35 純粋に楽しみたい
「わぁ、きれい」
辺り一帯は美しい紅葉に包まれている。
僕と遥花は少し遠出をしていた。
原風景が残るそのスポットは僕ら以外にも多くの人達が訪れている。
けれども、決して騒がしい印象を受けない。
とても心が安らぐ。
「うーん、空気が美味しい」
遥花はグッと背伸びをする。
大きな胸が強調された。
と、いかん、いかん。
今日は心を穏やかにして過ごすと決めたのだから。
エッチなことばかりではなく、純粋に遥花と過ごすひと時を楽しみたいんだ。
スン、と僕は久しぶりに賢者モードになる。
「幸雄、行こ?」
「うん」
僕らは緩やかな山道を登って行く。
お互いにリュックを担いで息を弾ませて。
疲れるけど、それが心地良い。
きっと、後で食べる遥花の手作り弁当が格別な味になることだろう。
「幸雄、見て。滝よ」
「本当だ。近くに行けるみたいだよ」
「じゃあ、行こう」
遥花はルンルンとした足取りで向かう。
「このひしゃくで滝の水をすくって飲めるみたいだよ」
「じゃあ、あたし飲む」
遥花はニコニコしながらひしゃくを手に取った。
「気を付けてね」
「大丈夫だって」
遥花は笑顔のまま言って、ひしゃくを滝に差し込む。
その時、入れる角度がまずかったせいか、遥花がひしゃくを引き出す際に思い切り水が跳ねた。
「きゃっ!」
バシャッと派手に遥花を濡らす。
「だ、大丈夫!?」
「うん、平気。少し濡れちゃっただけだよ」
遥花は苦笑して言う。
良かった。これがもし夏で薄着なら、遥花の胸が透けて見えていたことだろう。
けれども、今は秋でそれなりに厚着だから、遥花の胸は守られていた。
「幸雄、何かちょっと残念そうな顔をしていない?」
「えっ?」
「もしかして、あたしのおっぱいが見たかった?」
「いやいや、そんなことは無いよ」
「あっ」
「どうしたの?」
「ブラに水が染みて……ちょっと気持ち悪いから、脱いでも良いかな?」
「えっ?」
遥花は僕の返事を待たない内に服の中でゴソゴソして、ブラジャーを引き出した。
「はい、どうぞ♡」
遥花は笑顔で僕にブラジャーを渡す。
それはとてもホカホカしていて、遥花の胸の感触がまだ残っているようで……
「は、遥花さん」
「なに、ダーリン?」
「きょ、今日はエロは無しで、穏やかな気持ちで紅葉を楽しみたいんだ」
「けど、あたしのブラジャーを掴んで離さないじゃない」
「ハッ……いや、これは……ていうか、こんなサイズが存在するの?」
「えへへ。店員さんにも『天然でこんなサイズ初めて見た~!』って言われたよ」
「そろそろ爆発しそうで怖いな」
「幸雄の性欲が?」
「いやいや、君の胸がだよ」
「う~ん……じゃあ、幸雄に吸ってもらおうかな」
「何でそうなるの?」
「少しは小さくなるかなって」
「だって、別にその中身は……アレ、まさかそんなことないよね……ちゃんと着けているし……」
「幸雄、一人で何をブツブツ言っているの?」
遥花がニヤリと笑って言う。
「もしかして、あたしがデキちゃったと思っているの?」
「そ、そんなことはないよね?」
「うふふ、実は黙っていたけど……」
ゴクリ、と息を呑む。
「おととい、ちゃんと来たよ」
僕は深くため息を漏らす。
「よ、良かった」
「何よ、幸雄。あたしとの子供が欲しくないの?」
「いや、だって僕らはまだ高校生だし」
「あたしはいつだって、準備オーケーなのに」
「僕は全然オーケーじゃないです」
「幸雄ってば……あ、そうか」
「え、何?」
「赤ちゃんにあたしのおっぱいを奪われるのが嫌なんでしょ?」
「いやいや、そんなことは無いから」
「もう、仕方ないな。じゃあ、あっちの陰でこっそりあげるから」
「遥花さん、純粋に楽しもう! エロは無しで!」
僕は思い切り叫ぶ。
「幸雄」
遥花は言う。
「あたしのブラジャーを握り締めたまま言っても、説得力がないよ?」
「あっ……」
僕は口をあんぐりと開ける。
「もう、幸雄ってば可愛いんだから♡」
どこまでも僕をからかう遥花に対して軽く苛立ちつつ。
僕はとても大きいブラジャーを痛めないように絞って綺麗にたたんでリュックにしまった。
もちろん、後でちゃんと遥花に返します。
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