第19話 青い薪




 『なれはて坑夫』


 それが先ほどの白い化物の名前であった。

 倒した後、解体、回収ができたのでその素材名から判明した。

 骨片や爪などの肉体が素材として表示されているので、なれはてといっても元が人間ということはないようだ。


 弱点は毒なのか、かなりの効果があった。しかし、これまでは毒性の強い沼地のモンスター相手ばかりだったため、そもそも毒で弱体化や致命するモンスターは多いのではないだろうか。

 それでもゴギョウは片腕が使えず、戦力には自信がない。ケチって使わないで置いたスキルポイントを「毒沼の古竜の鱗」に振って10まであげた。残りポイントも40を切った。

 これで全身をカバーできる壁を作り出せたが、さらにオートガード機能もあり盾の使えないゴギョウにとってかなり大きい効果を得ることができた。

 しかしこのスキルの壁は毒性がありルッカを庇ったりは難しい。



「と、言うわけで僕はこの下を探索してみる。ルッカは一度村に戻ってこの坑道のことを聞いてみて欲しい」


「1人じゃ危険ではないですか?私も探索ならお役に立てると思うのですが…」


「さっきの緑っぽい壁みたろ?大丈夫だって!」


「ううーん…、では、危険だと感じたらすぐに戻ってきてください。毒沼の拠点のみなさんもきっと待っていますし!」


「了解です!腹が空いたら帰ります!」


 戯けるゴギョウだが時計のようなものもないし、腹具合くらいしか目安になるようなものもない。


 こうしてルッカは村へ、ゴギョウは地下へと進む。

 ラッカと別れるとゴギョウは青い鉱石を取り出した。

 ずっと気になっていたが、この色になんとなく覚えがあった。

 青い篝火である。

 もしさきほどのなれはて坑夫がゴギョウの降りた後入れ違いに外に出るようになったら危ない。

 外に出ないようしたいが埋めてしまうのも具合が悪い。出入りがかなり面倒になる。


 そんなことを考えていると青い篝火のことをふと思い出し、青い鉱石の色合いなどが似ていると思ったのだ。


 クラフトテーブルを作成し、青い鉱石の詳細な情報を調べる。

 調べる、と言ってもこれこれどうゆうものだ、とわかるのではなく、何が作れるかと言う選択肢がクラフトボードに表示されるのだ。

 そのテーブルがあるのとないのでは作成できるものの種類が変わってくる。


 果たして、それはあった。

 青い篝火ではなく「青いまき」。

 篝火のように拠点にはできないが、狭い範囲に簡易的な安全地帯を作成するアイテムである。

 つまりモンスターなどの作成者に対し脅威や敵意あるものの侵入も防ぐことができる。


 さきほど採取した鉱石から3つクラフトすることができた。

 「青い薪」太さが5センチ、長さが20センチほどの、黒い炭、備長炭のような見た目だった。

 それをここへくる途中の坑道に設置し、火石で火をつけた。

 ぼんやりと青い火で辺りが照らされ、その灯りの届く3〜4メートルほどの空間が安全地帯となった。

 おそらくこれで外に「なれはて坑夫」が出て行くことは防げるはずである。


 


 準備はできた。

 ゴギョウは先の白い化物の入っていた籠へと向かう。おそらくそれがエレベーターのような役割だろうと見当をつける。


 四角い籠をおそるおそる覗き込む。床は木の板が貼ってあり…、黒いシミのようなものがたくさんある。その中央にスイッチのような、凸がある。踏むことで作動しそうだ。

 そしてこの黒いシミ…。

 血痕…?


「いやいやまさかねえ…」



 少しだけビビったゴギョウは床の凸スイッチを踏んで、扉が閉まる前に慌てて籠の外へ出たのだった。


 ガシャンッと音を立てて扉が閉まると鎖の擦れる音と共に籠が地面へと吸い込まれていった。


 ぽっかりと空いた穴の前でゴギョウは立ち尽くすのだった。



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