#10 新たな事件と面倒な三角関係。ーー【4F】

2023年7月23日公開↓

早速遊園地に着いた工藤はすっかり不貞腐れてるトクヨに

宇垣が来る10分前までに機嫌を取り戻してもらおうと

ゲームとしてしりとりをしようと提案した。

「『 面白いね、アタシは絶対に負けないよ。』」

「では、しりとりの(り)からで、えぇ~っと、りんご。」

「『ポピュラーなの来たねぇ、じゃあ、ごま。』」

「トクヨさんはイレギュラーな攻め方をしてきましたね。

じゃあ、まくら。」

「『まくらってアタシを誘ってんのかい?俊輔。』」

 工藤は照れながら『違いますよ。』と答えた。ーー

2023年8月3日公開↓

 トクヨが最後に「『エヴァンゲリオン!』」って言った瞬間に

しりとりゲームは工藤の勝ちとなった瞬間にトクヨの天敵(?)

の女刑事である宇垣が颯爽と男ウケのいいデート服で現れた。

 トクヨは心底不貞腐れたような声で「『アタシの俊輔とデート

するのにあんな誘うような可愛い服着ちゃってさー』」と言って

きた為に工藤は小声で「黙っててください。」と言った。

「誰と話してたの?工藤くん。」

「いえ、何でもありません。行きましょう。」

 工藤は宇垣とともに遊園地の入館料を払って園内に入っていった。ーー

2023年11月17日公開↓

 工藤と宇垣はまず初めにジェットコースターに乗った。工藤は緊張しいな

顔つきをしていた。気になった宇垣は聞いた。

「もしかして工藤くん、ジェットコースター初めて?」

「は、はい。しかも女性と一緒なのが余計に緊張してきちゃいまして…。」

 すると宇垣は工藤の手を握った。

「大丈夫、私も初めてだから。」

 そのラブラブな様子にトクヨは「『キーー、ふざけんな!俊輔の手、早く

離せ!』」とかなり怒り心頭だった。ーー

2023年11月23日公開↓

何だかんだジェットコースターを楽しく

乗った工藤と宇垣はソフトクリームを食べ

ながら真剣な面持ちで宇垣から話を切り出し

てきた。

「ねぇ、工藤くん。あなた、ウチに来ない?」

「えっ、ウチ。」

トクヨは嫌な予感がした。きっとこのデート

の後、宇垣の家に工藤を誘うはずだと。

そんな破廉恥な事は絶対に許せないと憤慨

したが次に出た宇垣の言葉はこうだった。

「えぇ、捜査一課に来ないかってこと。」

「それってスカウトですか?」

「まぁ、そんな所ね、考えといて。」

トクヨは安心した。いや、安心するべき場合

では無い。もしも工藤が捜査一課に配属と

なったら自分の存在もこの女に知られる事に

なる。それはそれで更にトクヨは気を強く

揉んだ。ーー

2023年12月14日公開↓

 宇垣と非番の日にデート?のような交流を終えた

工藤は帰りがけのバスでトクヨに聞かれた。

「『ところでどうすんだい?俊輔、異動の打診の

話は。』」

 バスの周りには運転手とご老人の

他に誰もいなかった為に工藤は小声で話した。

「受けてみようかと思います。僕の力でどこまで

いけるのか試したいです。」

 するとトクヨは『違うだろ、アンタ。』と訂正を

促すように言った。

「『アタシら、だろ?』」

「・・・そうでしたね、すいません。」

 工藤とトクヨは静かに笑い合った。--

2023年12月31日公開↓

 2023年12月26日、あのデートから3か月後の今日、

工藤は正式に装備課から捜査一課への異動となり、自身の上司

や同僚に『お世話になりました、課長、皆さん。』と言い残し、

新天地へと旅立った。ーー

「おはようございます。」

 少しばかり緊張した面持ちで捜査一課の面々に工藤は挨拶した。

すると先輩である小野寺が工藤の前に立ち、言った。

「工藤巡査部長だね?小野寺です、よろしくお願いします。」

 そう小野寺は手を差し出してきた。これから一緒に頑張ろうという

彼なりの敬意の表れだろう、工藤は素直にそれに応じた。

 するとポケットからトクヨが一言言った。

「『中々のイケメンだねぇ、俊輔には負けるけど。』」

 若干マウントを取ったような発言に工藤は少しばかり苦笑いを浮かべた。

「それでは、これからよろしくお願いしますね、工藤巡査部長。班長の

宇垣陽子です。」

 宇垣は一礼のお辞儀で挨拶し、工藤も同じく一礼のお辞儀で応じた。

 すると県警本部にアナウンスが流れた。

「『県警から各局、愛知県名古屋市中区〇丁目〇番地で傷害事件が発生、

近局にあっては・・・』」

「行くわよ、工藤君、小野寺さん、みんな。」

「「はい。」」

 その一方と共に捜査一課の面々は現場に

急行した。ーー

2024年2月7日公開↓

それから翌年の1月某日。ーー

捜査一課に異動となってからの工藤の

忙しさは装備課にいた頃より遥かに仕事量は

多くなっており、激務の日々だった。

「いやぁ、甘く見てましたよ、トクヨさん。

捜査一課の仕事がここまで激務なのは…。」

誰もいない屋上へ行き、工藤はそうトクヨに

愚痴を零した。トクヨは自分を頼ってくれる

工藤に嬉しさを感じつつあっけらかんと答えた。

「『当たり前じゃないかい、そもそも警察の仕事

で楽な事なんて一つも無いだろうよ。最近の

アンタは私を頼っちゃあくれないし…。』」

「いえいえ、トクヨさんの力はいざと言う時に

使わせていただきます。」

「『そ、そうかい。アンタがそう言うなら

仕方ないねぇ。』」

トクヨは頬を染めるかのようにそう言った。

すると工藤を探してただろう宇垣が

近づいてきて言った。

「あっ、いたいた、工藤くん、新しい事件が

起こったわよ、それも殺人。本部に帳場

(捜査本部の意)が立つから急いで!」

「分かりました。」

こうして新しい事件が幕を開けた。ーー

2024年3月6日公開↓

 捜査本部、帳場が立った愛知県警本部では

広域性が極めて高い殺人事件である為、名古屋署

その他の所轄の捜査員が闊歩するが如く往生していた。

「『何だい、俊輔?アンタもしかして緊張してんのかい?』」

 トクヨは不意にそう聞いてきた。目などがあるはずがないのに。

「どうして分かるんですか?」

「『あたしゃあスマホだよ。常にアンタの体はサーモグラフィー

で分析してんのさ。』」

 工藤は心の中でこのヒト、ドヤ顔してるんだろうな。と

思った。すると席の隣にいた小野寺は不審に思ったのか工藤に

聞いた。

「工藤君、誰と話してるんだい?」

 工藤は慌てて答えた。

「いえ、かなり緊張してるのでつい独り言を。」

「・・・そうか。」

 それ以上の事を小野寺は工藤を詮索しなかった。

 そんな初々しい工藤の姿を愛でるかのように

前の上席にいる宇垣は熱い視線を送っていた。ーー

2024年4月25日公開↓

 事件会議前夜。工藤の一番の相棒として傍らにいる

トクヨは夢を見ていた。電子生命体になるずっと

遠い遥か昔、江戸時代に遡っていた。

 トクヨは人間の女性であり江戸の市中では名の通った

名家の出であり、かなりの女傑だった。

 剣や弓、薙刀の腕もかなり高く並の男でさえも

簡単にねじ伏せるほどの強さだった。

 更には学と弁も立ち、お偉いさんたちの鼻っ柱と

面子を幾度と無くへし折ってきた。

 そんな彼女はある日、悪天候ともいえるt雷雨が江戸を

襲い、トクヨは突如、雷を全身に浴び、絶命した。--

 目を覚ますと彼女はガラケー、携帯電話の姿になっていた。

 トクヨはすぐ悟った。おそらく自分はこの世にまだ

未練を残し、電子生命体として生き続けるのだと。

 もともとの頭の良さと共に知識は自動的に更新されていき

いつしか彼女はガラケーからスマホへと姿を変えた。

 そして、現在ーー

 眠りから目を覚ましたトクヨは仕事へ行く為にスーツに着替えている

工藤を目にした。

トクヨは変わらない口調で工藤に言った。

「『俊輔、おはよう。今日もいい天気だね。』」

「はい、トクヨさん、おはようございます。」

 彼らの新たな日の幕開けだった。--


 #10 新たな事件と面倒な三角関係。ーー【4F】 完


 







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