陽だまりの邂逅

入学して4日目、美人な先輩に拉致られ、『手紙部』なる部活に強制入部させられた日の翌日。


俺はいやいや部室に行った。


立て付けの悪いドアをガラガラと開け、部室に入る。


先に来ていた幽霊みたいな少女は、ソファーに座り黙って本を読んでいるし、先輩は蒲団の中ですやすやと寝息を立てている。


どこに荷物を置こうか迷っていると、開け放たれた窓から風が吹く。


その時、幽霊少女の方から何かがヒラヒラと飛んできた。


拾い上げてみるとしおりのようだ。

ちょと昔のライトノベルのヒロインの絵が描いてある。


「これ、飛んできたぞ」


俺が栞をテーブルの上に置くと、幽霊少女はメチャクチャ狼狽しながら受け取った。


「あ、ありがとう、ございます・・・」


「そのキャラ好きなのか?」


「!?」


幽霊少女は超びっくりしている。


「俺もその作品ならそいつが1番好きかな」


「・・・知ってるの?」


それからはすぐだった。


突然眼鏡を外し、人が変わったように明るく話し始めた琴美に圧倒されて黙って琴美の話に相づちをうつ。


琴美は嬉しそうにどんどん話を展開する。


いつの間にか蒲団から出てきた碓氷先輩も加わり、白熱したライトノベル議論を交わした。


次の日から琴美は俺と一緒に部室に行くようになり、部室に着くとすぐに眼鏡を外すようになった。




俺と琴美の始まりはこれだけだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る