23 ドキドキな運動しちゃう?
ポタポタ、と汗が垂れ落ちている。
「ハァ、ハァ……」
遥花は僕の目の前で激しく息を弾ませていた。
「幸雄……あたしもうダメ……限界」
「頑張って、遥花。もう少しだから」
「でも……んぁ! ハァ、ハァ……」
「んっ、そろそろだ……あと少しの辛抱だよ」
「本当に? あと少しなの?」
「ああ、だから頑張って。ラストスパートだよ」
「ハァ、ハァ……」
遥花は歯を食いしばって最後の時を耐えている。
「カウントダウン行くよ? 5、4、3、2、1……ゼロ!」
僕は力強く声を出す。
そして、遥花は天を仰ぐ。
「――んあああああああああああああああぁん!」
青空の下、地面に倒れた。
「……ハァ、ハァ」
遥花はなわとびを握り締めながら荒く吐息を漏らしている。
僕はスマホのタイマーボタンを押して止めた。
「すごいね、遥花。よく頑張ったよ」
「えへへ……これで少しは痩せたかな?」
遥花は地べたに寝ころんだままピースサインをする。
「うん、そうだね」
事の発端は数日前。
「いやああああああああああああぁ!」
遥花の家に遊びに来ていた僕は、彼女がシャワーを浴びている間にご飯を作っていた。
「ど、どうしたの遥花!?」
僕は何事かと思い慌てて脱衣所に飛び込む。
そこには濡れそぼった髪のまま、裸で佇む遥花がいた。
わぉ、相変わらずのダイナマイトボディ……じゃなくて。
「遥花、虫でも出たの?」
今は夏だし、そんなことだろうと思った。
「ち、違うの……」
遥花は少しだけ涙ぐむ。
僕はしどろもどろになってしまう。
「あのね……体重が増えちゃったの」
「……え?」
良く見ると、遥花は体重計に乗っていた。
「何だ、そんなことか」
「何だとは何よ。女の子にとっては死活問題なんだぞ?」
「けど多分、遥花の体重が増えたのは……」
僕は遥花の爆発しそうなおっぱいに目を向けた。
すると、遥花はさっと隠す。
「幸雄のエッチ♡」
それから、遥花のダイエットが始まった。
現在、僕らは近所の公園で汗を流している。
今はお盆だ。世間一般の人たちは色々と忙しいけど。
僕らは特にそういった行事に参加することもないので、今この公園には僕らだけだった。
おかげで、遥花のエッチな姿と声を誰にも聞かられずに済んだ。
「ねえ、遥花。何度も言っているけど、そんなに太っていないし。むしろ、ちょっと肉があるくらいの方が男は好きなんだよ?」
「それは分かっているけど……痩せたいんだもん」
ようやく起き上がった遥花は口の先を尖らせる。
ちなみに、今の遥花はTシャツにトレーニングパンツを穿いている。
そして、スポブラを付けていた。
本来であれば、そのスポブラによって胸がぴっちりと固定されるはずなんだけど。
先ほどのなわとびの最中、遥花のおっぱいはひたすらに暴れてこぼれそうになっていた。
さすがはJカップ。と言うか、もはやそれよりも大きくなっている気が……測定不能というやつか。
「幸雄、またあたしのおっぱいばかり見てる」
「いや、本当に悩ましいおっぱいだなって」
「そうね。いっそのこと、小さくしちゃおうかしら」
「え……」
僕が少し戸惑うと、遥花はくすりと笑う。
「冗談よ。もう、幸雄は本当におっぱい星人なんだから」
「あはは……」
けど、それは仕方ない。
僕に限らず、遥花のおっぱいの前では誰しもが『おっぱい星人』と化してしまうだろう。
「安心して。ちゃんとおっぱいを維持したまま、体重を落とすから」
「あまり無理をしちゃダメだよ? 遥花は今のままでも十分すぎるくらいに魅力的なんだから」
「ありがと、幸雄♡」
ちゅっ、とほっぺにキスをされる。
「よし、僕も一緒にトレーニングをするよ」
「本当に? ありがとう、ダーリン♡」
「あ、でもなわとびが一つしかないね」
「じゃあ、こうしましょ」
遥花は僕と向かい合うように立った。
「えっ?」
「二人で息を合わせて飛ぼう?」
「あ、うん」
こ、これは、もしや……
「は、遥花、やっぱりちょっと待って……」
「じゃあ、スタート♪」
僕の制止は間に合わず遥花はなわとびを回す。
「1、2、3、4♪」
序盤、遥花は軽快にリズムを刻む。
「5、6、7,8♪ ほら、幸雄も声を出して」
「あ、うん……」
頷いた時、遥花の胸元に目が行く。
久々のTシャツ。
そして、スポブラという鎧を纏いながらも、激しく踊り狂うおっぱいがいた。
『あぁ~ん、幸雄に揉んで欲しいの~♡』
おっぱいからそんな幻聴さえ聞こえて来る。
ダメだ、遥花は真面目にダイエットに取り組んでいるんだ。
消え去れ、僕の煩悩。
久しぶりに賢者モードに入ろうとするが……
「んあっ!」
遥花の嫌らしい声が僕の賢者モード導入を邪魔する。
「ハァ、ハァ……幸雄、苦しいよ……やっぱり、おっぱいが重いせいかな?」
「ど、どうだろうね?」
「すごい、幸雄はまだまだ余裕だ……思えば、エッチの時もそうだよね?」
「いや、ハハ……」
「決めた、これはダイエットも兼ねた体力トレーニングだ。ここで鍛えれば、もっともっと、幸雄とたくさんエッチが出来る……ああぁん!」
間近で響く遥花の嬌声が僕の脳内を激しく揺さぶる。
「あんあんあぁん! 幸雄……幸雄おおぉ!」
「遥花さん!? いくら周りに人がいないからって遠慮なしに声を出し過ぎだよ!?」
「だ、だって……こうして幸雄と向かい合って、ダイエット中なのにエッチな声を出しちゃって……」
次第に顔がとろけて来た遥花を見ていられず、僕はジャンプしながら背中を向けた。
「あん、やだ! 幸雄の顔が見たいのぉ……」
「ご、ごめん、遥花。もう辛抱たまらないから、これで勘弁して……」
「んぁ! ダ、ダメ……最後は幸雄の顔を見ながらが良いのぉ!」
「だああああああああああぁ! だから、何でなわとびをしているだけなのにそんなエッチなこと言うんだよおおおおおおおおおおぉ!」
僕も堪らずに絶叫してしまう。
「あっ、もうダメエエエエエエエエエエエェ!」
遥花もまた絶叫した。
急に縄を回す手が弱まったせいでリズムが狂い、僕は引っかかってしまう。
勢い余ってそのまま前のめりに倒れた。
とっさに受け身を取ったので、顔面を打ち付けないで済む。
「ハァ、ハァ……ちょっと、幸雄。そこはあたしの方に倒れる所でしょ? ラブコメ主人公失格ね……」
倒れた遥花が息を切らせながら言う。
「ご、ごめん」
「もうダメ、歩けない……だっこして」
「えっと……じゃあ、おんぶするよ」
「お姫様だっこが良いのに……良いよ、おんぶで」
遥花は少しふてくされたように言う。
「その代わり、いっぱいおっぱい押し付けてやるんだから」
「えっと……僕らは何をしていたんだっけ?」
当初の目的を見失っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます