第5話:天才高校生はクエストに向かうようです
ケンタは冒険者ギルドを出た後、北に向かって歩を進めた。領主の館のそばを通り過ぎしばらくすると、北にある門が見えて、そのそばに兵士がいた。兵士と目が合い、距離を詰めた。
「そこの少年、冒険者か?」
「ああ、ちょっと採集クエストがあってな。町の外なんだよそれが。」
そう言いつつケンタは、ギルドカードを兵士に見せる。
「Gランク冒険者か、駆け出し冒険者は死亡率が高いから、採集クエストだからといって気を抜くなよ。それじゃあ、通ってよし!」
そう言われて、礼を返した後、門の外に出た。
門を抜けた先は、南の草原とはまた変わった草原だった。空気がじめっとしていて、すごい重たい。太陽が照っているのに、暖かいと感じない。だがそれもそうだろう。遠くに鬱蒼とした森が見える。ーーー魔の大森林だ。
(何かあったときのために、応用スキルは増やしておいたほうがいいかもな)
そう思い立ってステータスと呟くと目の前に画面が現れた。
名前 ケンタ・モリサキ
年齢 17
種族 人間族
LV MAX
職業 Gランク冒険者(創造神に愛されるもの)
称号 異世界転移者
筋力 MAX
魔力 MAX
知力 MAX
敏捷 MAX
運 MAX
基礎スキル 身体能力強化・極
火魔法・極
水魔法・極
土魔法・極
風魔法・極
光魔法・極
闇魔法・極
治癒魔法・極
応用スキル 魔法創造・極
鑑定・極
言語理解
創造神の加護・極
無詠唱
手加減
「やっぱ何回見ても不思議だよなー。創造神の加護があるからと言って、絶対怪我をしない保証はないし、防御系のスキルは欲しいよなー。」
そう言いつつケンタは魔法創造で、自分の周りにシールドを張るスキルをイメージすると『魔法障壁』を獲得した。
受付嬢から聞いたのだが、魔の大森林に近づけば近づくほど、リカバリー草の品質が上がるらしい。なんでも、魔の大森林から溢れ出てくる魔素の影響があるのだとか。
今はお金を稼がないといけないため、ちょっとでも質の良いリカバリー草を入手しなければならない。ということで危険ではあるが魔の大森林の手前の草原までいこうと考えているが、いかんせん今立っているケンタの位置から魔の大森林までは距離が遠い。
「森までは遠いし、今は昼下がり、ちょうどいい、『身体能力強化・極』を使うか。」
近くに誰もいないことを確認してから呟く。
『身体能力強化!』
すると体の中から力が溢れてきた。今なら何をしても、疲れないように感じる。そうして足を一歩踏み出した途端、景色が変わり、大森林が先ほどよりも近くになっていた。
「えっ、このスキルやばいぞ!?最強かよ!
…ん?待てよでも俺足一歩踏み出しただけなのにこんだけ移動できるってことは街中では使えないな。いやでも、グロリアが言うには、俺のスキルはLVMAXだから最大が無限であって、調整できるとかなんとか言ってたよな?オーバーキルは心配しなくて良いとか。なら最初に普通より少し楽に歩きたいと思えばいけるのか、試してみよう」
ケンタはそう言って考えると、次の一歩からは楽に走れた。
「やった、成功!おっ、もう魔の大森林の目の前だな。よしここらへんでリカバリー草を採集するか。」
そう言って探そうとするとあることに気づく。
「待てよ?リカバリー草って名前は知ってるけど、どんな草なのかわかんないじゃん!?」
そう言いつつもう一度思考を巡らす。
そうするとあることに気づいた。
「あ、鑑定使えば良いんだ。」
ケンタは、リカバリー草が欲しいと思うと鑑定スキルが発動した。
名前 リカバリー草×1000+
説明 草の汁を生成すると傷を癒す効果があ
るポーションになる。効果・小
仕入れ値 1株銅貨1枚
採集方法 根っこを残すと良い。
1000個以上この表示が出る。すぐさま草に傷をつけず、根っこを残すように採集していく。30株くらい集めたところで、どう持って帰るか考えていると、思い出した。
確か総司とゲームしてたとき、無限収納とか言って、そこから剣を出したりして戦ってたな。魔法創造でつくるかー。
そうしてスキル『無限収納』を獲得した。
獲得した後は楽だった。リカバリー草を採集して、収納魔法に入れる。しかも便利なことに、中に入っているリカバリー草の株数も確認できる。出すときは、これまたステータスボードのようなものが目の前に出てきて、タッチして株数を選択すると、目の届く範囲に出現させることができる。そうして魔の大森林近くのリカバリー草はほとんど根を残して無くなった。ケンタはふと思う。もっと良い草はないのだろうかと。ケンタはリカバリー草以外を鑑定すると違う草があった。
名前 完治草×143
説明 草の汁を生成すると傷を完治させる効果やどんな病気も治せるエリクサーになる。効果・大
仕入れ値 1株大金貨1枚
採集方法 根っこを残すと良い
名前 ポイズン草×53
説明 草の汁を生成しその汁を一滴だけでも
飲んでしまうと麻痺、意識障害、最悪
の場合死に至る。効果・大。貴族の暗
殺などに使用される
仕入れ値 一株大金貨1枚
採集方法 根っこを残すと良い
と出てきた。ケンタは決めた。
「全部、採集して収納しよう」
およそ30分後完治草とポイズン草は魔の大森林の前から姿を消した。
採集が終わって元来た道を帰っていく。流石に手ぶらは怪しまれるので何本か手に持っていた。門の前に着くと、門を出た時と同じ兵士がいた。
「おっ、少年!しっかりクエスト頑張ってるんだな。ギルドカードを見せてくれ。」
そう言われてケンタはギルドカードを取り出し兵士に見せる。
「これで良いか。リカバリー草は品質が命なんだ。通らせてもらって構わないか?」
「ああ、構わないぞ。急げ急げ!でも他の人に迷惑はかけるなよ!」
「わかった、忠告感謝する。」
そうして兵士と別れ、さっそく冒険者ギルドに向かった。
しばらく歩くと冒険者ギルドのエンブレムが見えた。さっそく扉を開けて、受付を見ると、ケンタの対応をした受付嬢がいた。誰も並んでいなかったのでケンタはさっそくくけつけの前へ行く。
「あっ、ケンタさん。早いお帰りですね。」
どうやらケンタにリカバリー草の形を教えなかったのは覚えていないようだ。いや知らない振りなのかもしれないが。
「ああ、採集クエストにあったリカバリー草を採集してきたんだが、何株でも売れるのか?」
「ええ、今回は特に在庫があまりありませんので、上限は設定しておりません。」
「とりあえず100株買取お願いできるか?」
「ひゃっ、100株!?ええいけますがそんなのどこにあるんですか?」
受付嬢は頭の上にはてなマークを浮かべながらこちらを見てくる。
ケンタは無限収納のパネルを操作して100株受付嬢の前に出現させた。
「な、な、なんですか!?これ!」
「見ての通りリカバリーそうだ。」
「いや、そうじゃなくって…まあ良いです。リカバリー草100株ですね。買取金額は金貨1枚でよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない。」
そう言いつつ、ケンタは思った。
この反応なら完治草やポイズン草は売らないほうがいいな。また今度にしよう。
「ギルドへの貢献でGランクからFランクを通り越してEランクとなりますがよろしいでしょうか?」
「売っただけでランクが上がるのか?」
「いえ、それもありますが、リカバリー草の採集方法が極めて重要なポイントなのです。根っこまでちぎってしまったりしている冒険者さんもいるんですよ。でもケンタさんは正しい採集方法をされているのでそこが加点評価されたということです。」
「なるほどわかった、ランクアップの件構わない。」
「では、少々お待ちください。ギルドカードを更新してまいります。」
およそ3分後
「お待たせしました。こちらが新しいギルドカードです。それと金貨1枚です。」
そう言われ、渡されたのは、大きくEの文字が見えるギルドカードとキラキラと輝く金貨だった。
「ああ、ありがとう。ひとつ聞きたいんだが、宿ってどこにあるかわかるか?」
「宿ですか。それなら町の西側にある冒険者向けの宿屋『荒くれ集落』がおすすめですよ。お金も安いですし。ご飯も美味しいですよ。」
「言われてみるとちょっとお腹空いてきた頃かなー、わかったありがとう、そこに行くよ。」
そう言ったものの、内心宿屋の名前がやばかったので心を決めて、冒険者ギルドを後にした。
町の西側を歩いていると看板があった。
宿屋『荒くれ集落』はここです。と書いてあり矢印がさしていた。
矢印の先を見ると、全然荒くれ者の匂いを匂わせない、普通の宿屋だった。ちなみに二階建て。
なんかへんな心構えして損した…
宿屋の扉を開けて入ると、
いらっしゃいませー
と奥の方から声がした。
中から出てきたのは小柄な茶髪で黒目の女の子だった。
「本日はどのような宿泊をご希望されますか?」
「そうだな…朝と夜の食事付きで泊まれるか?後今からご飯が欲しい。お願いできるか?」
「どちらもよろしいですよ。宿泊料金は銀貨1枚、食事は毎食銅貨1枚ですがもしもっと止まるのであれば安くできますよ?」
「なら、1週間、とりあえず6日間頼めるか?」
「わかりました。では銀貨7枚です。」
「金貨でいいか?」
「ええ、構いませんよ、お釣りは銀貨3枚ですね。」
「食事ができましたらお呼びいたしますので、それまでこの鍵を使って部屋でお休みください。」
「わかった。ありがとう。」
その瞬間、女の子は頬を紅くして慌てて、奥の方へ走っていった。
何かやってしまったのか?と思うケンタであった。
どうやら今日から泊る部屋は二階の角部屋のようだ。
ちなみに角部屋の特別料金などはこの世界にはない。
今日起こったことを思い返す。
グロリアの転移魔法で異世界に来て、冒険者登録をして、クエストを達成し、現在ここに至る。色々ありすぎて今日は疲れた。
とそんなことを考えていると扉の外から
「ご飯できましたよー」と声が聞こえたので、返事をして、扉を開ける。
「食堂までお連れします。ついてきてください。」
そう言われついていくと、冒険者らしいし人たちがご飯をこれまた美味しそうに食べていた。実際美味しそうなんだけどね。
こちらですと席を案内されそこに座る。
料理が運び込まれびっくりする。
大きすぎじゃないかじゃねぇか!?この宿絶対赤字だろ!?
と内心叫ぶが、そんな心配も吹っ飛んでしまうほど、定食の香りがすごかった。宿の従業員に聞くとオークステーキだそうで結構いい値段がするんだとか。一体どこから金が出ているのだろうか?
美味しすぎてあっという間に食べ終わり、すぐさま部屋に戻った。窓から外を見ると、少し薄暗い時間だった。寝るか。ケンタはそう思って、ベットに仰向けになり、目を瞑って、意識を闇の中に落とした。
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