22 たまにはクラスメイト達と

 今日もまた、遥花と街を歩いていた。


「遥花、その服暑くない? 大丈夫?」


「うん、ちょっと暑いけど。幸雄が可愛いって言ってくれるから、我慢する」


 今日は花柄のワンピースに身を包んだ遥花が言う。


 前の白いワンピースも良かったけど、これもまた良い。


 何より、今回のは腰を締めるタイプなので、遥花の大きな胸がより一層目立つ。


 実際、周りの男たちは皆、遥花の胸に視線が釘付けだった。


 どちらにせよ、遥花はエッチな子だ。


「あれ、幸雄?」


 聞き覚えのある声がして振り向く。


「秀彦? それに皆まで」


 秀彦はクラスの男女数人と一緒にいた。


「あれ、橘さんもいるじゃん! ていうか、私服かわよ!」


「え、マジで!?」


「うおおおおおおぉ! やっぱり、おっぱいすげ~!」


 興奮する男子たちの頭に女子たちが軽くチョップを落とす。


「橘さん久しぶり~。服メチャ可愛いね~」


「あ、ありがとう」


「ていうか、やっぱりおっぱいスゴいね~。夏休みに彼氏さんにいっぱい揉まれた?」


「ちょっ、あん!」


「おい、女子ども! ズルいぞ!」


 男子たちが騒ぐ。


「秀彦、みんなでどうしたんだ?」


「おお、そうだ。俺たちこれからカラオケに行くんだけど、幸雄たちもどうだ?」


「お~、良いねぇ! 橘さんとカラオケ行きて~!」


「ちょっと、男子ぃ? どうせ、橘さんのおっぱいが目当てでしょ?」


「そんなことないよ。橘さんは顔も可愛いから」


「黒田くん、怒って良いよ?」


「いや、ハハ」


 僕は苦笑する。


「どうする、遥花?」


「うん、せっかくだし、みんなと行こうかな」


「イエ~イ! じゃあ、早速行こうぜぇ!」


「男子うっさい! じゃあ橘さん、行こ?」


 遥花は女子たちに手を引っ張られて戸惑いつつも、口元で微笑んでいた。




      ◇




 カラオケに来たのは久しぶりだったけど、中々に楽しい。


「ねえねえ、遥花ちゃん。夏休みはずっと黒田くんと一緒にいたの?」


「え? あ、うん、まあ……」


 遥花は照れながらジュースを飲む。


「「「可愛いぃ~!」」」


 女子たちが悶える。


 そんな彼女たちを僕が微笑ましく見ていると、


「なあなあ、幸雄。橘さんとはエッチしまくりなのか?」


 秀彦が耳打ちをして来た。


「何でお前に教えなくちゃいけないんだよ?」


「良いじゃんか。女日照りの俺らに潤いをくれよ~!」


「だって、今日はクラスの女子とデートじゃないのか?」


「そういうノリじゃないって。普通に遊んでいるだけだし」


「ちょっと、男子ぃ? 何をコソコソ話しているの?」


「いや、この夏休みに幸雄はどうせ橘さんとヤリまくりなんだろうなって話だよ」


「おい、秀彦」


「藤堂、あんた最低よ」


「そうよ、そうよ」


 女子たちは非難をするが、


「で、遥花ちゃん。実際の所はどうなの?」


「へっ? えっと……」


 遥花は少し困った様にチラと僕に目を向ける。


 そんな彼女を見て僕は、


「しているよ。だって、僕らはカップルだから」


 堂々と言い放つ。


 すると、秀彦を初めみんなは目を丸くして、


「「「羨ましぃ~!」」」


 声を揃えて叫んだ。


 遥花は顔をボンッ、と赤らめている。


「きゃ~、きゃ~! で、遥花ちゃんは感じてるのぉ?」


「ちょっと、あんた卑猥よ~!」


「こっそり、あたしだけに教えて!」


 それからは、カラオケよりも恋愛トークに夢中だった。




      ◇




「あ~あ、これから幸雄は橘さんとヤリまくりか~」


 夕暮れ時。


 カラオケ店を出た時に秀彦が言った。


「秀彦、うるさいぞ」


「だってさ、橘さんはアパートで一人暮らしをしていて、いつもそこでヤリまくりなんだろ?」


「まあ……でも、壁が薄いから、そんなに思い切りは出来ないけど……」


「この色ボケ野郎が!」


 秀彦に思い切り背中を叩かれる。


「お前には言われたくないよ」


「よーし、決めた! まだお前を帰さないぞ~! これからファミレスに付き合え!」


「別に良いけど」


「藤堂、無駄よ。どうせ夜になったら二人はしちゃうんだから」


「ぐおおおおおおおおおおおぉ! ふしだらなカップルめ!」


「だから、お前が言うな! 鬱陶しいな!」


 そんな風に秀彦と言い合う僕を見て、遥花はくすくすと笑っている。


「いつも幸雄と二人きりでいるのは幸せだけど、たまにはこうしてみんなと過ごすのも楽しいね」


 遥花が屈託のない笑顔で言うと、男女ともにキュンとした顔になる。


「もう、遥花ちゃんマジで良い子過ぎ」


「何でこんな良い子がヤンキーとか言われていたの?」


「遥花ちゃん、後でまたおっぱい揉ませてね?」


「あんっ! ちょっと、もう揉んでいるじゃない」


「あら、ごめんなさい♡」


 遥花を中心に女子たちがキャッキャとしているのを見て、男子たちはだらしなく鼻の下を伸ばす。


「なあなあ、幸雄。いくら払ったら、橘さんのおっぱいを揉ませてくれる?」


「いくら払ってもお断りだよ」


「じゃあせめて、指先でちょんとだけ。なあ、お前らもしたいだろ?」


「ああ、俺の全財産をはたいても良い」


「いくらあるんだよ?」


「2万5千円」


「2億払っても無理だから」


「おい、サラリーマンの生涯年収だぞ!」


 僕を中心に男子たちは汗が混じった涙を流す。


 華やかな女子たちの戯れとは大違いだ。


「うわ、男子キモ~」


「もうこの後は男女で別行動しよう~」


「ごめんね、黒田くん。遥花ちゃんはあたしらがもらっちゃうよ~」


「へっ? ゆ、幸雄ぉ~」


 笑顔の女子に連行されかける遥花は戸惑いながら僕を呼んで手を伸ばす。


 正直、そんな遥花がちょっと可愛いと思ったから、僕はしばらく放って見つめていた。


「……今晩は盛り上がりそうだな」


「「「幸雄もげろ」」」


 男子はやはりクソだった。







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