39 結局は暴れるおっぱい

 沖縄。


 そこは何より美しい海が魅力的だ。


 エメラルドに輝くその全体が広大な宝石のようだ。


 それを前にして、僕たち高校生は当然ながらテンションが爆上がりする……


 はずだったんだけど、男子たちは白い抜け殻のようになって呆然としていた。


「う、嘘だろ……」


「それを生きがいにして、今日まで生きて来たのに……」


「何でだよ、ちくしょう……」


 白い廃人となった彼らは呟く。


 そして、同時に息を吸った。


「「「――橘さんの爆乳水着が見たい人生だったあああああああああああああぁ!」」」


 美しい沖縄の海と空を大いに汚すであろう下世話な叫び声だった。


「男子、うっさい!」


「死ね、ボケカス共!」


「遥花ちゃん、キレて良いよ!」


 女子たちがアホ男子どもに目を尖らせながら口々に言う。


「あはは、あたしは平気だよ」


 遥花は苦笑して言う。


 ちなみに、今の遥花はTシャツにデニムの短パン姿だ。


 この前、僕にも色々と水着を披露してくれたことからも、遥花自身も可愛い水着を着て沖縄の海を泳ぐことを大いに楽しみにしていた。


 けれども、そんな遥花に先生たちが言ったのだ。


『すまない、橘。修学旅行で水着姿を披露しないでくれ』


 遥花の日本人離れしたスーパーボディかつ爆乳悩殺エピソードは先生の間でも知れ渡っている。


 もし、遥花がまたセクシーな水着姿を披露したら、沖縄のきれいなビーチが血染めになってしまうだろうと。


 そもそも、体育の授業の時も、スク水でも破壊力が凄すぎるから、遥花だけ個別に授業をするかという案が出ていたほどらしい。


 まさか、僕の彼女のおっぱいがそこまで警戒されていたなんて……


「「「ううううううぅ……」」」


 それにしても、男子たちはいつまでもメソメソ泣いている。


 女子たちが心底鬱ウザそうにしている。


「ねえ、幸雄」


 遥花は僕に目を向け、それから少し可哀想な目で男子たちに目を向けた。


「良いよ、遥花に任せる」


「ありがと」


 遥花はニコっと笑い、まるで敗北した甲子園球児のように沖縄の砂を集める男子たちに歩み寄った。


「ねえ、君たち」


「「「えっ?」」」


 彼らが顔を上げた時、前かがみになった遥花がチラッとTシャツの胸元を下げた。


「これで我慢して?」


 遥花はほんの少しだけ谷間を見せた程度なのだけど……


「「「ブハッ!?」」」


 その愛らしさも相まって、それまで白んでいた男子たちが一気に赤らみ盛大に鼻血を噴射した。


 そして、彼らは実に幸せそうな顔でピクピクとしていた。


 遥花は僕の方を向いて軽くブイサインをする。


 僕は苦笑した。


「遥花ちゃん、アホ男子の処理は私たちがやっておくから、彼氏とデートして来なよ」


「え、そんな……」


「もう、照れちゃって~。おっぱい揉むぞ~?」


「きゃッ! んッ、あぁん!」


「「「ゴハァ!?」」」


 男子たちは残りわずかな血も搾り取られて完全にノックアウトされた。


 遥花、我が彼女ながら、何て罪なエロボディ。


「幸雄ぉ、みんな大丈夫かなぁ?」


「たぶん大丈夫だと思うよ」


 けど、先生の判断は正しかったな。


 胸チラでこのザマなら、遥花のダイナマイトバディな水着姿を見たら、恐らくその身が一瞬にして砕け散るほどの衝撃を受けていただろう。


 事実、彼氏である僕でさえ鼻血ブーだったのだから。


「じゃあ、ちょっと散歩でもしようか?」


「うん」


 遥花はぎゅっと僕の腕に抱き付く。


「……ゆ、幸雄ぉ~」


 すると、背後から掠れた声がする。


「何だ、秀彦。生きていたのか?」


「お、お前ら……これから、二人きりでエッチなことをするのか?」


「うん、そうだよ♡」


「遥花さん! そんなのお前には関係ないだろ?」


「後で詳細をよろしく……ガクリ」


 そして、秀彦は死んだ。


 ていうか、絶対に教えてやらないし。


「行こう、遥花」


「うん♡」




      ◇




 ようやく、二人きりで静かなビーチを堪能できていた。


「遥花、やっぱり残念?」


「え、何が?」


「ほら、せっかく気合を入れて水着を選んだのに」


「ああ……確かに、ちょっと残念だけど。こうして、大好きな幸雄と一緒に居られるだけで幸せよ?」


「そ、そうか」


 僕は照れつつも、一つ言っておきたいことがあった。


「ねえ、遥花」


「なに、幸雄?」


「最近の、君のあざとさについてちょっと言いたいんだけど」


「あざとさ?」


「ほら、色仕掛けでバイトのお給料を弾んでもらったり、大家さんに修繕費をまけてもらったりとか……」


「やっぱり、ダメかな?」


「ダメって言うか……あまり、自分を安売りしないで欲しいかな。その内、勘違いした男が君に嫌らしいことをするかもしれないし」


「心配してくれているの?」


「当たり前だよ。遥花はとても魅力的な女の子なんだから」


 僕が少し照れながら言うと、遥花はニヤリと笑う。


「幸雄ってば、可愛い~♡」


「こ、こら、僕は真剣なんだよ?」


「分かっているよ。だから、あたしも真剣に答えるね」


 そう言って、遥花はなぜかTシャツを脱ぐ。


 反動でダプン!と大きく胸が揺れた。


「ちょっ、遥花……ん?」


 その大きな胸が纏っていたのはブラジャーではなく……


「……それって、水着?」


「うん♡」


 更にデニムの短パンも脱ぐと、完全にビキニ姿となった。


「えへへ。やっぱり、幸雄と水着同士で沖縄の海を満喫したかったから」



「遥花、君って子は……」


「怒っちゃう?」


 遥花は両手を後ろで組んで上目遣いに見つめて言う。


「いや……やっぱり、どこまでも魅力的だなって」


「ありがと♡」


 ちゅっ♡と遥花は僕にキスをした。


「じゃあ、他の男子には絶対に触れさせないあたしのおっぱい、幸雄にだけたーくさんあげるね?」


 そう言って、遥花は僕を抱き寄せる。


 ふいのことに反応が遅れ、僕はそのまま大いなるおっぱいクッションに顔をうずめた。


「い、息が苦しい!」


 僕は必死にタップするが、つい遥花の胸を叩いてしまう。


「あんあん!」


 遥花が声を上げた。


「ご、ごめん」


「もう、幸雄ってば~。大きな声が出ちゃうと、みんなにバレちゃうでしょ?」


「ごめん……って、元はと言えばみんな遥花のせいだよ?」


「バレた?」


 遥花はちろりと舌を出す。


 沖縄の太陽に照らされる彼女はいつもよりも輝いて見えた。


「よーし、海に入る前に準備運動だ」


 遥花はその場でジャンプをする。


「見て見て、幸雄ぉ! こんなに揺れてるよ~?」


「遥花、あまり激しくし過ぎると水着が壊れそうだよ!?」


 遥花の爆乳が暴れまくっている。


「大丈夫だよ。幸雄は心配性だなぁ……」


 ブチッ!


 嫌な音がした直後。


 ハラリ、と水着が落ちる。


 そして、遥花の生のおっぱいが露わになった。


 その白い上半身がまた輝かしい太陽に照らされて美しいことで……


 いやいや、そうじゃなくて!


「いやん、幸雄のえっちぃ♡」


「君がね? 君がだよ?」


「ねえ、おっぱい吸う?」


 遥花は両手で胸を持ち上げて言う。


「吸いません」


「もう、何で謝るの?」


「ちょっと殴っても良い?」


「おっぱいを?」


 もう、僕の彼女は色々と手が付けられないと思った。







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