第21話 廃校街 上層
長方形の広場は中央に線路があり幅は6〜7メートル、20メートルほど進むと緩やかな下り坂になって、すりばちをうずまき状に下っていく。
ゴギョウがしばらく進むと左手に洞穴のようなものがある。
「廃坑っていうくらいだからここで何か採掘してたのかな…」
警戒しながら中を覗くと、明かりはなくゴギョウの輝石がなければ何も見えないだろう。
洞窟の中はすぐに補強の木枠が設置されており、打ち壊された扉が転がっている。扉のあった場所の側の壁に菱形の輝石があったので軽く触れて魔力を通す。
すると、中は意外と広く石でてきたテーブルや椅子、棚なんかが確認できた。
なるほど、ここのような洞窟はこの先もいくつかあるのだろう。そしてそれらは住居のようになっている筈だ。
ここが廃校になって誰かが住み着いたのか、まだ生きた坑夫は住居としていたのかは不明だが、ここは街なのだろう。
耳を覚ますと何やらイビキのようなものが聞こえる。
ゴギョウは音を立てないように注意して部屋の奥へと進む。
テーブルの影で「なれはて坑夫」が…寝ているのか?
寝ているなれはて坑夫に背後から忍び寄りゴギョウはショートソードを音もなく振るう。
逆手に持ったショートソードで首元を切り裂き、体重をかけて背中に突き立てる。
叫び声などをあげることなくなれはて坑夫は物言わぬ骸となる。
そのまま薄明るい室内を見渡してみる。
ドアのようなものはないが部屋が後3つあるようだ。奥から順に散策することにする。
1つ目の部屋になるべく静かに光らせた輝石を放り込む。
いた。なれはて坑夫だ。こいつも眠っている
輝石の光が消えないうちにゴギョウは静かに近寄り、先ほどと同じように音もなくなれはて坑夫を倒す。
部屋の中には石でできたベッドのようなものがある。小さなテーブルのようなものも石でできているようで先程のリビングみたいな場所と同じ意匠のようだ。
他に特に目立ったものもないため隣の部屋へ向かう。
そこは明かりがついているようで、二体のなれはて坑夫がいた。
それぞれが竈門のようなもののそばでゴソゴソしている。
ゴギョウはその片方に近寄りショートソードを背中に突き立てる。続けてもう一体にも切りつけようと突き立てたショートソードを抜き、駆け寄る。
なれはて坑夫に気付かれ、袈裟斬りに振るったショートソードは躱されてしまう。
後ろに飛んで距離を取られるとショートソードではリーチが足りない。
なれはて坑夫の腕の方が長く、有利だろう。しかしゴギョウにはスキルで作られる壁があるので一方的に攻撃できると言っても過言ではない。
この部屋はおそらくキッチンのような場所と思われる。
最後の部屋は寝室のようで、1つ目の部屋とほとんど同じだった。
ゴギョウはいくつかの同じような部屋の中を調べながら下へ、下へと進む。
はじめは驚いたがなれはて坑夫が弱いのか、ゴギョウとの相性が悪いのか、とにかく毒がかなりゆうこうだったため難なく倒すことができる。
ふと、傾斜も緩やかで、なかなか広くなっている場所についた。
「この辺で一度引き返そうかな…」
大きめの洞窟があり、その前が広場のようになっている。
どこかで青い薪を設置して、目印にもしたい。
大きな洞窟のそばにはいくつかの小さな洞窟もある。
そのうちの1つ、小さな洞窟を安全地帯にしようと中を調べる。
なれはて坑夫はいない。しかしまだ奥の方に何か気配を感じる。
そろそろと進むと奥の方は明るいようだ。
が、ゴギョウへ向けて話しかけてくる声がした。
「旦那、旦那、いらっしゃい。何か買わないか、旦那。よう」
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