第7話 面倒は御免こうむる
あの事件から一夜が過ぎ、街はすっかり元の活気を取り戻す。
殺したザツマは因果応報という訳で暗殺者に狙われて、死亡という扱いで葬られた。まぁ税に浸った罰が下ったのと同じだからね。
辺りは喧しいくらい大きな声で笑う住人達。そうそう、平和ってもんはこうでなくてはならない。
望みを叶えた私は昔の金貨を換金できないかと店を巡っていた。
「これはあまりにもレアすぎる。売ると平気で四十万ガリルするぞ」
「……は?」
四十枚くらいの金貨で四十万!?大金じゃないか!一気に金持ちレベルだよ!?
どこかで孤児院を見つけたら寄付しておくか。
*
しばらくして私は旅支度を整え、私は街の出入り口に向かっていた。
「さて、世界はまだ広い。いつかは別大陸に渡って、観光巡りも悪い話ではないな」
そう言って独り言を呟きながら、歩いていると誰かに呼び止められる。
自然と振り向くと、そこにはアンネと老人共々この街の住人がいた。
「どうしても行ってしまわれるんですか?」
「もっと居てもいいんだぞ?お主の人形劇はとても面白い。昔に戻った気分じゃったわい」
「……」
確かに居てはあげたい。だがそれでは旅の意味がない。別れを惜しむ気持ちは分からなくもないよ。
「けど、私にはやらねばならない事があるんだ。それに私の旅は始まったばかりなんだ。済まないねぇ…」
「いえいえ。ですがいつか、またこの街に訪れてくれますか?この街の子供達は人形使いとしての素質があるんです」
あー伝授とかは御免こうむる。面倒……というより、私のは独学で得たものだからね。正式に人形使いになりたいなら魔法使いの学校に入学すればいい。あらゆる知識がそこにあるから。
「まぁ、いつかまた……この街に訪れるよ。その日が来るまで、人形劇はお預けだ」
そう言って、再び歩み始める。
後ろからは見送りの声が聞こえた。
(ああ……また来るよ。その時は、タナトスちゃんも連れて来よう)
*
一方、一つの国の王室にてある二人の会話があった。
デスクの上には大量の書類がつまされ、そこに一人の高貴な女性が男の話を聞いていた。
「伝説の人形使いと名乗る男?」
「ええ、逃げてきた兵の話によると、彼は自分から「ネクロ・ヴァルハラ」と名乗り、一流の魔剣士の如く強い剣技と魔法。そして強力な人形を使っていたとか」
その言葉に高貴な女性が男に言う。
「ネクロ・ヴァルハラ……か。数千年前、勇者と魔王の両者を討ち取った人形使いで行方不明と聞いていたが……」
「どうなさいます?皇帝陛下?」
「ふむ。一度彼と会いたい。本当にあの人形使いなのかを余が直々に確かめてやろう」
知らない場所で、新たな動きが現れたのだった。
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