55話 私は月曜日が待ち遠しい

 世間的には忌み嫌われている月曜日も、私にとっては休日以上に待ち遠しい。

 理由はもちろん、先輩たちと会えるから。

 休み時間に友達と話している間も、並行して先輩たちのことを考えてしまっている。


「月曜日ってつらいよねー。朝練ないのが唯一の救いだよ」


「確かに、早起きって大変だよね」


 机に突っ伏して愚痴をつぶやく友達に、苦笑混じりでうなずく。彼女が朝から気だるげなのは、中学の頃から変わらない。放課後が近付くにつれて元気になり、部活の時間にピークを迎える。

 創作部に入る前だったら、私も月曜日がつらいという意見に心から同調していたことだろう。

 でもいまは、先輩たちと会えることを思えば早起きは苦じゃないし、朝練なんてむしろ創作部でも取り入れてほしいぐらいだ。


「そう言えば悠理、ハーレムは満喫してる?」


 不意に投げられた質問に、内心ドキッとする。

 入学して間もない頃とは状況が違う。あのときは美少女に囲まれているという環境的な意味でのハーレムだったけど、いまとなっては特別な意味を持つ。

 もちろん、軽率に「実は四人と同時に付き合ってるんだよね」なんてことは言えない。言い方を間違えればよからぬ誤解を招くし、なにより先輩たちに迷惑をかけてしまう。


「うん、おかげで毎日がすごく楽しいよ」


 ハーレムについてはあくまで物の例えとして流しつつ、素直な感想を告げる。

 部活が楽しすぎて、それが他の時間にまで影響している――とまでは、あえて口にしない。




 そして迎えた放課後。昇降口で友達と別れ、早足で渡り廊下を抜けて部室棟に行き、最奥にある創作部の部室に駆け込む。


「悠理、会いたかったわぁ❤」


 部室に入るや否や、姫歌先輩に抱き着かれる。


「私もです」


 カバンを置くこともせずノータイムで抱き返し、ギューッと熱い抱擁を交わす。


「悠理、あーしもギュッてしてよ~!」


「もちろんですよ」


 タブレットを置いて席を立つ葵先輩を抱きしめると、アリス先輩と真里亜先輩も順番待ちとばかりに歩み寄る。

 生粋のコミュ障であるアリス先輩とは相変わらず滅多に目が合わないものの、勇気を出して上目遣い気味にこちらを見ようとしてくれるのが実にいじらしい。

 真里亜先輩からは「骨が砕けるぐらい強くしなさい」と言われたけど、力の代わりに愛を込めて抱きしめさせてもらう。

 土日に家でのんびり過ごすのもいいけど、こうして先輩たちと触れ合える喜びは格別だ。

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