第24話天才高校生は謁見するようです
開かれた扉を通り抜け、俺は一歩一歩足を前に進める。目に映るのは一直線に伸びる朱色のカーペット。その終着点に鎮座するのがおそらく国王だろう。周りには誰も人がいなかった。もともといないのか、それともどこかに隠れているのか。
俺は国王と思われる男性の座る玉座の5メートルほど手前で止まり、ソフィアに言われた通りの動きをした。
「面をあげよ」
そう言われて俺は顔を上げた。
「お主がケンタだな?」
「はい、そうです」
俺は単純に答えを返した。
「我はニコラス・フォン・ローベルク。下からの報告でお主の魔力量が莫大な量だと聞いた。本当か?」
「本当です」
俺は嘘偽りなく答えた。
「鳳凰騎士団、騎士団長アリス・フォン・アルテミスから耳にしたがフェーレンの街のスタンピードを殲滅させたのは本当か?」
「本当です」
まるで尋問じゃないか。
「お主のその功績を称えて、王国最大の功績の象徴、鳳凰勲章を与える!」
な、なんだ? 急に尋問の時に見せていた険しい顔が晴れた。
それと同時に国王と俺しかいなかった部屋に1人現れた人物がいた。
アリスだった。両手でお盆のようなものを持ち俺のほうに歩いてくる。
「国はあなたの功績を称えているのです。冒険者ケンタ」
「は、はい。」
俺は気後れしてしまい変な声が出た。
白髪の人物は勲章と見られるバッチのようなものを俺の着ていた服の胸元につけた。
「これであなたは本当にヒーローになれましたね」
「その呼び名はあんまり好きじゃない」
「ふふっ、これからが大変ですね?」
「それはいったいどういうことだ?」
「平民が鳳凰勲章を得たのはこれが初めてのことですから」
「あまり勲章の凄さが分かっていないが、この功績に見合うような働きをしたいと思う」
そうやって話していると国王が笑いながら話しかけてきた。
「ははっ、宣言受け取ったぞ。冒険者ケンタ」
「ええ、半年間の間ですが精一杯頑張ります」
「半年? どういうことだ?」
それを聞いて俺は何気なく答えた。
「エアフルト侯爵様に頼まれて公爵令嬢のリディアさんの護衛のような形で王都の学園に入学するんです」
「ぐぬぬぬぬ、じゃ、ジャクソン!あいつ図りおったな!」
あれ?我はとか言ってたのにこの態度の変わりようはなんだ?見たことがあるような……。
そうして思考を巡らしているとある一人の人物にたどり着いた。
ジャクソン・フォン・エアフルト。リディアの父だ。
そしてジャクソンが言っていたことだが国王のニコラスとは従兄弟同士だという。性格は似ていてもなんらおかしくない。
「あいつに負けるわけにはいかないっ!どうすればあいつに勝てることが……」
そうして何か思いついたのか手を叩いて俺の方を向いて言った。
「そうだ。む、娘のティアも半年後王都の学園に入る予定だ。だからケンタ。お主はその護衛になってもらいたい!いや、なれ!これは王命だ!」
いやいやいや、従兄弟に負けたくないだけで王命を発動するとかどーなんだよ国王として。
さすがにそれはやりすぎだとアリスは思いニコラスに言った。
「あ、あの国王陛下、さすがにそれはやりすぎだと……」
「構わん。これは決定事項だ。頼んだぞケンタよ」
なんか勝手に俺は重役を押し付けられたみたいだ。まあ、別に学園に行って一緒にいればいいだけだし。
「分かりました」
「えっ?ケンタさん大丈夫なんですか?」
「大丈夫も何も王命だからな。従わないと俺の首が飛んでしまうかもしれない」
それはさすがに嫌だ。
「ま、まあそうですけど……。」
その声を遮るようにニコラスは高らかに宣言した。
「これにて謁見を終了とする。ケンタよ。我の執務室までついてこい!」
「は、はい。分かりました」
そうして俺はニコラスの後ろをついて行き執務室に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます