62 ひたすらに笑顔だけで伝える彼女

 ふとキッチンにやって来ると、遥花がフライパンを持っていた。


 ジュウウウゥ、と良い音が鳴っている。


「遥花、何を作っているの?」


 僕が歩み寄ると、彼女は振り向く。


 マスクはもう取っているが、まだ喉は本調子じゃない。


 だから、彼女は言葉で答えず、ニコっと笑う。


 フライパンを見ると、焼いているのはソーセージだった。


「美味しそうだね」


 こんがりと表面が焼けたそれを見て僕は言う。


 遥花もコクリと頷く。


 すると、何やらそのソーセージの袋を持って指差す。


「ん?」


 そこには『極太ソーセージ』とあった。


 極太……


「ぼ、僕のは、さすがにここまで大きくも太くもないよ?」


 そう言うと、遥花は首を横に振る。


 そして、何やら口パクで伝えようとする。


 えっと……


 ユキオモ、スゴク、オッキイヨ。


「遥花、君って子は……」


 半ば呆れる僕の前で、遥花は尚も楽しそうに笑いながら、極太のソーセージを焼いている。


 焼き上がると、それを皿に載せた。


 ケチャップとかマスタードは付ける?


 僕は気を利かせて冷蔵庫から取り出そうとするが、遥花は首を横に振った。


 ソノママ、タベタイノ。


 また口パクで言う。


「あ、そうなんだ」


 すると、遥花は僕の目の前で極太のソーセージを掴む。


 そして、その先っちょをかじった。


 パリッ、パリッ、と。


「そういえば、去年の花火の時も食べていたよね」


 僕が思い出して言うと、遥花はニコっと笑う。


 ソノトキノヨリモ、オッキイヨ。


「そ、そうなんだ」


 ユキオノモ、ソノトキヨリモ……


「こら、遥花」


 彼女は小さく舌を出す。


「ねえ、僕も一つもらっても良いかな?」


 遥花は頷く。


 すると、食べてたソーセージの端っこを僕に差し出す。


「へっ?」


 遥花はニッと笑う。


 付き合いの長い僕は、もう彼女の言わんとしていることが分かる。


「まあ、卵焼きよりは長持ちするよね」


 僕はまた呆れながらも、遥花の誘いに乗ってあげる。


 お互いに、端の方からパリパリ、とソーセージを食べて行く。


 確かに太くて、ちょっと食べるのが大変だけど……


 ちゅっ♡


 僕らは無事にゴールへとたどり着いた。


 遥花は嬉しそうに笑う。


 これで終わりかなと思ったけど、何と遥花はもう1本も同じように咥えて僕に差し向ける。


「もう、色々とお腹いっぱいなんだけど」


 僕が言うと、遥花は一度ソーセージを離して、ケチャップとマスタードを塗った。


 改めて咥え直して、ニコっと僕を誘う。


「……仕方ないなぁ」


 ケチャップ&マスタードによって味変をしたおかげか、何とか食べ切れたけど……


「口が汚れちゃったね」


 僕が言うと、遥花はそれでも嬉しそうに笑う。


「早くまた、遥花の声が聞きたいな」


「…………♡」


 遥花はぴとっと僕に抱きつく。


 僕はついその巨乳に触れてしまう。


 ピク、ピク、と遥花は震えた。


「んっ……」


「あ、ごめん。早く遥花の可愛い声を聞くためにも、我慢しないと」


 僕が言うと、遥花はニンマリと笑う。


 それから、僕の袖を引っ張って寝室に入ろうとした。


「いや、でもまだ昼間だし……」


 そう言いつつ、僕もすっかりムラムラしていたので。


 結局、エッチしちゃいました。







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