10 アイスを舐めて……

 GWの間、僕はずっと遥花と会っていた。


 そして、いつも彼女のアパートの部屋に来ていた。


 遥花は今日もそのダイナマイトなボディを惜しげもなく披露して、僕を幸せな気持ちにしてくれる。


「えへへ、幸雄の腹筋が割れているね♡」


「そうかな?」


「指でなぞっても良い?」


「うん、良いけど……」


 遥花が笑顔で指先を動かすと、僕は軽くゾクリとした。


「ふふ、幸雄ってば可愛い♡」


「よし、そんなこと言うならお返しだ」


「えっ、いやだ、ちょっと……やん!」




      ◇




 一緒にシャワーを浴びて、さっぱりした状態でアイスを食べていた。


 二人で壁を背もたれにして寄り添いながら、棒タイプのそれをペロペロ舐めている。


 ちなみに、遥花はキャミソール姿だ。


 巨乳とキャミソールの組み合わせは地上最強と言っても過言ではない。


「ふふ、また幸雄があたしのおっぱい見ている」


「しょ、しょうがないだろ。遥花がそんな大きいモノを隠さないのがいけないんだ」


「あー、そんなこと言っちゃうんだ……きゃっ」


 溶けたアイスが垂れて遥花の胸の谷間にこぼれた。


「大丈夫か? ティッシュをやるから」


 俺はすぐにそれを取って渡そうとするが、


「待って、幸雄」


「え?」


「……幸雄が舐めて取って」


「……はい?」


 僕は冗談かと思って目を丸くするが、遥花は期待に満ちた眼差しを僕に向けて来る。


「遥花は本当にエッチな子だな」


「幸雄こそ、変態くんだよ」


「お互い様だね……」


 僕はそう言いつつ、観念して遥花の深い谷間を覗き込む。


 白くて張りのある胸の上部から、谷間に目がけてアイスの液体がこぼれている。


「ほら、早く舐めて」


 僕は少し躊躇しつつも、男としての欲望に後押しをされて、遥花の胸に舌を這わせようとしたけど……


 そばにあったティッシュを手に取る。


「んっ……」


 そのティッシュで拭いてあげた。


「幸雄……」


「これで勘弁して」


「もう、照れ屋さんなんだから……」


 僕と遥花は唇を寄せ合う。


 その時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴ってドキリとした。


 遥花は慌てて服を着直し、


「は、はーい!」


 玄関先に出て行く。


 僕はドキドキする心臓を落ち着けようと軽く深呼吸をした。


「あ、どうも~。お隣の山本でーす」


「あ、どうも」


 どうやら、お隣さんが尋ねて来たようだ。


 明るい髪をショートヘアにしている美女だ。


「これ、友達と旅行して来たお土産なんだけど、良かったらおっぱいちゃんもどうぞ♡」


「あ、ありがとうございます。けど、おっぱいちゃんって言うのは……」


「だって、こんなに大きいんだも~ん。何カップあるの?」


「な、内緒です」


「ふ~ん? じゃあ、そこの彼氏くんに聞こうかな~?」


 玄関の扉に立つお隣のお姉さんと視線が合って、僕はドキリとした。


「あれ、結構イケメンじゃーん。今どきの優男って感じ♪」


「や、山本さん」


「ねえ、彼氏くん。ちょっとおいでよ」


 ちょいちょい、と手招きをされる。


 僕は戸惑いつつも、そちらに歩み寄った。


「君はおっぱいちゃんの彼氏だよね?」


「だから、あたしは遥花ですってば。橘遥花」


「分かってるって。で、君の名前は?」


「あ、僕は黒田幸雄って言います」


「ふ~ん、ユキオくんかぁ……可愛いね」


「えっ?」


「私は山本美香やまもとみかって言うんだ。よろしくね☆」


「はぁ、よろしくお願いします」


「おっぱいちゃんと同じ高校生だよね?」


「はい、そうですけど」


「お姉さん、大学生なんだけど。たまには、年上の女と火遊びしてみない?」


 ウィンクをしながら言われて、僕は顔がボッと熱くなるのを感じた。


「ちょ、ちょっと、山本さん!」


 遥花が慌てて口を挟もうとする。


「ちなみに君たちさ、この部屋でエッチしていたよね?」


 僕と遥花は同時にドキリとした。


「な、何でそんな……」


「だってこの前、声が聞こえたし」


 遥花は赤面して顔を俯けてしまう。


「ああ、気にしないで。私は男日照りだから、むしろ潤って助かっているの♡」


 山本さんは言うけど、どう見ても男日照りには見えない。


「じゃあ、今度から私もこの部屋に男を連れ込んだりしようかな~、なんて」


「そ、それは……」


 遥花は赤面したまま何も言い返せない。


「……冗談よ。君たちはまだ高校生だから、ラブホとか行けないもんね。お姉さんはちゃんと、ラブホに行って楽しむから♡」


「お、お気遣い、ありがとうございます」


 遥花がぺこりとするので、僕もそれに合わせた。


「じゃあ、私はこれから合コンだから。お土産のゼリー、二人で仲良く食べるんだよ? じゃあね!」


 山本さんは身を翻して軽やかにアパートの階段を下って行った。


「……何が男日照りよ」


「……だね」


 僕は苦笑しながら頷くが、遥花にじろりと睨まれる。


「ど、どうしたの?」


「幸雄、年上のお姉さんにタジタジにされていたね」


「そ、そんなことないよ」


「もしかして、年上が好きなの?」


「いや、そんなことは……」


「ふん、だ。山本さんの方が大人で魅力的な女性だもんね」


「だ、大丈夫だよ。おっぱいは遥花が圧勝だから」


「はぁ? おっぱいだけ?」


 遥花は片頬を膨らませて僕を睨んでいる。


「おっぱいだけじゃなくて、何もかも遥花の方が可愛いよ……少なくとも、僕にとっては」


「そ、そっか……」


 遥花は照れたように顔を俯け、それから僕と見つめ合う。


 お互いにそっと唇を寄せて、キスをした。


 ちゅっちゅと互いの気持ちを確かめ合うように。


「……浮気したら許さないから」


「……しないよ、絶対に」


 そう言い合って、僕らは笑い合う。


「おーい、君たち!」


 呼ばれてビクリとする。


 ギギギ、と僕らが顔を向けると、山本さんが道路の方でニコリとしていた。


「ちゃんと部屋の中に入ってからしなさい♡」


 僕は愕然とした。


「よ、余計なお世話です!」


 遥花はまた激しく赤面しながら叫んだ。


「いや~、青春ですなぁ。では、お姉さんは合コンに行って来るよ~ん♪」


 山本さんは今度こそ軽やかなステップを踏みながら去って行った。


「……面白い人だね」


「……まあ、悪い人じゃないんだけど、ちょっと疲れる」


「あはは」


 ゲンナリする遥花に同情するように、僕は苦笑した。







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