第3話

「あぁ、どうぞどうぞ、見ていって下さい」


慌ててそう応えたものの、どこをどう見学させればいいんだ? 


ここにはお前に似合うようなものは、何一つないぞ。


ほのかに薬品の臭いが漂う部屋に、読者モデルのような清潔感漂う、正攻法のイケメン高校生が立っている。


お前が見に行くべき場所は、ここじゃないだろう。


身長180㎝は越えているであろう侵入者の彼は、ぐるりと辺りを見渡した。


「普通の理科室で、活動をされてるんですね」


「あぁ、まあ。そうですけど」


山崎が「新入生ですか?」と聞いたら、彼は「はい」と答えた。


俺は部長として、活動のアピールと案内をしなければならないところだが、しまった、そこまで考えてなかった。


「今日は新歓だから、いつもならもっと色々やってんだけどな」


「エロゲーとか、格闘ゲームな」


「なにせ部員の確保に苦労してるから、仲間がほしくって」


「オンラインで繋がるから必要ねーとか言ってただろ」


「この電子制御部の部長として、やれることはなんでもやっていくつもりなんだけどね」


「部長決めじゃんけんで負けて、ごねてたくせに」


俺は山崎を振り返った。


この男は、新入生を勧誘しなければならないという大事な時に、余計なコトばかり言って足を引っ張る。


何にも分かってない。


「じゃんけんで負けて、3回勝負から5回勝負にかえて、2回やっても負けて、泣く泣く部長になったくせに」


この場の空気をちゃんと読めよ! 


俺が言い返そうとした時、その1年の彼は、俺たちを仲裁するかのように割って入った。


「今は、部員はお二人だけなんですか?」


その大人びた風な対応に、ちょっとイラっとする。

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