第3話・海斗・惹かれる

 夜になるまで、長いような。短いような時間が流れて行ったのに。

ホテルに入り。部屋にたどり着くまで、淡々としていた。


 独身ではない、僕と彼女がお互いに、ホテルで一緒にいるのは危険すぎた。


 ロビーで。カフェでお茶を飲むなら、いつもの打ち合わせです。この時間しか会えないので時間を作りました。会社の都合で急きょ確認事項ができて・・・ともし知人に見られたら言い訳をする言葉は幾つか考えてきていた。


 でも、どれも薄っぺらい。


 そんなのはただの言い訳に過ぎない。僕は本気だから。言い訳となっているから。


  僕は一刻も早く君を抱きしめたかった。触れたかった。髪に。この小さな手はあたたかいか?冷たいか?そういった所から君を近くで感じたいと思った。


 部屋に入った瞬間、天気ががらりと変わったのだろうか。雨音と防音ガラスの隙間からかすかに、衝撃音が聞こえてくる。・・・雷だろうか。今の僕たちには優しい音だった。それは、まるで世界中で僕たちが二人きりなような特別な気分にさせてくれた。


 長めに息を吐く。


 妻を抱いたのはだいぶ前だった。そのせいだけではない。

ドキドキして。

激しく欲情していた。


まるで初めて恋人ができた、初めて女性の身体に触れた、初めて女性を手に入れた、中学生のようだった。


 

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