47 結局はバカップル

 年の瀬、年末。


 僕はいつものように遥花の部屋で彼女と一緒に過ごしていた。


「幸雄、お料理できたかた運んで」


「分かった」


 僕は台所に向かう。


「うわぁ、どれも美味しそう」


「えへへ。愛するダーリンのために、気合を入れて作ったんだよ?」


 遥花は可愛い笑顔で言う。


「ありがとう、遥花」


 僕はその首筋にキスをした。


「あっ、やん……こら、幸雄」


「ごめん……料理もすごく美味しそうだけど……何より、遥花が美味しそうだから」


「もう、バカ……あん……ダメ……耳をかみかみするの……あん♡」


 台所で軽く遥花を昇らせてから、茶の間のテーブルにごちそうを並べる。


 テレビを付けているが、ほとんどBGMみたいなもの。


 僕らはお互いにずっと見つめ合っていた。


 大きなエビフライの両端をお互いに咥えて、ポッキーゲームの要領で食べる。


「んっ……んっ……むぐっ……はっ……」


 僕らは口の周りに衣を付けながらも、構うことなくキスをしていた。


 ほぼ全ての料理を、お互いに口で咥えて食べて、最後にはキスをする。


 だから、なかなか料理が減らない。


 そして、そんなおかしなキスだけに留まらず、こたつの下ではお互いに相手を攻めまくっている。


 脚から足の裏まで。


 たまに、際どい所に触るとするけど、遥花が堅いガードで防ぐ。


「それは後のお楽しみ」


「ごめん。でも、ちょっとくらいつまみしても良い?」


「じゃあ、ちょっとだけよ?」


 お食事中に行儀が悪いけど。


 後に控えた大いなる本番のために、僕らは軽く数時間をかけてお互いに前準備をしていた。


 やがて、年越しの時間も近くなる頃。


 僕と遥花はお互いに裸の状態で、布団の上で重なっていた。


「んっ、ちゅっ……あっ……」


 僕は遥花の豊かな胸に触れながら、優しくキスをしていた。


 そして、最後は……


「行くよ、遥花?」


「うん、来て……幸雄」


 笑顔で優しく僕を迎えてくれる彼女が、どこまでも愛おしかった。




      ◇




 遠くで、除夜の鐘の音が聞えて来る。


「……年が明けたね」


「……うん。あけましておめでとう、遥花」


「……おめでとう、幸雄」


 僕らは笑顔で言い合い、またキスをする。


 ちゅっ、ちゅっ、と音を鳴らして。


「……えへへ♡ そういえば、ちょっと気になっていたんだけど」


「何かな?」


「今さらだけど、幸雄はお家にいなくても良いの? 年越しだし。それに、クリスマスの時も普通にお泊りしていたし」


「ああ、僕の家は割と放任主義だから。それに、父さんも母さんも遥花のことを気に入っているから。何が何でも手放すなって」


「そうなんだ……じゃあ、いつでも幸雄のお嫁さんになれるね♡」


「僕のお嫁さんになってくれるの?」


「当たり前だよ。あたしはもう、幸雄以外の男の人なんて考えられないもん」


「僕もだよ、遥花」


「幸雄……んっ」


 何度目か分からないキスをした。


「ぷはっ……幸雄とのキスに溺れたい」


「もう溺れているでしょ?」


「何よ、ナルシスト」


「傷付くな」


「うそ、カッコイイ♡」


「遥花は世界で一番かわいいよ」


「やん、もう♡ 愛するダーリンに言われたら嬉し過ぎて胸が成長しちゃう♡」


「もう成長は止めるんじゃなかったの?」


「だって、自然と大きくなっちゃうんだもん」


「どこまでも罪なおっぱいなんだ、君は」


「嫌い?」


「好きだよ」


「あたしのおっぱいが?」


「遥花のぜんぶが」


「えへへ♡」


 ふと、遥花が窓の方を見た。


「あ、雪だ」


「え、本当に?」


 僕らは布団から出て窓際に立つ。


「うわぁ、本当だ。きれいだなぁ」


「うん。新年に初雪だなんて……ロマンチック」


 僕と遥花は見つめ合い、またキスをした。


 すると、


「おーい、そこのバカップル」


 聞き覚えのある声がして振り向く。


 アパートの前にニット帽をかぶった山本さんがいた。


「あ、どうも」


「どうもじゃないよ。君たち、そんな所で裸でキスをしていたら、風邪を引くよ?」


 普通なら、こんな姿を見られたら恥ずかしくて堪らずに部屋に引っ込むだろう。


 けれども、僕と遥花はそのまま、またキスをした。


「おいおい、何をしているんだ、君たちは。リア充なのか? 殺されたいのか?」


「良いじゃないですか。山本さんだってモテるし、ずっと彼氏が途切れないでしょ?


 遥花が言う。


「まあね~……って、それとこれとは話が別だよ、おっぱいちゃん」


「良いんです。私はもう、幸雄とのラブラブっぷりを誰にも隠したりしないので」


「は、遥花……」


 遥花はむぎゅっと僕に胸を押し付けながら、またキスをして来た。


「……アホらし。ちょっと牛丼でも食べに行こうっと」


「あれ、彼氏と一緒じゃないんですか?」


「さっきまでシコタマしていたから。お姉さんはもう疲れちゃったよ」


「うふふ、歳ですね」


「ぶっ殺すぞ、小娘」


 山本さんが笑顔で怒りマークを浮かべていた。


 一方、遥花はどこまでも楽しそうに、僕に抱き付いていた。


「今年もよろしくね、ダーリン♡」


「うん、こちらこそ」







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