第10話

とんで54

 彼女が死んで数年、僕は教師になった。

「先生、さようならー」

「さようなら」

 生徒と別れるとき、いつも彼女のことを思い出す。

 それはたぶん、もし彼女が先生だったらと想像するからかも知れないが、一番はやっぱり、彼女と別れの時に本当の意味で「さよなら」を言ってやれなかったからだろう。

 中学の教員をしていると思うことがある。別に、彼女は規格外なんかじゃ無かった。不適合なんかじゃ無かった。誰しも、彼女のようになることがある。だから、救えたはずなんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る