第7話・真知子・そして次の日・・・


そんな日に限って、夫の月命日だった。


 お墓は、義祖父母のもとに入る為、仏壇も近くの義実家に行く事になった。


 夫が、子供を連れて実家に遊びに行く。

夫の結婚が決まった時、結婚した時、子供が欲しいと望みかけてた頃。

何度、そんな想像をしただろう。

数年間傍にいた夫は、こんな形で実家に戻ってしまった。


「伊藤さんを紹介して頂いて、ありがとうございました。手続きも大変だったし・・・助かりました。」


 お礼する事を忘れてはいけなかった。


いつまでも感傷に浸る訳には行かない。

伊藤さん・・・彼の名前を口にすると、昨日の情事を思い出し、一瞬体の奥が熱くなったが、でも、それとこれとは別だ。


 夫を亡くしてから、本当に私一人では何もできなかったと実感することばかりだった。夫には感謝ばかりだった。そして彼も。


 たとえ、私を誘ったのが一時の遊びだとしても。

感謝は忘れたくなかった。


 これ、預かってるよ。


帰り際、夫の母に私は、その茶封筒を渡されたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る