42 冬の始まりは……いきなり決戦!?
まだ序盤だけど、いよいよ冬を迎える。
「う~、寒い。畳の部屋は夏は良いけど、冬は辛いな」
遥花が言う。
前に胸にたくさん脂肪が詰まっているから平気と言ったけど。
むしろ、脂肪がたくさんあると冷えやすい。
夏の時に遥花と裸で抱き締め合った時も、おっぱいの部分が特に冷たくて気持ち良かったし。
「ごめんね、幸雄。暖房の温度上げても良い?」
「うん。僕は少し脱げば平気だから」
そう言って、僕は上着を脱ぐ。
すると、遥花がまじまじと見つめて来た。
「どうしたの?」
「あっ、ううん……幸雄って細マッチョだなって。その腕の筋がたまらないの」
「ああ、コレか」
「おまけに頭も良いし……ヤバイ、興奮して来た」
「落ち着いて遥花さん」
「けど、あたしだって結構トレーニング頑張っているんだよ? ほら、割と引き締まっているでしょ?」
遥花は大胆に服をめくって見せる。
「うん、良い具合に腹筋にラインが入っているね」
「でしょ~?……って、寒っ」
遥花はさっと隠す。
「まあ、でも。男女だとどうしても女性の方が筋肉は劣るから。鍛えても、なかなか冬の冷え性は改善しないかもね」
「そうだね。もっと、食事を見直して、適度な運動をしないと」
「遥花は偉いなぁ」
「えへへ♡」
遥花はニコニコしながら、僕にくっついて来た。
「ねえ、もっと体を温める方法があると思わない?」
「えっと……何かな?」
「うふふ、分かっているくせに」
遥花は僕の腕を胸でむぎゅっと挟む。
「つーかまえた♡」
「こら、遥花」
僕は軽く彼女のおでこを叩く。
「あいた。ふぇ~ん、幸雄のケチ」
「いや、だって。この前、とうとう寛容だった山本さんに注意されたんだよ? 遥花も自重してくれよ。ご近所さんに迷惑をかけたくないだろ?」
「ごめんなさい……」
遥花はシュンと俯く。
「……じゃあ、決めた」
「え、何を?」
「あたし、今日はもう喋らない」
「いや、そこまでしなくても……」
僕が制止する間もなく、遥花はタオルを結んで口を覆った。
さらに、その上からマスクをする。
軽くふごふご言うけど、声は響かない。
「まあ、遥花がそうしたいなら構わないけど……」
僕が言うと、遥花はまた笑顔でくっついて来る。
その大きな胸で僕の顔をパフパフし始めた。
「こら、遥花やめてよ」
「……♡」
むしろ、会話が出来ないのを良いことに遥花は遠慮なしにパフパフをして来る。
僕は少し怒って、また例のごとくおっぱいをビンタした。
しかし、今は冬で厚着のため、Tシャツの時ほどダメージを与えられなかった。
遥花はむふふ、と勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
それから調子に乗ってさらに僕におっぱい攻撃を仕掛けて来る。
今度はお返しと言わんばかりに、おっぱいで僕の顔をビンタし始めた。
「ぷはっ、ぷはっ……ちょっ、痛くないけど……ぷはっ」
な、何だこの痛いと気持ち良いが入り混じったような感覚は……
戸惑う僕に対して、遥花は尚もおっぱいビンタを続ける。
今度は横だけじゃなく、縦の動きも加えてきた。
僕の頭が遥花のおっぱいにベシベシと叩かれる。
「こら、遥花!」
僕はまた怒り、今度は拳を繰り出す。
「……っ!」
しかし、遥花のおっぱいに防がれてしまった。
ボヨヨ~ン!とすごい弾力だ。
クソ、このおっぱい攻撃とおっぱい防御が無敵すぎる。
遥花はまた勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
「そうか、分かったよ……」
僕はこの特大のおっぱいに対して、無闇に攻撃しても仕方がないと悟った。
だから、ある一点を目がけて意識を集中させる。
「そこだ!」
そして、人差し指を思い切り突き出す。
指先にコリッと確かな手ごたえを感じた。
「…………ッ!?」
それまで余裕だった遥花の表情が揺らぐ。
悶えながら床に倒れてピクピクしていた。
「あ、ごめん。遥花、大丈夫?」
すると、遥花は肩で息をしながら口の拘束を外す。
それから、僕を睨んだ。
元々ヤンキーと勘違いされて恐れられるくらいだから、遥花の凄みを利かせた顔は正直ちょっと怖かった。
「ご、ごめん、遥花……」
僕の言葉を遮るように、遥花がキスをして来た。
「……んッ……ぷはっ」
それから、遥花は無言のまま僕のベルトを外す。
「ちょっ、遥花ストップ!」
「ダメ、もう待てない。幸雄とエッチする」
遥花の目は軽く血走っていた。
「わ、分かったから、落ち着いて。エッチしても良いけど、ちゃんと声を押さえて……」
「大丈夫、今日はあたしじゃなくて幸雄に声を出させるから♡」
「へっ?」
それからのことは、あまり詳細を語りたくない。
ただ、僕は今日、少しだけ男としての尊厳を失ってしまった。
「や、やめてくれえええええええええええぇ!」
「えいえいっ! あたしを苛めた罰だ~!」
◇
隣からまた賑やかな声が聞こえて来た。
「……よし。録音して本人たちに聞かせて羞恥心を味わわせてあげよう」
ズズ、とお茶をすすりながら山本美香はそう決めた。
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