第12話 報酬と情報

「まさか……余が貴様如きに敗北するとはな…」


「ご……御免」


勝ってしまうのはあまりにも想定外だ。本来ならば負け、最悪でも引き分けで終わらせるつもりが、勝利は少々不味い。


冷や汗を垂らした私に最初に話しかけたのは


「さすが師匠せんせい!陛下に勝つなんてすごいです!」


弟子のフレインだった。よく見ると目がキラキラと輝いてる。


「は、はは……こっ、これは計算外だ……」


事実は小説より奇なりとはこの事か……思った以上に怖い事をしてしまったぞ。


「何故謝る?貴様は余に勝利したのだ。しかも本気を出した余に対して貴様はにな」


バレてるぅぅぅ!やっぱりこの魔女ひと怖い!


「さて、余に勝利した褒美を出さねばなるまい。何か言うてみせよ」


「うーん。じゃあ」


私はネウロに近づき、耳打ちした。






「な訳だ」


私らが訪れたのは大きな豪邸。それを見てフレインは表情を暗くしていた。

まぁ分からなくもないよ。なんせ目の前にある豪邸は、ヴァロード家のお屋敷だからね。


「何で…私の家?」


「いやぁ……実はね」


私はフレインに何故この家へ案内しろと言ったのは理由がある。


数千年も昔。つまり、私が勇者と魔王を倒していない時代にある混血の種族を研究している家系の存在を思い出したんだ。その中にヴァロードと名の付く研究員がいた。名は「マンギラル=ヴァロード」。混血種の種族研究に熱を入れていた人物でもある。


ヴァロードの研究はとても有名で、今の時代では大変重宝するものだ。これがなければ混血種の人間以外の他種族云々の差別は消えない。


彼の研究は一つの世界の法律を変えたんだ。

私もいつかはこういう偉業を成し遂げたいものだよ。


「つまり、半魔のあたしを差別するのは間違ってると?」


「そうだ。それに彼の研究を継ごうとするほどの信頼を得ていたものだ。それがいきなり混血種を差別するのはおかしい。恐らく君の親に何かあったかもしれないと噛んだんだ」


「つ、つまり?」


「君の家を家宅捜索だよ」


フレインは「え!?あたし何も悪いことしてませんけど!?」と驚く。

私は軽く笑いながら、魔法を一つ行使する。


魔力探知マナサーチ


これは相手の魔力を探知して位置を探る魔法だ。範囲は半径三百mは伸ばせる優れものだ。


「……」


感じた魔力持ちの人間は三十人。そのうちの二人は異常に高い。

この量に禍々しい気配。間違いない、あれが紛れ込んでるな。


師匠せんせい?」


「……フレインちゃん。嫌な目をせずに聞いてくれるかい?」


フレインはいきなり真面目になった私をみて「え…」と言葉が漏れる。


「君の家、どうやら魔族の侵入を受けてるみたいだ」


「!?」


この感覚は間違いない。魔族だ。しかも数千年前にもいた強力な魔族だ。

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