1章 帝国編
第8話 何か幼女がついてきた
「ここがロネス帝国の帝都「サンチ」か!」
「絶対……見返して見せる…!」
一人の幼女が私の背後からてくてくとついていく。
何でこうなってるんだって?まぁ今から説明するよ。
*
これはロネス帝国領に来た時の頃だ。
徒歩で大きな国の領土に来るのは骨の折れる事だが、足の運動にはなる。
大半は冒険者時代の癖だね。運賃代ケチってた頃がすごく懐かしい。
平原を越え、森を越え、荒野を越えてはまた森に。
自然の恵み、神秘を堪能しながらロネス帝国を目指していた。
魔物や賊を退治しながら近くの村や町で所持金を稼いでは孤児院を見つけて寄付する。ちょっと遠回りする感じだが、悪くない。善行は大事だからね。
そして小さい町「ジュモク」にて、私は子供達を前に人形劇をしていた。
結果は大成功。大反響を呼び、アンコールまで貰う始末。おかげで一日ですっかり人気者に。いやぁ辛いね。
「よし、明日に向けて今日は休むか!」
宿を探す私、あちこちの店に回ってるうちに妙な違和感に気づく。
「……」
「……」
何か涙目状態の女の子が私の袖を掴んで離そうとしない。
しかもものすごい力だ。鉄人形に腕を思いっきり掴まれた感じがする。
「……」
「……ぐすん」
視線が痛い。まるで私が悪い感じじゃないか!
誤解だ!!
「はぁ……わかったよ。ここじゃダメだからあっちで話を聞こう」
「!」
女の子の表情は明るくなり、にっこりと笑みを浮かべる。
これが小悪魔系の少女?
*
「それで?君は何で私についてきたんだい?」
「……」
見た目の話だが、蒼髪の黒眼の少女のようだが、背が小さい……十歳くらいだろうか?それに背中に大きなトランクを背負っている。
それにあの腕力だ。魔法で強化はしていなかったし、只者じゃないな?
「……してください」
「はい?聞こえないよ?」
人見知り?恥ずかしがり屋?まぁ聞こうじゃないか。
「あたしを……弟子に…してください……!」
え?ちょっと待って。私何かやった?弟子にしてくれ?
「え、えーと話が見えないよ?まずは君の経緯から聞こうか」
取りあえず、訳を聞くことにした。彼女の名は「フレイン=ヴァロード」というロネス帝国の首都にある二流貴族の娘らしい。生まれた時から人形使いの素質があり、常人と比べて魔力の量が多いらしい。
可愛い天使みたいな見た目に反して、腕力が強く、使用する魔法はどれも災害級。そして彼女は半分悪魔の血が流れてるらしい。要は半魔だね。
私は初めて見たけど。
半魔のフレインは強力な力のせいで、皆から不気味がられては誰も相手をされなくなっていき、次第には引き籠り症になってしまったらしい。それからして帝国の兵士たちから私の噂を聞きつけ、この状況に至る訳だ。しかもこの子、家出中らしい。
「うん、じゃあ次は理由だ」
次に理由を聞きだした。何もすぐにする訳ではない。人形使いの師弟関係なんて滅多にない事だ。普通なら魔法使いや屈強の戦士ならよくある話だが、人形使いはなぁ……。
「……」
フレインは理由を言った。それは単純ではなかった。
どうやら彼女は家族からも差別されて、魔法使いの学校どころか人形も取り上げられてしまい、もはや孤独の状態だった。このままじゃ立派な人形使いになれず、嫁ぎの道具に使われるのは見えていた。
それで最後の手段として私の弟子になって、家族を見返すという事になった。
自分は特別じゃない。皆と同じ人なのだと。
そこで私はある試験を出した。
「じゃあ、私はこの三日間、仮の弟子として旅に連れていくけど。その三日間の間、君の実力を拝見させてもらう。いいね?」
「は……はい!」
私の言った試験は正直に言うと、どんな困難が待ち受けていても心が折れず、善行ができるかが本命である。「お前の目を見て興味を持った」とかは古いのだよ。
が今の状況である。
因みに今日が最終日だ。次に難しいのは人形劇を始めるのは良いが、この首都はフレインの家があるためできない。その代わり、私と一緒に人形劇を演出してもらうという事だ。
「さて、やるとしても親やコケにしてくる人がいても気にせずやるんだよ。いいかい?」
フレインは首を縦に振り、了解の意を示す。
「よし、じゃあ宿を探そう」
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