第3章 第1話
授業が終わり、適当にクラスの友達としゃべって、ある程度の時間を潰しておいてから、俺はさらに残りの暇を潰すために、廊下を歩いた。
3階にある理科室、その窓からながめる景色が、何よりも好きだった。
そこで飽きるまで街を見下ろしてから、家に帰る。
その静かで穏やかな時間が、俺のその日の嫌なもの全て浄化してくれるような気がした。
いつもならシンとして冷たい廊下の奥に、今日は灯りがついている。
外から中をのぞくと、背の高い鹿島の横顔が一番に見えた。
俺は勢いよくドアを開ける。
「なんだ、お前ら!」
鹿島の周りには、真新しい制服を着た、数人の生徒が群れていた。
「クラスの友達と、一緒に見学にきました」
その後ろから、ひょっこりと山崎が顔を出す。
「よっ、遅かったな」
クラスの友達って、まだ学校が始まって一ヶ月も経たないのに、どうしてそんな人間を『友達』って呼べるんだ。
その感覚が俺には分からない。
鹿島は山崎に、何かの機械部品の説明をしている。
俺はそれを横目に見ながら、実験台の上に鞄を置いた。
山崎は笑っている。
鹿島がうれしそうに赤らめた頬で「はい!」と返事をすると、この二人の周囲に生け垣を作っている新入生どもも笑った。
俺はオンラインゲームのログをチェックしたいのに、唯一の癒やしであるその黒いボディーのパソコンは、強靱な人垣要塞の中心にあった。
簡単には近寄れない。
山崎がようやくそこから抜けだしてきて、窓の外を眺めていた俺の隣に立った。
「鹿島な、あいつ、今年から始まる、ニューロボコンの高校生の部に出るつもりなんだってよ!」
「はぁ? バカじゃねぇの」
高専だけに出場が限られていた有名なロボット競技の、一般校を対象にした大会が、今年試験的に開催されるという話しは聞いていた。
去年の部長だった谷さんが、そのチラシを持ってきた。
「あんなハイレベルの難しい大会、だから高専に限ってたのに。何にも知らない普通科のお遊び部が参加したって、どうにかなるもんじゃないだろ」
谷さんの持ってきた募集要項を見た。
ルールブックの内容が難しすぎて、途中で読むのを諦めた。
何が一般校にも参加条件を解放だ、ハードルが高すぎて、全然解放なんかされてない。
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