50 彼女の口に玉を突っ込むのは最低だろうか?

 ギシギシと軋む音が鳴っていた。


「あんっ、あっ……あんっ!」


「遥花、頑張って。あと少しだよ」


「うん、頑張る……幸雄のために……んああああぁん!」


「あと少し、あと少しだよ」


「はっ、んっ、あっ……ふあああああああああああぁん!」


 ピピピピピ!


 アラーム音が鳴ると、遥花はぐったりとした。


「ハァ、ハァ……疲れた」


「けど、何か面白そうだね。このトレーニング器具」


 僕はスポブラ姿の遥花が座っているその器具を見て言った。


 それは座って腹筋運動が出来るらしい。


 遥花が実践をしてくれた。


「通販で買ったの」


「通販って……何でそこまでして?」


「だって……お正月にいっぱい食べていっぱい寝たら太っちゃったんだも~ん!」


 遥花は軽く泣き喚く。


「だって、それは仕方ないよ。冬は寒いし多少肉を付けて、また春になったら落ちるように出来ているから」


「それでも嫌なの。幸雄のためにボンッ、キュッ、ボンでいたいの。ボンッ、ボンッ、ボンッは嫌なの~!」


「分かったから、落ち着いて」


 僕は遥花をなだめる。


「僕も何か出来ることがあったら手伝うから」


「じゃあ、エッチしよ♡ それが一番楽しくて効率的なダイエット方法だよ♡」


「それは最後ね。まずはちゃんと運動をしよう」


「はーい」


 遥花は小さく口の先を尖らせる。


「見て見て。これね、お腹だけじゃなくて脚もシェイプアップ出来るの」


 そう言って、遥花は器具をいじり、脚を置く部分が稼働するようにセットした。


「こうやって……んっ……あっ! ふっ……んああああああああぁん!」


「何でそんなにエッチな声が出るのかなぁ?」


「だって、幸雄に見られているから♡」


「じゃあ、僕は帰ろうかな」


「あ~ん、もうダーリンのバカぁ~!」


 遥花がむぎゅっと抱き付いて来る。


 もはや特注で特大のスポブラでさえぎちぎちの爆乳が押し付けられて、僕は軽くクラっとした。


「一番お肉があるのはここだよな」


「おっぱい? やっぱりおっぱいなの? 痩せた方が良い?」


「それは嫌だ!」


 つい声を張り上げて僕は赤面する。


 遥花がにぃ、と笑う。


「スケベ彼氏くん♡」


「うっ……は、恥ずかしい」


「ゆーきお。本当はもうエッチしたいんじゃないの?」


 遥花が尚もおっぱいを押し付けながら言う。


「は、遥花……」


 僕は発情する彼女を何とかなだめようとして、お腹の肉をぷにっと掴む。


「やんっ」


「あっ、確かにちょっとお肉が付いているかも……」


「むっ、バカ!」


 バイン!


 またおっぱいでビンタをされてしまう。


「えいっ、えいっ、えいっ!」


 バインっ、バインっ、バイン!


「うわっぷ……は、遥花やめて」


「あ、でもこれって結構良い運動になるかも。おっぱいが痩せちゃうかもだけど」


「それはダメだ!」


「うふふ♡ 大丈夫、むしろおっぱいの周りの筋肉が付いてまた大きくなりそう♡」


「それはそれで問題だな。あまり大きすぎると、豊胸疑惑とか出ちゃうかも」


「天然です♡」


「知っています」


「ちなみに、私のおっぱいがここまで成長したのは幸雄のせいです」


「まあ、否定はしないけど」


「だよね。いつも、あたしのおっぱいをいーっぱい揉んでるもんね♡」


「はい、すみません」


「謝らなくても良いよ♡」


「ねえ、遥花。トレーニングは?」


「あ、そうだった」


 遥花は思い出したようにまたトレーニング器具に座り直す。


「行くよ……んっ……あっ……やっ……ふあああああぁん!」


「ちょっとエッチな声がやかましいから、口を塞いでも良い?」


「え、キスで? やだもう、ダーリンってばドキドキしちゃう……むぐっ!?」


 遥花は目を丸くした。


「これで良しと」


 僕は丸めたタオルを遥花の口に入れていた。


「むぐぐぐぐ!?」


 玉状のそれを口にして、遥花は思うように声を出せない。


「ごめんね、遥花。僕にそんな趣味はこれっぽちも無いんだけど。君がエッチすぎるのがいけないんだよ? この前、とうとう山本さんも軽くキレたし」


「むぐぅ~……」


 遥花は軽くシュンとするが、すぐにまた気を取り直してトレーニングを再開する。


「むぐっ……んっ……ふっ……むぐぐぅ……」


 よし、遥花のエッチな声を封じたぞ。


 まあ、ぶっちゃけ悶える姿は相変わらずエロ過ぎるけど。


 僕はいつもよりも穏やかな気持ちで遥花を見守っていた。


「むぐっ……ふぐっ……」


「遥花、がんばって」


 僕が応援する間も、遥花はギシギシと音を鳴らす。


 すると、僕の方に目を向けた。


 涙目になっているのを見て、僕は少し心配になる。


「だ、大丈夫?」


 僕が言うと、遥花は小さく首を横に振る。


 苦しそうな遥花を見かねて、僕はタオルを取ってあげた。


「ぷはっ……ゲホ、ゲホ」


「ごめん、やり過ぎた」


 僕は遥花の背中を撫でながら言う。


「ううん、平気……ちょっと興奮したから♡」


「は、遥花……どう足掻いても、君はエッチな子なんだね」


「幸雄の彼女だから」


「複雑だなぁ」


「じゃあ、ラストスパートは思い切り声を出しても良い?」


「えっ」


 僕が止める前に……


「あっ、はっ、やんっ、うあっ、んぅ、あんっ、はんっ、くぅ……んああああああああああああああああああああああああああぁん!」


 結局、遥花はエッチな声を大きく響かせた。


 僕は軽く白く固まる。


「ハァ、ハァ……これがデトックスってやつかな……気持ち良い」


 遥花はトレーニング器具にもたれながら息を弾ませている。


 僕はその間、立ち上がって部屋を出た。


 隣の部屋のチャイムを鳴らす。


 数秒して、隣人が顔を覗かせた。


「ごめんなさい」


 僕は速攻で頭を下げた。


「まあまあ、落ち着きなさい」


 山本さんはもはや何か悟ったような優しい声で言う。


「おっぱいちゃんがドエロい子なのは私も知っているから」


「本当にすみません。何とか、静かにさせようとしたんですけど……ダメでした」


「うんうん。気にしないで。もはや、君らのエッチな声は私の生活におけるBGMだから」


 ポン、と僕の肩に手を置いて山本さんは言う。


「幸雄ぉ~、どうしたの~? あ、山本さん」


 遥花がスポブラ姿のままで外に出て来た。


「やあ、おっぱいちゃん」


「あの、やっぱり声聞こえちゃいました?」


「うん。けど、気にしないでって彼氏くんにも言ったから」


「ありがとうございます」


「そうだ、君たちにコレをあげよう」


 山本さんは一度部屋に引っ込むと、何やら箱を持って来た。


「え、コレは……」


「実はさ、彼氏と別れたんだ」


「「えっ」」


「だから、当面は使う予定が無いから。君たちにあげるよ」


「「や、山本さん……」」


 僕と遥花はじわりと目に涙が浮かぶ。


「ご、ごめんなさい! 山本さんの気も知らずに!」


「あたしがバカでした! ごめんなさい!」


「だから、気にしなくて良いよ。むしろ、おかげで潤っているから。またすぐに男を見つけるよ」


「「山本さあぁん!」」


 僕と遥花は思わずその胸に抱き付いた。


「よしよし、お姉さんに甘えると良い」


 山本さんは僕らの頭を撫でて言う。


「うえ~ん! どうしてあたしよりも胸が小さいのに、こんなに包容力があるの~?」


「黙れ、小娘。君に比べたらみんなおっぱい小さいわ。これでもDあるんだぞ」


「大丈夫です。山本さんの胸は素敵です」


「あら、ありがとう、彼氏くん♡」


「あー、幸雄が浮気してる!」


「ち、違うよ」


「あはは。じゃあ、今度3人でしてみる?」


「「えっ?」」


「いや、冗談だから。もし仮に3人ですることになっても、おっぱいちゃんは声がうるさいから嫌だもん」


「うわ~ん! おっぱいも声も大きくてごめんなさ~い!」


「いちいち自慢をするな」


 僕らは良き隣人に恵まれました。







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