奈良の大仏はでっかくていいんだ

第1話

　奈良の大仏は政権の支配を安定させるために作られたものである。

　奈良の大仏は戦火で焼けたものを後に再建したものである。

　奈良の大仏ははその造営に当たって多数の水銀中毒患者を出した。

　美的観点から見るならば奈良の大仏より優れた仏像は日本にいくらでもある。

　じゃあ一体奈良の大仏って何なんだ？

　実は僕は自分自身のことを禅の信者だと思っていた。それで上に書いたようなことを考えることこそが「仏に会ったら仏を殺せ」を実践することだと思っていた。ところが仏教について調べていくうちにどうやら華厳宗なるものを学ばないと仏教の本質は理解できないことに思い当たり最近華厳宗の解説書を読んでみた。そうしたら今までの自分の考えが全く違っていたことを思い知らされた。少なくとも今まで自分がやっていたのはその最初の一歩に過ぎなかった。昔の自分がいかに何も知らないくせに偉そうなことを言っていたのか。

　ところでその華厳宗の日本における総本山が奈良の東大寺であり、ご本尊が奈良の大仏こと毘盧遮那仏である。

　華厳宗について簡単に説明することはできない。それについては今の時代専門書もあるし、機会があればお坊さんの話を聞くこともできる。ぜひそういう機会を利用して華厳宗に触れてみてほしい。ただ最終的にはそれを受け入れるあなた自身の器にかかっている。その準備が整った時が悟りというのだろう。

　ただ一つ言えるのが教科書などにも載っている平安時代の天地垂迹説、仏教と民間信仰の神々との混交が華厳宗の立場に立てば当然の帰結であること。すべては毘盧遮那仏の顕現であって仏教が尊いと同時に全ての神々も尊いと言える。その全ての神々の中心にでんと座っているのが毘盧遮那仏ということになる。

　それなら奈良の大仏はでっかくていいんだ。他の仏像が美的により優れているとかは一切関係ない。奈良の大仏はとにかく奈良の大仏なんだ。

　実は僕は今まで神社などに一切敬意を払ってこなかった。その僕が神社や小さな祠の前を過ぎるとき軽く一礼するようになった。

　今日実はこの文章を書く前、最近世界で問題になっているコロナウィルスに関連して起こっている馬鹿げたことを思いっきり非難するつもりでいた。ところがその時家族から電話があって笑って冗談などを言っていた。そしたら直前までの胸につかえた何ものかがどこかへ行ってしまった。それでこの文章を書いている。これでよかったんだ。

　なんか最近いろんなことがありますけど皆さん頑張りましょう。