第9話 謎の洗礼
一方、ロネス帝国の首都「サンチ」にある豪邸の応接室にて。
「家出した娘の行方は?」
「只今、報告が入りました。この首都に戻ったそうです。もう一人の人形使いを連れて」
騎士のような恰好をした男は「ご苦労」と言って、話している斥候から聴取する。
「その人形使いは?」
「自らをネクロ・ヴァルハラと名乗ってました。隣にフレイン嬢がいたとなれば、恐らく……師を見つけたのだと思われます」
「あのバカ娘が……!」と言って拳を握り、斥候を引かせる。
拮抗した空気の中、男は自分の召使いに命令する。
「娘を連れ戻してこい。後、その人形使いを殺せ」
「承知いたしました」
*
「さぁ、どうしましょ?魔女に追いかけられた子供達は助かるのでしょうか!」
「に…逃げろぉ!」
フレインは少し弱々しく演技をする。怖がる素振りだと思うけど、まぁ悪くない。
それから程よく劇が進み、結果は成功。フレイン初の人形劇を成功で納めたのだった。
劇を終えた後、アンコールを受け取ろうとした時だった。
「ん?」
仮面を付けた謎の男が私とフレインに近づく。
「何かね?舞台から降りてもらわないと困るんだが?」
「それは悪かったな。すぐに済むことだ」
すぐに済む?腰に剣をぶら下げてる人の言う事はどれも物騒だ。
しかし、鞘が細い。
「ネクロ・ヴァルハラと名乗る男!フレイン=ヴァロードを攫った罪としてお前を連行する。御同行願おう」
「え!?」
最初に反応したのはフレインだった。まぁ、そうだよね。これはちょっと予想外だったな。
「断る」
「即答!?」
仮面の男は「そうか、なら仕方ない」と言って鞘から剣を抜く。
レイピアにしても魔法の力を感じる。たぶん属性魔法が付与された武器だろう。
「魔法剣か……」
「ほう、知ってるのか?」
知ってるも何も、風属性の力を感じてるし、差し詰め「疾風のレイピア」みたいな感じの剣かな?
「力づくでお前を連行する!」
「
「実力行使はいけない気がするけどなぁ……」
仮面の男の刺突攻撃を躱し、武器を握った右腕を掴み、胸座を掴んで地面に叩きつける。
「ぐあっ!」
「これは【人形師の体術】という人形使いの護身術だ。覚えておきたまえ」
【人形師の体術】とは、人形師が敵に接近戦を仕掛けられた時に
「まだ続けるかね?」
「おのれ!」
仮面の男は勇猛果敢に剣を振るう。
「【人形師の体術】」
その攻撃を往なし、今度は踏み込んだ足を引っかけて転ばせる。
「なっ!?」
「
そう言って背中を踏みつけた。
その一部始終を見ていたフレインは思わず拍手をする。
「すごい……!」
それに続いて民衆も拍手を送った。
「すげぇ!」
「武装した相手に素手で勝つなんて、ただの人形使いじゃねぇ!」
「カッコよかった!」
カッコいいかなぁ?覚えた能力何だけど……。
「な…なんて奴だ……手足も出ぬとは……」
「誰の差し金かな?」
私が黒幕の出所を探ろうとした時だった。
「そこまでにしておけ」
突如、目の前に高貴な女性が現れ、尋問しようとした私を止めた。
しかし、この女性。昔どこかで見たことが……ん?
「余の従者が無礼に働いた事を許してくれ」
「……」
この言い方、聞き覚えがある。
私と同じ風格をしているし、間違いない。この人は……
「ここで話すのは何だ。余の城に来るがいい。フレイン=ヴァロードもな」
「えっ!?」
ふむ、ただ事ではなさそうだねぇ。きな臭い香りがプンプンする。
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