33 あなただけのメイドです♡

 学園生活において体育祭と並ぶビッグイベント、文化祭の時期が迫って来た。


「うわぁ~、これ可愛い~」


 僕らのクラスは喫茶店をやることになった。


 定番のお店だ。


 そして、女子は可愛らしいメイド服を着ることになったのだ。


「萌え萌えきゅ~ん♡」


「やだ、ちょっと古くない?」


「萌え萌え~♡」


 メイド姿できゃっきゃとする女子たちを見て男子たちは、


「「「て、天国や~……」」」


 と、ひたすらに鼻の下を伸ばしていた。


「ただ、一つだけ不満がある。それは……」


 秀彦がカッと目を見開く。


「何で橘さんはメイド服を着ないんだあああああああああああああああぁ!」


 その声に遥花がビクっとした。


「藤堂うっさい!」


「しょうがないでしょ、遥花ちゃんはサイズが無かったんだから」


「そうだよ。Jカップ甘く見んな!」


「あ、あの……」


 遥花がそろっと手を上げる。


「もう、Jカップじゃないんだけど……」


「「「はっ!?」」」


 男女ともに驚愕した。


 そして、男子の目が俺に向けられて、


「「「幸雄もげろ」」」


 僕は苦笑する他ない。


「もう、男子うっさいから」


「そうよ~。それに、遥花ちゃんは料理が得意だから、調理を担当してもらうの」


「ていうか、このサンドイッチうまっ!」


「そ、そうかな?」


 遥花は照れる。


「可愛くて、性格も良くて、おまけにおっぱい超デカいとか、遥花ちゃんマジ最強」


「てか、ミスコン出れば? 余裕で優勝っしょ」


「い、良いよ、そんなの……」


「まあ、そうだよね~。ミスコンに出て優勝したら、アホな男子どもが今以上に興奮して群がって来るだろうし」


「愛しい彼氏さんだけの物でいたいんだよね~?」


「う、うん……」


「やだもう、遥花ちゃん可愛い~!」


 女子たちが抱き付くフリをしていつの間にかJカップを超えてK点さえ超えそうな遥花のおっぱいに触りまくっていた。


 その光景を見て、男子たちが溢れんばかりの涙を流したのは言うまでもない。


「ゆ、幸雄、助けて~!」


 遥花がヘルプを求めるけど、僕は微笑ましいのでしばし見守っていた。




      ◇




 遥花が喫茶店で出すメニューをもう少し改良したいと言うので、放課後にまた遥花のアパートに来て僕が試食係をしていた。


「サンドイッチに赤唐辛子を少し入れてみたんだけど、どうかな?」


「うん、面白いね。最近の女子は辛い物が好きだから、受けが良いかもしれないね」


「良かったぁ」


 遥花はホッとしたように微笑む。


「当日は、僕も調理を手伝うから」


「ありがと♡」


 遥花は微笑み、


「ねぇ、幸雄」


「ん?」


「幸雄はその……あたしのメイド姿を見たい?」


「え? そりゃ、まあ、ちょっとは見たいかなって思うけど……」


 僕が照れながら言うと、遥花はすくっと立ち上がる。


「ちょっと待っていて」


 そして、脱衣所に向かう。


 扉の向こうで何やらガサゴソと音が聞えた。


 サンドイッチを食べながら待っていると、ガラガラと扉が開く。


「お待たせ」


 その姿に僕は目を丸くした。


「えっ……メイド服?」


 清楚な黒いブラウスの上にふりふりのエプロン。


 頭にもふりふりのカチューシャ。


 正にメイドさんがそこにいた。


「ど、どうしたの、それ……?」


「あのね、サイズが無くて諦めたんだけど、あたしもやっぱりメイドさんになりたかったから……幸雄だけの」


 そう言って、遥花は楚々とした足取りで僕のそばに正座をした。


「コホン……ご主人様、いかがでしょうか?」


「えっ?」


 メイド姿の遥花を間近にして、僕はドギマギしてしまう。


 と言うか、やっぱり胸の辺りの破壊力が凄まじい。


 これは絶対に特注だし、高いだろうな……


「は、遥花。あまり前かがみにならない方が良いよ?」


「どうしてですか?」


「いや、その……お、おっぱいがこぼれそうなんで」


「こぼれたら、お仕置きをして下さい」


「ぶはっ!」


 僕は思わず噴き出す。


 我が彼女ながら、何てエロいんだ。


 何度も味わっているくせに。


 今回はメイド服+爆乳という新たなコンボで耐性が付いていない所を一気に攻められたものだから。


 クラクラしてしまう。


「ご主人様、デザートはいかがですか?」


「へっ?」


 いつもの流れだと、『デザートはあたしです♡』とか言いそうだけど……ゴクリ。


「じゃ、じゃあ、せっかくだから……」


「かしこまりました♡」


 遥花は立ち上がると冷蔵庫に向かう。


 あ、普通にデザートがあるんだ。


 僕は少しだけガッカリする自分が恥ずかしかった。


「お待たせしました♡」


 遥花はお皿に盛ったプリンを出してくれる。


「ではここに、生クリームを盛っちゃいます♡」


 遥花はホイップ式のそれをニュルニュルと出して可愛く美味しそうにデコレーションしてくれる。


「どうぞ、召し上がれ♡」


「あれ、スプーンは?」


「こちらにございますよ?」


 ふと見ると、遥花の胸の谷間にスプーンが挟まっていた。


 僕はあんぐりと口を開く。


「冷たいスプーンを持ちやすいように温めておきました♡」


「あ、ありがとう」


 僕は半ば呆然としながら、そのスプーンを引き抜こうとする。


「んっ」


「わっ、ごめん」


「大丈夫です。思い切り引っ張って下さい……」


「いや、ゆっくりするから」


「やっぱり、ご主人様は優しいですね♡」


 遥花は微笑む。


「じゃ、じゃあ、抜くよ?」


「はい」


 僕はゆっくりとスプーンを持ち上げる。


「あっ……はっ……んっ」


 し、しまった。


 遥花を傷付けないようにと気遣ってのゆっくりだったけど。


 むしろ、その方が何か嫌らしい感じになってしまった。


 けど、ここで一気に引き抜いたら、遥花のきれいなおっぱいを傷付けてしまうかもしれない。


 ていうか、このおっぱいがぎゅっと挟んでいるからスッと抜けないんですけど!?


「はんっ、あっ!」


「も、もう少しだから」


「ご、ご主人様。焦らず、ゆっくりとお願いします……」


 遥花が軽く目を潤ませて言う。


「わ、分かったよ」


 遥花の肉厚たっぷりな胸に挟まれたスプーンが徐々に徐々に引き抜かれて行く。


「んっ! あと少し……ですね」


「うん。行くよ、遥花?」


「はい、最後は思い切りして下さい……」


「けど、それだと遥花のおっぱいが……」


「大丈夫だから、もっと強く……」


 瞳を潤ませて言う遥花に言われて僕は、


「分かったよ……ふん!」


 最後は一気にスプーンを引き抜いた。


「んあああああああああああああああぁん!」


 そして、遥花の叫び声が響き渡った。


 叫んだ彼女は、直後にクタッとなる。


「ハァ、ハァ……」


「だ、大丈夫、遥花?」


「……やっぱり、ご主人様はとてもエッチですね♡」


「君にだけは言われたくないよ」


 文化祭で遥花がメイドをやらないのは正解だった。







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