第16話 過去
「まずは神級魔法の事じゃな。お主勇者か?」
「いいや?違うが」
「ますますおかしい。勇者が修行の末に辿り着くのが神級魔法の習得。勇者ではなければ賢者か?魔王か?」
「どれも違うな。普通の冒険者だ」
「それはもういい。言いたくないのか?言えないのか?」
「まぁ、お前は害がなさそうだから良いか。異世界人だよ、俺は。迷い人、だそうだ。だから人よりハイスペックなだけだ」
「なるほど…そういうことじゃったか。なら、次じゃ。お主、メテオを放った時にバリアを正面に5枚、背後に2枚張っておったな?なぜ後ろに張る必要があった?」
「バレてたか…流石だな」
「褒めても何も出ないがの。それで?」
「そうだな…後ろからの攻撃に備えて、だ。単純に言うと俺は誰も信じない。元の世界では友人と呼ぶ関係の人間ももちろん、家族もだ」
「家族も?さっきの含みのある言い方はそこじゃな?」
「そうだ。俺は父親を知らない。顔も名前も年齢も。母親は虐待をするような人間だった。俺が10歳の頃に死んだがな。まぁ、そのあとも色々あったからな。信じない、ではなく信じることが出来ない、が正しいかな?」
「お主…苦労しておったの…我には理解しきるのも難しい話じゃった。すまん。興味本位で聞いて良いものでもなかったの」
「いいさ。ただしみったれた空気が嫌いだからあんまり話さないんだがな。それにそんな聞かれて困る話でもないし」
「我を信じてみる気にはならんかの?」
「無理だな」
「……即答はちょいと傷つくんじゃが?」
「いや、今話してた内容聞いてたか?」
「聞いておった。だからこそ、じゃ。そうやって無理だと決めつけて閉じこもっておっては必ず後悔する人生になる。200年生きた我が言うんじゃ。間違いない」
「いや、でも決めつけたわけでは無くて、色々あった結果が…」
蘊蓄を垂れてみる。
「うるさいの。我には話しかける勇気があるくせに、人を信じる事が出来ないじゃと?やってから言わんかの?」
ちょっとイラッとした
「「色々」と言ったはずだが?やった事がないとでも?それで傷を負ったのにまたやれと?
…すまない。八つ当たりだ。結局は俺が弱いのが悪いんだよ」
今日会った竜人に過去を話して、暗い空気にした挙句八つ当たりとか…本当に俺はガキだな…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます