4 お家ですること

 朝のランニングなんて3日坊主で終わってしまうかもと危惧したけど。


 意外にも、僕の日課となって続けている。


 最近では、更に朝食前に筋トレもしていた。


 ご飯をモリモリ食べることで、自分の体が更に強くなって行くようだった。


「行って来まーす!」


 最近、自信がついたおかげが声も腹から出る様になっていた。


 そんな僕の変化に親も驚いていたりする。


「幸雄、お前なんか雰囲気変わったなぁ」


 親友の秀彦も言う。


「そうかな?」


 けれども、僕が一番見て欲しいのは……


「幸雄、何か最近たくましくなったね」


 いつものように屋上で2人きりでご飯を食べていた時。


 遥花が僕を見てそう言った。


「本当に?」


「うん。ちょっと触っても良い?」


 遥花は制服の上から僕の二の腕に触れる。


「わっ、すごい……男の子って、こんなに固いんだ」


 まじまじと腕を見つめられながら言われて、僕はドキドキしてしまう。


 ていうか、今僕の腕に当たっている遥花の感触こそ、すごく柔らかいんですけど。


「だいぶ、自信が付いたんじゃない?」


「いや、まだまだ。遥花の彼氏になるには遠いよ」


「もう、真面目なんだから。けど、そういう所が好き」


「遥花……」


 見つめ合っていると、自然と唇が引かれそうになってしまう。


 けれども、僕は寸での所で堪える。


「……やっぱり、まだダメ?」


「……うん、ごめん」


「良いよ。じゃあ、これだけ許して?」


 遥花は僕のほっぺにキスをした。


「好きよ、幸雄」


 頬を赤らめて言う遥花はとても可愛い。


「……ありがとう」


 僕もだよ、と言いたいけど。


 その言葉はまだグッと飲み込む。


 もう少し頑張れば、遥花を堂々と僕のモノだと宣言できる。


 その時は、ずっと頭の中で描いていたことを、彼女とするんだ。


 そんな想像をしたら、僕の方も顔が赤くなって来た。


 話題を変えるために、


「そういえば、遥花って一人暮らしなんだよね?」


「うん。安いアパートでね」


「お父さんとお母さんは心配してないの?」


「うん、結構放任主義だから」


「そっか。でも、良いね。一人暮らしだと自由だと」


「まあね。けどその分、自分でやらなくちゃいけないことも多いよ。料理とか洗濯とか……」


「遥花は良いお嫁さんになりそうだね」


 言った直後、僕はハッとして口を押える。


「いや、今言ったのは……」


 すると、遥花はにんまりと笑顔になって僕の腕に抱き付く。


 また、豊満な胸の感触を味わった。


「……何カップあるの?」


 僕はまたついうっかり余計なことを言って後悔する。


「彼女にしてくれたら、教えてあげる♡」


「ズルいなぁ~」


「それはこっちのセリフだよ」


 お互いに言い合って、笑い合った。




      ◇




 バタンと部屋のドアを閉じた。


 窓ガラスから夕日が差し込む部屋にバッグを置く。


 朝はまた遅刻しそうだったので、布団は敷きっぱなしだった。


 出かける時は嫌な気持ちだったけど、今は逆に良かったと思った。


 そこにバタっと倒れ込む。


「……はぁ、どうしよう」


 うつ伏せの状態でまくらに顔をうずめながら呟く。


「……まだ会ったばかりなのに、ドンドン幸雄のことが好きになって行くよ」


 そう呟きながら、横向きに寝がえりを打つ。


 寝ながらブラウスのボタンを外すと、はだけてブラジャーが現れる。


 お腹のラインを指先でつつ、と撫でる。


 ごく、と息を呑み、ブラジャーを外した。


 ここ最近、また成長して正直苦しかったから、開放感を覚える。


「また、近い内に買いに行かないと……」


 そう呟きつつ、指先で自分の胸に触れた。


「……あ」


 イケナイ、こんなことをしたら。


 彼に出会ってから、何だかおかしくなっていた。


 無性に、こんな欲求が湧いて来てしまう。


「……こんなエッチな子だと、幸雄に嫌われちゃうかな?」


 けど、自分がこんなエッチな子になったのは、彼のせいだ。


 彼と出会うまでは、ただ家事をこなして学校に通う、そんな生活だった。


 色も何も褪せていた世界に、彼が色を与えてくれた。


 幸い、この時間にお隣さんは居ない。


 このアパートは安くて壁が薄いから、居たらきっと声を聞かれてしまう。


「……じゃあ、幸雄とこの部屋でする時も、私がちゃんと声を抑えないとだな」


 また勝手に決まってもいない未来を想像して、気恥ずかしさやら何やらの感情で脳内がグチャグチャになった。


「……幸雄のバーカ。早く彼女にしろ」


 遥花は少し怒った顔でそう呟いた。







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