第44話

『前書き』


こちらの作品、実は小説家になろうにも連載していまして、その際に人気がでまして、書籍化することになりました。

レーベルはカドカワBOOKS様にて、4月10日に発売します。もしも、気になる方は手にとって頂ければと思います。

↓は小説家になろうの活動報告になりますが、書籍のキャラデザ、表紙絵などが貼られていますので、興味ある方は下から移動してみてください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/105954/blogkey/2528876/


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 設計図を見てから、数日が経過した。

 ここ最近店に入ることが減っていた俺だったが、体調を崩してしまった人の代わりに入ったこともあり、ハンドガンについての検証はできていなかった。


 久しぶりに連続で店に入ったため、疲労もあった。

 冒険者としての活動と、仕事ではまた違った疲れがあったな。


 仕事を終えた俺は部屋で、魔物肉に関して確認していた。

 十分な量が確保されている。それに、アイテムボックスの中では腐食などは進まないので、今も回収したばかりの新鮮な状態であった。


 魔物肉、といえば、食材に関しても俺は作製することができる。

 ……ただ、実をいうとほとんど口にはしていなかった。


 自分の魔力で生み出される食べ物だ。

 それが悪影響が出るかどうかわからないからだ。


 竜の卵に魔力を込め終える寸前までいった俺は、そこで一度悩む。

 両親には、ペットを飼ってみたいと話し、許可ももらっている。


 俺がしっかりと面倒を見るなら問題ない、という意見だった。

 問題は生まれてくる竜だ。


 竜の卵の設計図を調べても、どのような竜が生まれるかわからないのだ。

 竜にだってたくさん種類がいる。


 空が得意なものもいれば、陸、海で生活している竜もいる。

 それによって、色々と変わってくる。


 竜の育て方だって、それによっていろいろと変わってくる。

 出来れば、育てやすい竜がいいものだな。


 そう、悩んでいるのはどのような竜が生まれてくるかということだ。

 竜を育ててみたい、という考えはあった。

 竜が育てば、一緒に戦ってくれるかもしれないしな。


 竜の種類によっては、荷馬車などを引かせることもできる。

 竜が育てば、これまで以上にできることが増えていく。


 俺は最後の魔力を込め、竜の卵を作製した。 

 眼前に、とんと竜の卵が現れた。


 竜の卵 Sランク


 ……えぇ。竜の卵にもランクがあるのか。

 たまたまなのか、それとも必ずなのかはわからないがSランクの卵が産まれてよかったな。


 人間の子どもくらいはある大きさだ。


 俺が両手で抱え込んでようやく持ち上がるほど。

 ……卵の作製が完了した。けど、そうだ。ここから孵化させないといけないのか。


 竜の卵の孵化ってどうやるのだろうか?

 現代語に変換して作製した設計図を手に取る。


 『竜の卵はよく温めることで孵化する』、と書かれている。

 ……そうか。それなら、常に温めておく必要があるな。 

 最高級の布団をつくって、包んでおこうか。


 俺がSランクの布団を作り上げ、ぎゅっと包んでおく。

 すると、ころん、と卵が少し揺れた。


 ……おお? 中にいる竜が反応したのかもしれない。

 あとは孵化するまで待つだけだ。

 ここから一体どれくらい時間がかかるのだろうか?


 竜の孵化についても調べておかないといけないな。



 〇



 朝。何かが顔を叩くので目が覚めた。

 また勝手に侵入してきたリスティナさんだろうか?


 これは一度しかりつけたほうがいいかもしれない。

 俺がタイミングを見計らって目を開け、そちらをじっと見る。

 そいつは、リスティナさんじゃなかった。ついでにいえば、人間でもなかった。


 青色の竜だ。

 俺の枕元にいたそいつは、俺の頭ほどはある。

 まだ、生まれたばかりということもあって大きくはない。

 鱗はあったが、少しひんやりとしている。触っていて心地よかった。


「ヴァア!」


 竜が嬉しそうに鳴いて、もう一度俺の頭を叩いた。

 四本足で歩く竜だ。背中には小さな翼があり、今は前足で俺の顔を叩いている。


 犬の尻尾のように、嬉しそうに尻尾は揺れていた。

 ……え? もう孵化したの?


 俺としては、生命が誕生するその瞬間をこの目でしっかりと見たかったんだけど。

 ちらと卵が置いてあったほうを見ると、卵の破片と思われるものが転がっていた。


 ちらと、竜を見る。

 竜の口元には卵の破片が付着していた。

 

「卵の殻、食べたのか?」

「ヴァウ!」


 嬉しそうに声をあげる竜。その尻尾が振り回され、ぺちぺちとまだ横になっていた俺の頬を叩く。

 体を起こしながら、竜を抱えてみる。

 うまく乗せれば片手で持てる大きさだ。卵の殻よりも随分と小さい。


 左手にのせ、右手で竜の背中をなでてみる。

 翼のあたりがくりくりとしていて、触っていて心地よさがあった。

 鱗はまだなく、人間の肌と遜色ないほどにぷにぷにとしていた。


 見た目も、竜というには少し可愛すぎる。

 竜のぬいぐるみですよ、と言われても違和感がない。


 竜は心地よさそうに腕に顔をこすりつけてくる。

 ……可愛い。

 しばらく俺がそれで癒されていたのだが、はっと気づいた。


「そうだ。食事をあげないとだな」

「ヴァウー!」


 嬉しそうに竜は俺を見てきた。

 ……こいつまさか、俺の言葉を理解しているのか?


「竜……あー、名前も決めないと」

「ヴァア、ヴァア!」


 名前!? とばかりに目を輝かせ、竜は俺の顔に近づいてくる。

 

「俺の言葉わかるのか?」

「ヴァーウー」


 任せて、とばかりに尻尾をぴんと立てた。

 ……なるほど、かなり賢い魔物のようだ。

 俺がベッドに座り、膝の上に竜を乗せる。

 

 名前、どうしようかねぇ。

 色々と考えていた名前はあった。


 ただ、いざこうしてこの子と対面した瞬間、改めて考えたいと思った。

 うーん……。


「ヴァル―?」


 竜がどったのー? とばかりに首を傾げている。

 パタパタと小さな翼を動かして、俺の顔前まで飛んでいる。


 必死だ。あまり飛行能力はないようで、一生懸命に翼を動かしていたのが可愛らしかったので、その体を支えるように両手で持った。

 嬉しそうに竜が俺の手に頬ずりをする。可愛い……。


「決めた。名前はヴァルでいいか?」

「ヴァルっ! ヴァル!」


 嬉しそうに何度も頭を振る。

 よし、ヴァルでいいな。


「よろしくなヴァル」

「ヴァルー!」


 それまで色々な鳴き声があったが、ヴァルはそう鳴いた。

 色々と気になることはあったが、今はこの可愛さだけで十分だ。

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