第2話

「ロボコンに出たいんだったら、入る高校間違えてるって、教えてやれよ」


俺がそう言ったら、山崎は笑った。


「ま、お前ならそう言うよな」


「お前だって、谷先輩から声かけられた時、やる気ないって言ってただろ」


バカらしい。


当たり前の話しだ。


あの内容の難しさが分からないことの方が、出場うんぬんの前に、致命的だ。


俺はため息をついて、窓の外を見る。


鹿島たちは、4月に発表されたばかりの今年のルールブックを広げて、なんだかんだと無駄なアイデアを出しているようだった。


「てゆーか、まだ正式に入部が認められたわけじゃないのに、なに盛り上がってんだろうな」


「え? あいつら全員、入るんじゃないの?」


「仮入部期間は正式な部員じゃないだろ。改めてちゃんと入部届け書かないと」


「あぁ、まぁな」


山崎は頭をぼりぼりと掻く。


俺は当然に当たり前のことを言っている。


それまでにニューロボコンへの参加とか、バカみたいな夢を諦めてくれないかな。


じゃないと、あんなのが全部入部してきて、熱く語りだしたりしたら、うっとうしくて仕方がない。


「ま、仮入部の間に、色々考えたらいいよ。うちが出せる部費なんて限られてるし、つーかほとんど予算ないし。俺、ああいう熱血系は苦手なんだよね、分かるだろ?」


俺がそう言ったのに、山崎はヘンな顔で笑った。


コイツなら、俺の気持ちを分かると思ったのに。


山崎はすぐに賛同もしてくれず、うつむいたままだった。


理科室のドアがガラリと開く。


「うわ、どんな奇跡が起きてるわけ?」


入ってきたのは、奥川だった。


「どうしたの? こんなに人口密度が高いのって、初めてじゃない?」


奥川の言葉に、侵入者たちは笑った。


「はいコレ、年間活動報告書。取りに来てないの、あんたんとこだけだよ」


奥川はなんだかんだと文句をいいながらも、結局は俺たちが困らないように、ちゃんとしてくれる。


「あぁ、ゴメンゴメン悪かった」


へへっと笑って誤魔化したら、彼女は呆れたように息を吐く。


「もう2年生になって、正式な部長になってるんだから、そろそろそういう手は通用しないからね」


「はいはい、すみませんでした」


彼女の黒く短い髪の先が、わずかに頬にかかっている。


彼女はゆっくりと振り返って、鹿島と目を合わせた。


「キミは新一年生? ここに入部するの?」


「はい。そうです」


部長の俺が許可したわけでもないのに、もう勝手に入ったつもりになっている。


まぁ、入部希望者を拒否することは出来ないから、もし入部してきたとしたら、自分から出て行ってもらうしか、ないわけだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る