第3話

「ニューロボコンに出たいとか言ってんだ。そんなカネうちにはねーよ」


「あら、じゃあ活動計画書で、その予算を申請すればいいじゃない」


奥川が振り返った。


「そのための、活動計画なんだから」


もの凄いタイミングで、奥川はもの凄い余計なことを言う。


「じゃあ俺たちも、ニューロボコンに参加出来るってことですか?」


鹿島の目が急に輝きだす。


その瞳がまぶしすぎて、俺には何かの嫌がらせのようだ。


「しっかり計画書を書いて、期日までに提出できればね。認められるんじゃないのかなぁ」


「ありがとうございます!」


今さっきまで俺の目の前に置かれていたその紙切れは、奥川の手に取り上げられ、さらに鹿島の手へと渡った。


なぜ鹿島に渡す? 


本来ならそれは、部長である俺が案を出して決めることだ。


「まぁ、精々がんばれよ」


皮肉を込めて言ったつもりだったのに、鹿島からは「はいっ!」なんていう元気な声が返ってくる。


いや、そうじゃないだろう、お前。


俺は奥川へ視線を移した。


コイツも余計なこと言ってんじゃねーよ。


ちょこちょこ理科室に顔を出すわりには、一度も入部の意思を示したことがないくせに。


入るならさっさと入ればいいのに。


まぁ、生徒会の方が忙しいのは分かるけど、何をそんなに迷うことがあるのか、俺には分からない。


ふいに山崎が、俺の肩にポンと手を置いた。


「お前もホント、素直じゃないよな」


俺が今この瞬間に、そうやって奥川に言ってやろうと思っていたのに、山崎はその俺のセリフを奪ったうえに、笑って肩を叩いてくる。


は? それをこの俺に言ってんの? 


俺はその手を振り払う。


何をのんきなこと、言ってんだ。


見当違いも甚だしい。


そんな計画書、提出前にチェックして、俺が潰しておかないと。


「書き上がったら、ちゃんと見せろよ。部長の俺の許可がいるんだからな」


「はいっ!」


何だよあいつら、調子に乗りやがって。


ニューロボコンの課題なんか話し合ったって、お前ら、どこまで理解できる?


うっとうしくて、仕方がない。


早く静かにならねーかな。


俺はさっさとゲームチェックしたいだけなのにな。


仕方なく携帯を取りだして、自分のゲームアプリを起動する。


山崎と奥川が一年に対して妙な先輩風を吹かせているのが、何よりも気に入らなかった。

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