38 遥花の水着ショー

 休日。


 僕は遥花に呼ばれて彼女のアパートにやって来た。


「いらっしゃい、幸雄♡」


 遥花は満面の笑みで迎えてくれる。


「やあ、遥花。今日はどうしたの?」


「えへへ、どうしても幸雄に見て欲しい物があるんだ」


 中に入ると、遥花はウキウキした様子で言う。


「ほら今度、修学旅行があるでしょ?」


「ああ、そうだね」


「行先はどーこだ?」


「沖縄だね」


「沖縄と言えば?」


「海」


「海と言えば?」


「水着」


「そう、水着♡」


 遥花はニコリと笑う。


「今日は幸雄に新しい水着を見てもらいたくて」


「あれ、夏に買ったビキニがあるでしょ?」


「もう~、幸雄ってば。女の子は色々な自分を彼氏に見てもらいたいの♡」


「そ、そっか。けど、修学旅行だと周りの他のみんなもいるから、遥花のエッチな水着姿が見られちゃうね」


「心配?」


「まあ、ちょっとだけ」


 僕が苦笑しながら言うと、遥花はちゅっとして来た。


「じゃあ今日は、大好きな幸雄のためだけに、あたしの新作水着ショーをお披露目しちゃうよ?」


「お、お願いします」


「じゃあ、お着替えしまーす♡」


 遥花は例のごとく脱衣所に入った。


 僕は待つ間、とてもソワソワしてしまう。


「じゃあ、行くよ?」


 扉越しに遥花の声がした。


「ど、どうぞ」


 僕はドキドキしながら言う。


 ガララ、と扉が開いた。


「ジャーン!」


 まずはシンプルな青いビキニだった。


 分かり切っていることだけど……


「おっぱい、すご……」


「もう、胸ばかりじゃなく、他の所も見て?」


 とか言いつつ、思い切り谷間を寄せながら僕にアピールするのはやめていただきたい。


「幸雄くん、感想は?」


「あ、うん。爽やかで、沖縄の海と空に合うと思う」


「嬉しい♡」


 遥花はきゃぴっと喜ぶ。


「じゃあ、次の水着に行くね」


「え、一着じゃないの?」


「うん♡」


 遥花は笑顔で頷きつつ、また脱衣所に入った。


「幸雄、行くよ?」


「う、うん」


 また扉が開く。


「……ゴハッ!?」


 直後、僕は軽く吐血しそうになった。


 遥花が新たに纏った水着は、布面積が先ほどよりもぐっと小さい。


 だから、豊満すぎる遥花の爆乳が今にもこぼれる寸前だ。


 大事な局所だけを隠すのに精いっぱいで、ヒマラヤ級のその山脈はドーンとそびえ立っていた。


「は、遥花さん……それはいわゆる……」


「エロビキニ♡」


「カハッ……き、君は彼氏を殺す気か?」


「え~? だって、今まであたしのおっぱいは何でも見て来たでしょ? お布団の上で♡」


「そ、そうだけど……水着だとまた別の破壊力が……」


 遥花の彼氏で普段から彼女に対する免疫を養っている僕でさえこのザマなのだから。


 他の男子なら間違いなく即死だ。


「は、遥花さん……お願いだから、そのビキニは修学旅行で着ないで」


「そう? 幸雄ってば、そんなにあたしを独占したいのね♡」


 瀕死寸前の僕をよそに、遥花は赤らめた頬に両手を置いて嬉しそうだ。


「じゃあ、次の水着ね♡」


「というか、よくそんなに水着を買うお金があったね」


「この前、また喫茶店のお手伝いをして、最後マスターに『今日もありがとうございました♡』って谷間を見せたらお給料が3倍になったの♡」


「き、君ってやつは……」


「大丈夫よ、幸雄。ちょっとしか見せていないから♡」


「そ、そう言う問題じゃ……」


「さてと、お着替えお着替え♡」


 遥花はまた脱衣所に入る。


 次の水着次第では、僕のライフゲージがゼロになるかもしれない。


 そして、扉が開く。


 その布面積が先ほどよりも広いことを確認して、僕は軽くホッとした。


 色合いも紺色で落ち着いた感じがするし。


「ん? でも、ちょっと普通の水着と違うような……」


「そう、この水着のポイントは下乳よ♡」


「し、下乳……?」


 改めて見ると、確かに胸を覆う部分が半分くらいしか無かった。


 ズボンで言うなら半ズボンみたいな。違うかもしれないけど。


 と、とにかく……


「……ガハッ!」


 未知の衝撃を受けて僕はまた吐血した。


「は、遥花、ごめん……畳なのに汚して……」


「大丈夫。今度、大家さんに頼んで代えてもらうから」


「た、高いんじゃないの? 僕も出すよ」


「安心して。大家さんにも谷間を見せればイチコロよ♡」


「は、遥花さん……僕が知らない所でそんなイケナイ子になっていたなんて……」


「心配しないで。エロ漫画みたいなNTR展開はないから。万が一そうなりそうだったら……あたしの拳が炸裂するわよ?」


 遥花は軽く構えを取って言う。


 そうだ、遥花は日本かぶれのお父さんから空手を習っていたんだっけ。


「と、とにかく、あまり谷間の安売りをしないでね」


「分かったよ、ダーリン♡」


 本当に分かっているのかなぁ?


「じゃあ、最後の水着に行っても良い?」


「あ、うん」


「じゃあ、待っていて♡」


 遥花は笑顔で脱衣所に入る。


 よ、良かった。


 かろうじて、ライフゲージは保っている。


 ただ、油断は出来ないけど。


 最後はどんな水着だろうか……まさか、ヒモみたいなやつでほぼ全裸じゃん!みたいなことにならないだろうな?


 あー、エッチすぎる彼女も困りものだ。


 そして、運命の扉が開く。


「お待たせ♡」


 その時、僕はコオオオオオオオォ、と掠れるように息を吸いあげた。


 遥花が身に纏っていたのは普通の水着じゃなかった。


 それは布ではなく天然の産物。


 貝殻の水着だった。


 何か昔のエッチなグラビアアイドルがこれを着ている写真を、どこぞの街のメシ屋で見かけたような気がする。


 ただ、そのグラドルよりも、遥花の方がはるかにエロかった。


「は、遥花……」


 僕は小刻みに震えて言う。


「なに、幸雄?」


 遥花は笑顔で小首を傾げる。


「フ、フローリングの部屋に引っ越そう……」


 ブシャアアアアアアアァ!と。


 まるで噴水のように僕は鼻血を噴き出して倒れた。


「きゃああああああああああぁ! 幸雄ぉ!」


 血の池に沈む僕の下に遥花が慌てて駆け寄って来た。


「ダーリン、しっかりして! 二人で修学旅行でもイチャイチャしたいんだから! クラスメイトとか先生の目を盗んでたくさんエッチしたいんだからぁ!」


 遥花は泣きながら叫ぶ。


「わ、分かったから……水着は普通のやつでお願いします」


「うん、分かった」


 遥花は軽くべそをかいて言う。


 その時、ぽろっと貝殻が取れた。


 既に何度も見ている遥花のおっぱいだけど。


 水着がポロリとかいう男の夢のようなシチュによって。


 僕はとうとう死んだ。


 チーン。


「幸雄おおおおおおおおおおおおおおおおぉ!」


 遥花はひたすらにおっぱいで僕を呼び覚まそうとするけど。


 激しく逆効果だと理解して欲しかった。







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