16 やることをちゃんと済ませてから……思い切りしようね?

 あっと言う間に夏休みが来た。


 普通なら、終業式の午後からウキウキで遊びに繰り出すだろう。


 カップルなら、とにかく一緒に居てイチャイチャしまくるだろう。


 けれども、僕と遥花はそうしなかった。


 決してケンカをしている訳ではない。


 夏休み前にお互いに話し合って決めていた。


 宿題は7月中に終わらせて、8月はずっと一緒に居る。


 そして、好きなだけする、と。


 僕は以前の聖人、あるいは賢者モードの経験があるので、その任務を割と淡々とこなせた。


 遥花の方は心配だったが、今回は不思議と余計な性欲に邪魔されず、宿題に没頭出来たようだ。


 そんな頑張りのおかげか、8月になる前に僕らの宿題は終わった。


 そして、午前中から遥花のアパートで二人きりだ。


「んっ……」


 初手からお互いに激しく相手を求め合った。


 お互いに舌先で相手のそれを絡めようとするから、逆に空回ってしまって。


「遥花、僕に任せて」


「うん……」


 健気な彼女は素直に頷いてくれて、今度は優しく甘いキスになる。


 肉感溢れる体に対して、遥花の唇は薄らとピンク色で、どこか儚い。


 彼女の内面の繊細さを表しているようだ。


 僕はその唇を軽く吸って離す。


「あっ……すごい、上手……」


 吐息を交じらせて言う彼女の言葉が嬉しくて、僕は首筋にキスをしながら胸を揉む。


「幸雄……」


 そうやって、気持ちは焦りつつも、お互いに自分をコントロールする術を身に着けたおかげか、着実に相手の体の準備を整えて行く。


「じゃあ、行くよ」


「うん、来て」


 



      ◇




 昼下がりのアパートの部屋は、むわっとした空気が漂っていた。


 エアコンもつけずにしたせいか、遥花は汗だくだった。


「はぁ、はぁ……」


 うつ伏せになったまま喘いでいる彼女に、僕は水を注いだコップを差し出す。


「遥花、大丈夫?」


「……うん、平気。幸雄はすごいね、これだけしたのに、汗もかいてないし……あたしも体を鍛えようかな。そうしたら、もっと幸雄とたくさん出来るし」


「いや、もう十分だから」


「ねぇ。もし、何にも阻まれないで、幸雄のが全部注がれていたら……あたし、きっと妊娠しちゃうね」


「そ、そうだね。けどまあ、そんなことはしないけど」


「まだ高校生だから?」


「うん」


「あのね、実はお父さんとお母さんに幸雄のことを話したの」


「えっ?」


「それでね、そんなに良い男なら、既成事実を作ってでも確保しなさいって……」


 僕は開いた口が塞がらない。


「……迷惑だった?」


「いや……意外な反応だから。可愛い娘に手を出しまくって、むしろ怒られるかと」


「お父さんもお母さんもオープンな人達だから。人見知りなあたしと違って」


「そっか」


 遥花はうつ伏せのまま手を伸ばし、きゅっと僕の手を握って来た。


「この夏休みは、幸雄としたいことがたくさんあるの。海に行ったり、プールに行ったり、花火を見たり……やりたいことはテンコ盛りだよ。あたしのおっぱいみたいに♡」


「そ、そうだね」


「コラ、そこはツッコミなさい」


 遥花はぷくっとを頬を膨らませる。


「ご、ごめん。本当のことだなって思って」


「全く、おっぱい星人なんだから」


「その言葉は傷付くな」


「じゃあ、かっこよく……おっぱい男爵とか?」


「何て不名誉な称号なんだ」


「あたしのおっぱい好きな幸雄くん♡」


 遥花が握っていた僕の手を自分のおっぱいに当てて遊び始めた。


「これが良いのか? これが気持ち良いのか? うりうり~、たぷたぷだぞ~?」


 無邪気に笑う彼女をひたすら微笑ましく見つめる。


 楽しい夏休みは始まったばかりだ。







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