第9話
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二月か三月くらいのことだった。彼女が初めて僕を家に招いた。予想と反して、彼女の部屋は女の子女の子していた。
「偽装だよ、偽装」
両親を騙すためのね。一人っ子である彼女の部屋は僕のと比べて大分広く、息苦しさを感じた。
「そろそろ死のうかなって思ってる」
彼女は、僕が落ち着く前に、そんなことを言ってきた。
「どうして?」
思わずそんなことを訊いた。彼女は、別に語るまでもないという顔をしていたが、僕は聞き出せずにはいられなかった。理由を訊くことで、彼女を止められるかも知れないと思った。
「この世界は綺麗なんかじゃ無いよ」
彼女はそう言うと、ベッドにダイブして、「いつ死のうかなー」なんて言っている。
僕はもうなりふり構っていられなくなった。
彼女を救いたい。それはずっと根底にあった僕の気持ちだが、もしかしたら彼女は死んで救われたいのかもしれない。
「だって、死ぬなら愛された人に殺されたいじゃん」
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