしよう。
ゴギョウは変換した経験値、『ソル』で買えるだけ買うことにした。
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