#6 絶対に知られてはいけない【僕ら】の関係 後編

工藤俊輔の取り調べを一通り終えた様子の小野寺に宇垣は神妙な面持ちで取調室前で立ちながら待機していた。

「どうしたんですか?宇垣さん。」

「どうしたじゃないわよ。結局彼が今回の通り魔事件の全容を掴めた確証は得られたの?」

「いえ、それが…。」

そう言うと小野寺は工藤が自身で捕まえた村山剛の犯行を見破った理由として普段は飲みの誘いをしてこないはずの彼が自分にしてきて『変だな。』という疑問を感じての突発的な行動だったという。その説明に若干だが腑に落ちない様子の宇垣に小野寺はため息混じりに言った。

「いや、宇垣さん。やっぱり僕の思い過ごしだったみたいです。私のわがままで彼への取り調べの時間を設けていただきありがとうございます。」

「そう、あなたも他の事件があって忙しいでしょうから,そろそろ戻っていいわよ。」

小野寺はそう言われると軽く一礼し、その場を後にした。すると取調室から工藤の声が聞こえてきた。

『いやー、焦りましたね,トクヨさん。』

トクヨ?彼が電話で話してるかもしれない相手だけど誰なの?と宇垣は心配すると工藤とは違う,相手の女性の声がしてきた。

『ホント、アンタって嘘下手そうだったからヒヤヒヤしたよ~。』

古風な話し方から工藤より年上の女性らしいその声に,工藤に想いを寄せる宇垣は前のめりで聞くとうっかりドアに手を掛け,引き戸のその勢いのまま入室してしまった。『しまった。』と思ってしまった宇垣は工藤の方を見たが、工藤は心配した顔で宇垣に駆け寄り、「大丈夫ですか?宇垣さん。」と聞いた。すると宇垣は「ううん、ありがとう。ところで工藤君、誰と話していたの?」と聞いた。工藤は昔からの知り合いの女性と説明した。するとまだ密かに起動中だったトクヨは嫉妬交じりなドス黒い声を出した。

【アタシの俊輔に色目使ってんじゃないよ、小娘が。】

その声に宇垣はビクッとし、工藤も顔色をその瞬間、悪くした。

続く

あとがき

ほぼ二週間ぶりに書きましたが、いよいよ今回からは三角関係も描いていこうかなとおもいました。



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