第11話 沼地の整地
沼地の拠点からしばらく。
小さな水たまりや沼などを土で埋め、小高い丘などはどんどん平にならしていく。
やはり戦闘よりもこちらの方が性に合う。ものすごくよい手際で地面が均されていく。
ルッカは最初はチョロチョロしていたのだが、ゴギョウがあまりの速さで整地をしながら進むのでドン引きの表情で後をついてくるだけとなった。
「ゴギョウ殿、もはやキモいですね…」
「ん?失礼だな、フツーだよ、フツー!」
「無自覚ですか…うわぁ…」
会話をしながらもゴギョウはどんどんと地面を均し、以前蛇がぶら下がっていた木も伐採。落ちてくる蛇どもをサクサク片付けていく。
動かせない左腕だが痛みが和らいだおかげで簡単な作業ならば問題なく動けるようになっていた。
歩きながら右手をひらひらさせているだけにしか見えないが、ルッカには何か、透明な力で土が削られたり、何もないところから土や石が現れ水たまりや穴なんかが平にされていっているような、不思議な光景が見える。
ゴギョウのクラフトスキルというものの力らしいのだが、説明されても初めて見るものの上、ゴギョウが夢中になって行うそのスピードはもはや訳がわからない。
そうしてしばらく進んでいるとルッカの感知魔法にモンスターの気配がひっかかる。
「ゴギョウ殿、その草むらの先に…結構な数がいます…!」
「ん?おおきさは?」
「私より2回りくらい大きいと思います。おそらく沼ガエルですね」
ルッカの大きさがだいたい40センチほどである。
その2回り大きなカエルとなると相当でかい…。
しかしそのくらいの大きさなら八ツ首の蛇に比べればなんてことないだろう。
「そいつら、強いか?」
怪我を負ってから始めての戦闘になる。警戒はするに越したことはない。
「毒を吐き出してきます、動きは飛び跳ねたりしてのしかかりに気を付ければ、特に横の動きはあまり速くないですね」
草むらからおそるおそる先を覗いてみると、たしかにカエルが見える。
赤い肌に緑色の斑点がある。
とりあえず一番近くのカエルに奇襲を仕掛ける。
背後から静かに近寄り、ショートソードを一閃。
フギャッ!と鳴いてカエルは切り裂かれ、すぐに動かなくなる。
「一撃でいけるな、ルッカは離れていてくれ、僕が後ろから攻撃されそうなら教えてほしい」
「わかりました!気をつけてくださいね!」
ショートソードを前に突き出し、その先に毒沼の古竜のスキルで壁を作る。
先程1匹を仕留めた時に他のカエルに気付かれたので、ルッカの言っていた毒や飛び掛かりを警戒しながら距離を積める。
緑色の壁は手をかざした先に作れるが、左腕が動かせないので右手で作るしかない。
左でもできないことはないのだが左手の先から肩あたりまでを覆う壁で、横からの攻撃などは防ぐことができそうだ。
飛びかかってくるカエルを緑色の壁で受け止め、すぐさま解除してショートソードを突き刺し払う。左肩のスキルの壁にカエルの毒液が当たるが体にはかからなかった。位置を確認して距離を詰め突く。
7体ほど倒したところでルッカから
「それで最後ですよ!」
と声がかかった。まだ赤い塊が草むらや水際に見えるが、どうやらデカいキノコのようだ。
カエルと思いショートソードを突き立てたが手応えが違ったのですがわかった。
このキノコに紛れて獲物を狙うのがこのカエルどもらしい。
ルッカが駆け寄ってくると、
「お見事でした!ゴギョウ殿は剣士のスキルもお持ちなのでしょうか?!」
剣士どころか以前の世界でチャンバラもやったことがない。
「うーん、剣士のスキルはなかったと思うなあ。」
「あっ、もしかしたら毒沼の古竜の蛇ってのが武器関係のスキルなのかも」
「なるほど…この辺りのカエル程度なら問題なさそうなので次に出会ったら試してみるのがいいかもしれませんね!」
「そうだな、あのでかい蛇みたいなのがまたきた時にちょっとでも強くないとなあ」
「アレは二股の蛇の親玉みたいな奴ですからそうそう出てこられてはたまりませんが…。強くなられるのは賛成です!ワタシ、戦えませんし!」
「戦えなくてもモンスターが出てきたら教えてくれよ。それだけでも十分助かるからさ」
「かしこまりました!では、先を急ぎましょう!まだまだ遠いですからね!」
再び整地をしながら進む。ついでにカエルも解体しておいた。何かに使えるかもしれない。
整地しながら進むため、後ろにはほとんど真っ直ぐな道のようなものが出来上がっている。幅は車道二車線分くらいだろうか。
もし馬車などがあるならそれなりの速さで沼地の拠点と行き来できるようになるかもしれない。
ただ、カエルのような小型や中型のモンスターは多く、それらが少々邪魔かもしれない。
カエルの他にゴギョウが戦ったモンスターは二股の蛇の、二足歩行するワニのような生き物、水たまりなどに生息するトゲトゲの飛魚のような魚など、様々である。
流石に群れをなして襲われたら危ないかもしれないが、1匹だけならなんとか倒せるモンスターばかりであった。
複数ある場合は石ころを投げたりして気を引いて、一対一で戦うようにした。
危なげなく歩を進め、やがて陽が落ちた。
整地してできた道の横に、なるべく頑丈になるよう石材を使用して簡易な小屋を建てる。
囲炉裏と木の板の寝床だけの簡単なもので、雨風を凌げるようにちいさな窓がいくつかと木のドアの、四角い小屋である。
これを日が暮れるたびに作り、3日のうち2日は翌朝壊していく。
1つは残し、今後この道を行く時の休憩場所にするつもりだ。
出発しておよそひと月、丘の先に小さな集落のようなものが見えてきた。
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